オフロードで遊ぶ四輪といえば、クロスカントリー車や、またがって乗る四輪バギーが浮かぶ。北米ではそのいずれとも違う、座席が横に並ぶサイド・バイ・サイドが親しまれている。その枠組の中にあるコンセプト車をリバーストライクで知られるCan-Amが2026年8月に公開した。外板が透けて内側から光るMaverick R XRayと、6輪でレースを支えるDefender Prerunnerの2台だ。

文: 石川順一
▶▶▶写真はこちら|Can-Am「Maverick R XRay/Defender Prerunner」(画像5枚)

日本では馴染みのないオフロード車

林道や砂浜に乗り入れて遊ぶ乗り物と聞けば、多くの人は車高のある四駆のクルマを思い浮かべるだろう。もう少し詳しい人なら、シートをまたいで乗る、バイクに近い四輪バギーも頭に浮かぶかもしれない。どちらも日本で見かける乗り物だ。

北米では、そのいずれとも違う乗り物が親しまれている。骨組みで囲んだ車体に座席が横に並び、丸いハンドルとペダルというクルマの流儀で運転する、オフロード用の四輪車だ。席が隣り合うことから、サイド・バイ・サイドと呼ばれている。砂丘を駆け回り、荒れ地のレースに出て、牧場では荷物も運ぶ。またがるバギーと違って、隣に乗せた人と同じ景色を見ながら、道のない場所へ入っていける。日本でも取り扱うメーカーはあるものの、まだまだマイナーだ。

透けて光る1台と、6輪で追いかける1台

このサイド・バイ・サイドを手がけるCan-Amが、2026年8月にコンセプトを2台公開した。

1台目のMaverick R XRayは、米国の砂丘グラミスで夜に走る人たちの遊び方から生まれた。現地には、手作りの砂丘用バギーに灯りをいくつも取り付けて走る文化がある。XRayはその灯りを、あとから取り付けるのではなく車体に溶け込ませた一台。外板が半透明で、内側から照らされる。日が落ちると、車体を覆う板そのものが光り、車の輪郭が闇に浮かび上がる。

画像: Maverick R XRay。半透明の外板が、内側から光る

Maverick R XRay。半透明の外板が、内側から光る

光は色を変え、光り方も前もって組んでおける。ブレーキをかければ赤く光る。BRPはこれを、砂丘を走る人どうしの新しい伝達の手段と呼んでいる。灯りが前を照らすための道具から、乗り手が自分を表し、仲間に何かを伝えるための道具に変わるわけだ。夜の砂丘では、走ることがそのまま光の演出になる。後付けの灯りでは作れなかった遊び方だ。

走りも砂に絞った。ベースになった市販車は2輪駆動と4輪駆動を切り替えられるが、XRayが駆動するのは2輪だけ。後輪には、砂をかく羽根が並んだタイヤを履く。どこでも走れる万能さを手放し、砂の上で遊ぶと決めた仕立てだ。

画像: 後ろから見たMaverick R XRay。後輪は砂をかく羽根の付いたタイヤ

後ろから見たMaverick R XRay。後輪は砂をかく羽根の付いたタイヤ

2台目のDefender Prerunnerは、走る側ではなく支える側の車だ。Defenderは、Can-Amが牧場や農場の仕事向けに売っているサイド・バイ・サイドの名前で、それをレースの裏方に仕立て直した。荒れ地のレースは、タイヤ交換の手際や、要る工具と部品が手元にあるかどうかで勝ち負けが動く。Prerunnerが担うのは、本番前にコースの下見に出て、レースが始まれば競技車を追いかけ、人里離れた場所まで工具と部品を届ける役だ。

画像: Defender Prerunner。箱形のキャブの後ろに荷台を持つ6輪車

Defender Prerunner。箱形のキャブの後ろに荷台を持つ6輪車

そのために車輪は6つあり、タイヤは35インチ、直径にして約89cmある。キャブには4人が乗れ、荷台には工具や部品を固定して積める。写真では、予備のタイヤが2本、荷台に立てて載っている。速さを競う主役ではなく、仲間を勝たせに行く役を1台のコンセプトにしたのが、この車の目のつけどころだ。乗る人は、チームの一員としてレースの奥深くまで入っていける。

画像: 後ろから見たDefender Prerunner。荷台に予備のタイヤが2本立つ

後ろから見たDefender Prerunner。荷台に予備のタイヤが2本立つ

レースを走る車と、牧場で働く車がベース

実は2台とも、販売中のベースモデルがある。XRayのベースは、Can-Amが市販するスポーツ向けのMaverick Rで、240馬力のエンジンを積み、乾燥重量は1トンあまり。Can-AmはMaverickの名を持つ車で、ダカール・ラリーや米国のオフロードレースKing of the Hammersに出ており、その走破性と素性の良さは折り紙付きだ。

PrerunnerのベースであるDefenderは、牧場や農場で人と荷物を運ぶ働く車で、市販車にも6輪仕様がある。レースの現場を知るメーカーが、走る車と働く車という手持ちの2台を、それぞれ別の方向へ振り切ってみせた。光る外板も6輪の支援車もカスタム車といえ、まったく新規のコンセプトモデルよりも市販化のハードルは低いといえよう。

日本では三輪で知られる、遊びの乗り物の会社

Can-Amは、カナダに本社を置くBRPのブランドだ。日本ではRykerやSpyderといったリバーストライクで広く知られている。BRPはほかに、スノーモビルのSki-Doo、水上バイクのSea-Dooを展開する。雪の上、水の上、土の上と、遊びの乗り物をビジネスの真ん中に据えてきたメーカーである。

そんなBRPが、この2台を何のために作ったのか。サイド・バイ・サイドのデザインを率いるアラン・マシコット氏は、2台はデザインの習作にとどまらないと話す。看板の2車種を使い勝手と見た目の両面から作り直してみる機会であり、熱心な乗り手たちと会話を始めるきっかけでもあるという。乗り手が砂丘やレースで育ててきた遊び方をメーカーが受け取り、形にして投げ返す。2台は、そうしたコミュニケーションの一手だ。

この2台の先に半年ごとの発表が続く

残念なことに2台はどちらも市販予定はないという。その代わりにCan-Amは、今後4年間、半年ごとにオフロードの大きな製品発表を行うと表明した。その詳細は現時点では不明だ。灯りで仲間と話す車、レースを支えるための車という発想が、次の発表にどう表れるのか。半年ごとの知らせを楽しみに待ちたい。

BRP Can-Am Defender Prerunner/Maverick R XRay 主な仕様

Maverick R XRay
・ベース車:Maverick R
・駆動:専用の2輪駆動
・タイヤ:パドルタイヤ
・車体:外骨格構造(BRPは業界初とする)、可動式のルーフスポイラー
・座席:Sparco製
・ ベース車:Defender
Defender Prerunner
・駆動:6X6
・タイヤ:35インチ
・乗車定員:4人(Sparco製シート)
・荷台:LinQ(荷物を固定する仕組み)に対応し、工具と部品を固定して収納

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