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国産初のターボエンジンを搭載! 高級車のイメージを覆した革新的モデル
今や軽自動車から高級車まで、幅広い車種に採用されているターボエンジン。しかし、日本の乗用車に初めてこの技術が導入されたのは、1979(昭和54)年のことだった。
記念すべき国産乗用車初のターボ搭載モデルとなったのが、日産のセドリックと、その姉妹車にあたるグロリアである。
1979年6月にフルモデルチェンジを果たした430型セドリック/グロリアは、同年12月にターボエンジン搭載車をラインナップに追加。これが、その後の日本車に訪れるターボブームの先駆けとなった。
セドリックといえば、当時からトヨタ・クラウンと並んで高級車市場を代表する存在だった。落ち着いたスタイリングや豪華な室内装備を特徴とし、スポーティな走りよりも、上質さや快適性を求める大人のためのクルマという印象が強かった。
また、後年は刑事ドラマでの活躍や、カスタマイズされた車両の存在などから、世代によっては少々いかついイメージを抱く人もいるかもしれない。
ところが、そのセドリックこそが、日本の自動車技術に新たな歴史を刻んだのである。
発売当初のセドリックのターボ搭載車には、4ドアセダンの「SGLエクストラ」、4ドアハードトップの「SGLエクストラ」、そして今回取り上げる4ドアハードトップの「ターボS」が設定された。
なかでもターボSは、単に強力なエンジンを与えただけではなく、足まわりや制動系にも専用の装備を採用。高級車としての品格を維持しながら、走りの性能を引き上げたモデルとして登場した。
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直列6気筒ターボで145psを発揮! 省燃費も追求した先進のメカニズム
最大の注目ポイントは、もちろん新開発のターボエンジンだ。
ベースとなったのは、日産の主力エンジンとして長年活躍してきたL型の直列6気筒ユニット。これにターボチャージャーを組み合わせた「L20ET型」が、新たなパワーユニットとして採用された。
排気量1998ccの直列6気筒SOHCエンジンは、最高出力145ps/5600rpm、最大トルク21.0kgm/3200rpmを発揮する。
自然吸気のL20E型が最高出力130ps、最大トルク17.0kgmだったことを考えると、その進化は明白だ。とりわけ最大トルクは約24%も向上しており、2.0Lエンジンでありながら、ひと回り排気量の大きなエンジンに匹敵する力強さを獲得していた。

直列6気筒2.0LのL20ET型エンジン。最高出力145psを発揮しながら、燃費性能や排出ガスの低減にも配慮した先進のパワーユニット。
その性能向上を支えたのが、排気エネルギーを有効活用するターボチャージャーという機構である。
通常であれば排出されるエンジンの排気ガスを利用してタービンを回転させ、その力で吸気側のコンプレッサーを駆動。圧縮した空気をシリンダー内へ送り込むことで、排気量を増やすことなく、より大きなパワーを引き出せる仕組みだ。
ただし、空気の供給量が増えれば、それに応じた燃料の制御も欠かせない。そこで重要な役割を果たしたのが、日産が採用していた電子制御燃料噴射装置「EGI」だった。
そして、もうひとつ見逃せないのが、当時の社会情勢である。
1979年は第二次オイルショックの真っただ中。省エネルギーが強く求められていた時代だけに、ターボによる高出力化は、必ずしも歓迎される技術ではなかった。
実際、日産がターボエンジンについて当時の運輸省から認可を得るまでには、相当な苦労があったという。
そこで日産が強調したのは、単なるパワーアップではなく、排気エネルギーを再利用することでエンジンの効率を高められるというメリットだった。

トランクリッドには控えめな「TURBO S」のエンブレムを装着。国産ターボ車の歴史を切り開いた、記念碑的なモデルであることを物語る。
車両性能に余裕が生まれることを生かし、トランスミッションや最終減速比なども見直すことで、走行性能と経済性の両立を追求。公表された燃費性能は、10モード燃費で8.6km/L、60km/h定地走行燃費では16.0km/Lに達した。
また、排出ガス対策にも先進技術が導入されていた。ターボ化に合わせた圧縮比の設定に加え、モノリス型三元触媒や空燃比フィードバック制御などを採用し、排出ガスの浄化にも配慮されていたのである。
単に速さを追い求めるのではなく、燃費や環境性能まで考慮する。現在では珍しくない技術思想を、日産は1970年代の終わりに実践していたのだ。
4輪ディスクブレーキに専用足まわり! 見た目以上にスポーティな実力派
国産初のターボエンジンを搭載したセドリックだが、今回紹介する「ターボS」は、エンジン以外にも注目すべき装備が数多く与えられていた。
まず、ブレーキには4輪ディスク式を採用。さらに、ガス入りツインチューブショックアブソーバーや強化型フロントスタビライザーを組み合わせ、走行安定性を高めるためのチューニングが施されていた。
タイヤには、当時としてはワイドな195/70HR14サイズのミシュラン製スチールラジアルを装着。アルミロードホイールも備えるなど、足元にもスポーティな演出が盛り込まれている。

ミシュラン製の195/70HR14スチールラジアルタイヤを採用。当時としてはワイドなサイズで、ターボエンジンの力強い走りを足元から支えた。
もちろん、これらの装備は見た目のためだけではない。高められたエンジン性能を受け止め、余裕のある高速走行を実現するためのものだった。
室内では、ブラックフェイスメーターなどを採用。5速MTと組み合わせることで、ドライバーが自らクルマを操る楽しさも味わえる仕様となっていた。
とはいえ、外観はあくまでもセドリックらしい落ち着いたもの。派手なエアロパーツなどでターボの存在を主張することもなく、4ドアハードトップの端正なスタイリングを維持していた。
室内も同様で、スポーツカーのようなバケットシートや専用コックピットが備わっていたわけではない。ターボエンジンの過給状態を示すブーストメーターさえ装備されておらず、その仕立ては高級車らしい上品さを優先したものだった。

ゆったりとした造形のシートは、高級車らしい快適性を重視したもの。スポーツモデルを意識させる演出は控えめで、落ち着いた室内空間に仕上げられている。
しかし、ひとたびアクセルを踏み込めば、自然吸気モデルとは異なる力強さを発揮する。見た目からは想像しにくい余裕のある加速性能こそ、セドリック ターボSの魅力だった。

基本的なデザインは自然吸気モデルに近く、ブーストメーターも非装備。タコメーターと5速MTの組み合わせが、さりげなく走りへのこだわりを伝える。
実際、2.0Lの排気量ながら、上級の2.8L自然吸気モデルに迫る性能を実現していたことは、当時としては大きなインパクトがあった。
その後、日産はターボ技術を積極的に展開。ライバルメーカーも次々とターボ搭載車を投入し、1980年代には日本車の高性能化を象徴する技術として定着していく。
高級車というイメージが先行しがちなセドリックだが、430型ターボSは、日本の自動車史に新たなページを刻んだ先駆的なモデルだったのである。
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日産 セドリックHT ターボS(430型) 主要諸元
●発売年月: 1979年12月
●全長×全幅×全高: 4690×1690×1410mm
●ホイールベース: 2690mm
●車両重量: 1390kg
●エンジン型式: L20ET型
●エンジン形式: 水冷直列6気筒SOHCターボ
●総排気量: 1998cc
●最高出力: 145ps/5600rpm
●最大トルク: 21.0kgm/3200rpm
●トランスミッション: 5速MT
●タイヤサイズ: 195/70HR14
●新車価格: 226万3000円
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