10月22日に発表された新型ヴェゼル。ホンダの登録車の中でもドル箱と言えるSUVだが、5年ぶりの新型はマイナーチェンジにとどまっている。そうするべきとホンダが決断した影には、かつてトップセールスの常連だったあのモデルの不振(売れてはいるが以前ほどではない)が関わっている。

文: 小林 淳
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データで判明!いまヴェゼルが売れる理由

2021年の登場以来、コンパクトSUVとして確固たるポジションを築き上げてきたホンダ「ヴェゼル」。すでに5年を経過しているモデルだが、その勢いは衰えておらず、依然として好調な販売実績をキープしている。

実際に直近の販売データを見ても、その存在感の大きさは一目瞭然で、2026年9月の普通・小型乗用車販売実績ランキングではヴェゼルは月間6916台を登録している。2026年1月からの累計台数でも5万4466台に達するなど、デビューから5年が経過したモデルとしてはかなり優秀だ。

画像: 2021年の登場以来、高い人気を保ち続けるホンダ・ヴェゼル。クーペライクで洗練された流麗なフォルムと扱いやすいボディサイズが評価され、デビュー5年が経過した今も絶好調な販売実績をキープしている。

2021年の登場以来、高い人気を保ち続けるホンダ・ヴェゼル。クーペライクで洗練された流麗なフォルムと扱いやすいボディサイズが評価され、デビュー5年が経過した今も絶好調な販売実績をキープしている。

これほどの支持を集める理由としては、流麗なデザインやちょうど良いサイズ感が挙げられるが、走りと燃費を両立するハイブリッド「e:HEV」の出来の良さも見逃せない。

街乗りではEVのように静かでスムーズに加速し、高速域ではエンジン駆動へ自然に切り替わって力強く伸びる。しなやかな足回りと相まって長距離でも疲れにくい走行質感を実現しており、初期型オーナーが車検などを機に再び最新のヴェゼルへ乗り換えるケースが多いのも頷ける。

改良時に実施される機能装備の拡充もあって、価格は段階的に引き上げられているのだが、近年はどのモデルも車高や機能向上に伴い価格全体が上昇するのが当たり前。そんな中、ヴェゼルは販売の主力となる中核グレードの価格上昇が巧みに抑えられているため、ライバル車と比較しても相対的なお得感や価格競争力が失われておらず、これも高い販売力を維持できている理由だろう。

画像: 評価の高い2モーターハイブリッド「e:HEV」は、街乗りではEVのように滑らかに走り、高速域ではエンジン駆動へ自然に切り替わる。伸びやかな走りと低燃費を高い次元で両立しているのが大きな魅力だ。

評価の高い2モーターハイブリッド「e:HEV」は、街乗りではEVのように滑らかに走り、高速域ではエンジン駆動へ自然に切り替わる。伸びやかな走りと低燃費を高い次元で両立しているのが大きな魅力だ。

フィット失速でヴェゼルにかかる重い期待

そんなヴェゼルだが、10月22日にマイナーチェンジが実施された。快適装備を中心に機能を強化する内容だが、デビューから5年が経過したこのタイミングでフルモデルチェンジではなくあえて“マイナーチェンジ”にとどめ、さらに商品力を高めてきた点からは、まだまだ「現行型」を売り続けるという強い意志が窺える。

画像: 近年は新車価格の上昇が続いているが、ヴェゼルは主力となる中核グレードの価格上昇が巧みに抑えられている。競合モデルと比較しても価格競争力が高く、これが根強い販売力を支える理由の一つとなっている。

近年は新車価格の上昇が続いているが、ヴェゼルは主力となる中核グレードの価格上昇が巧みに抑えられている。競合モデルと比較しても価格競争力が高く、これが根強い販売力を支える理由の一つとなっている。

しかし、この優等生を取り巻く事情に目を向けると、単なる人気車の順調な年次改良だけでは説明しきれない、ブランド全体の複雑な背景が見えてくる。

目下のホンダにおける大きな課題の一つとなっているのが、かつてホンダの屋台骨を支えていたコンパクトカー「フィット」の販売苦戦だ。2026年9月実績を見ても、フィットの月間販売台数は4721台にとどまり、6916台を叩き出したヴェゼルに対して大きく水をあけられている。

画像: コンパクトカーのフィットの販売苦戦の影響もヴェゼル好調の理由になっている。フィットは大幅改良後も伸び悩みが続いており、ディーラーではフィット目当てで来店したユーザーがヴェゼルへと流れて購入するケースも珍しくないという。

コンパクトカーのフィットの販売苦戦の影響もヴェゼル好調の理由になっている。フィットは大幅改良後も伸び悩みが続いており、ディーラーではフィット目当てで来店したユーザーがヴェゼルへと流れて購入するケースも珍しくないという。

フィットは7月にマイナーチェンジを実施し、スポーティーな「Z」を新設したほか、「RS」の内外装質感向上や快適装備の充実など商品力をテコ入れしたばかりだ。しかし、そうした大幅な改良を施した直後であるにもかかわらず、販売数が大きく伸び悩んでいる現状は、たくさん売らなくてはならないコンパクトカーとして物足りなさを感じてしまう。

実際、ディーラーの現場では当初はフィットを目当てに来店した顧客が、店内に展示されているヴェゼルを目にし、デザインや室内空間の魅力を気に入ってそのままヴェゼルを購入していくケースが珍しくないという。販売面のエースとして数字を稼ぐべきフィットの役割を、結果的にヴェゼルがカバーしている構図となっているのだ。

完成度の高さゆえに、現行モデルを延命せざるを得ない

本来であれば、2021年登場の現行ヴェゼルはモデルライフ後半に入っており、次世代を意識した全面刷新の噂を聞いてもおかしくない時期。にもかかわらず、マイナーチェンジが実施されたわけだ。

今回の変更は外観の質感向上や実用装備の補強が中心で、走りの進化や目新しい機能といった大きな刷新は見られない。ただ、それも基本設計と完成度が高すぎるがゆえに「大改修」の必要がなかったとも言える。

フィットの動向やモデル周期の都合もあり、現行のままモデルライフを延長して売り続ける事情を抱えるホンダ。主力モデルの役割を担いながら、ヴェゼルはこれからも稼ぎ頭としてSUV市場の前線に立ち続けることになる。

画像: 10月22日にマイナーチェンジを実施。実用装備の強化や内外装のアップデートが中心で、基本設計の高さゆえに大改修の必要がなかったとも言える。

10月22日にマイナーチェンジを実施。実用装備の強化や内外装のアップデートが中心で、基本設計の高さゆえに大改修の必要がなかったとも言える。

ホンダ ヴェゼル 主要諸元(e:HEV Z FF)

●全長×全幅×全高:4340×1790×1590mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1535kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1496cc
●最高出力:78kW(106ps)/6000-6400rpm
●最大トルク:127Nm(13.0kgm)/4500-5000rpm
●モーター最高出力:96kW(131ps)/4000-8000rpm
●モーター最大トルク:253Nm(25.8kgm)/0-3500rpm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・40L
●WLTCモード燃費:25.3km/L
●タイヤサイズ:225/50R18
●車両価格(税込):328万7900円

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