バレーノはインドのマルチ・スズキ・インディア社が生産するコンパクトカー。デビューわずか半年で40万台を販売したという人気モデルだ。日本へも導入されたので、その実力のほどを診断してみることにしよう。
画像1: 【試乗】スズキ バレーノ XTが、インドで確かな実績を作って日本へやってきた

なかなかの実力者だ

バレーノは全長3995mm、全幅1745mmのBセグメントカーだが、インドにおける高級ディーラー網であるネクサで販売される“小さな高級車”でもある。全長を4m未満とし、排気量1.2L未満のエンジンを搭載するのは、インドの税制を考慮してのことだ。つまりコンパクトカーであるものの、現地のニーズにあわせて上質に作り込まれたモデルというわけで、インドでの人気は凄いらしい。

全長に制約がある分、全幅を大きめにとり、ワイドで安定感のある外観と余裕のある室内を生み出しているがひとつのポイント。スイフトよりもひとまわり大きな感じで、この広さはアドバンテージとなるだろう。

デザインはインド市場の傾向を研究したものという。世界的に精悍な顔つきが主流となっているが、バレーノの表情は柔和で、「流体金属」と表現される躍動感のあるボディラインも特徴的だ。インテリアはとびっきり上質とまではいかないが、ブラックの内装にシルバーのアクセントを配した落ち着のあるもので、居心地がいい。

画像: 1Lの3気筒直憤ターボエンジンを搭載する。パワースペック的には1.6Lの自然吸気エンジン相当と言える。

1Lの3気筒直憤ターボエンジンを搭載する。パワースペック的には1.6Lの自然吸気エンジン相当と言える。

試乗車は1L 3気筒直噴ターボと6速ATのパワートレーンを持つXT。最高出力111ps、最大トルクは160Nmと、1.6L NAエンジン相当の力強さを持ち、自然吸気のようなフィーリングのまま、3000rpmを超えても活発な吹け上がりを見せる。技術的にもマルチホールインジェクターやウエストゲートバルブノーマルオープン制御など見どころは多い。160Nmの最大トルクを考慮してトルコンの6速ATが採用されており、スムーズでダイレクト感のある感触からも、効率の良さがうかがえる。

乗り味はやや硬めで、速度を上げるにつれ安定感が増してくる。高速での直進性もよく、ワイドトレッドが効いているのか、その走りは安心感に満ちている。このあたりのセッティングは欧州車風でもある。

 
新開発のBセグメント用プラットフォームが採用されているのもポイントだ。ソリオやイグニスですでに新世代のAセグメント用プラットフォームが使われているが、これはそれより少し大きいサイズで、次のスイフトにも採用される予定という。

ゼロから設計し直されたもので、骨格や板厚を最適化し、必要な部分には高価な高張力鋼板を配して、軽量化と高剛性を両立しているのが特徴。もちろんこれにあわせてサスペンションも新設計されている。わずか950kgという車重は軽快な走りや燃費の向上に貢献しているはずだ。

バレーノは“インド製のコンパクトカー”であるが、日本で開発され、インドで生産車として組み立てられる“インド市場を主力とした世界戦略車”と考えたほうが正しい。ハイブリッドやアイドリングストップ、4WDの設定はないが、それはインドが主力市場であるがゆえ。それでもミリ波レーダー式衝突被害軽減システムやアダプティブクルーズコントロール、運転席シートヒーターなどを備え、車両価格161万7840円は日本でも魅力的だ。

激戦のBセグメントにあって、高い競争力を持ったコンパクトカー。趣向の違いもあって、日本市場ではやや地味に見えるかも知れないが、その実力は相当なものだ。(文:松本雅弘/写真:永元秀和)

画像: ラゲッジルームは320Lでリアシートバックを畳むことなく、9.5インチサイズのゴルフバッグを積載できる。

ラゲッジルームは320Lでリアシートバックを畳むことなく、9.5インチサイズのゴルフバッグを積載できる。

●主要諸元<バレーノ XT>
全長×全幅×全高=3995×1745×1470mm 
ホイールベース=2520mm 
車両重量=950kg 
エンジン=直3DOHCターボ 996cc 
最高出力=82kW(111ps)/5500rpm 
最大トルク=160Nm(16.3kgm)/1500-4000rpm 
トランスミッション=6速AT 
駆動方式=FF 
JC08モード燃費=20.0km/ɜ 
タイヤサイズ=185/55R16 
車両価格=161万7840円
※取材車両のボディカラーはプレミアムシルバーメタリック3(オプション/2万1600円)。本革シート表皮、助手席シートヒーターなどのセットオプション(11万160円)を装備。

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