今から100年以上前に登場、自動車産業に革命を起こしたクルマがT型フォードだ。
そんなT型フォード(レプリカじゃなくホンモノ)を、実際にボクらがハンドルを握り、運転できる機会がある。愛知県長久手市にあるトヨタ博物館で、春と秋の年2回行われる「T型フォード運転講習会」がそれだ。参加してみた。
画像: 【乗ってみた】100年以上前のT型フォードを運転できる講習会に潜入【トヨタ博物館】

当選倍率は5倍と狭き門

2003年から始まったこのイベント、通常は午前と午後で2名ずつ、1日合計4名×2日しか講習を受けられない。受講料は5000円だが、毎回申し込みが殺到、当選倍率は「この春は4・75倍でした(トヨタ博物館・與語さん)」という。
 
狭き門ではあるけど、クルマ好きならば一度はチャレンジしたいところ…ということで、長久手市に行きT型フォード運転講習会に参加した。

画像: ▲右が1915年製のセンタードアセダンで乗車定員4名、左は1927年製のクーペで2名。トヨタ博物館にはモデルTは7台所有しているが、そのうちの2台。

▲右が1915年製のセンタードアセダンで乗車定員4名、左は1927年製のクーペで2名。トヨタ博物館にはモデルTは7台所有しているが、そのうちの2台。

まずはイメージトレーニング

当選した人には、まず博物館から運転操作方法を説明するソフトが送られてくる。実際にハンドルを握る前に、自宅でイメージトレーニングをしておかないと、これは大変。3ペダルの役割が、現代のクルマとまったく違うのだ。だから博物館に向かう新幹線の中でもイメトレを繰り返していく。
午後の部、13時30分からの講習が始まる。まずは座学。T型フォードの歴史や運転までの流れをビデオでレクチャー。その後、新館の前にある駐車場P2に移動する。トヨタ博物館に収蔵されているクルマは、ほぼ動態保存。普段、整備されたクルマはここP2でテスト走行されているそうで、トヨタ博物館に来た人が、偶然レア車の走行を見られることもよくあるという

まず最初に乗り込んだのは、1915年製のセンタードアセダン。御年102歳(!)のクルマでボディ色は黒、セルモーターはなくクランクでエンジンを回す、T型フォード初期のモデルだ。まずは車両学芸グループ、山田さんが運転する横に乗り、一連の運転作法を覚えていく。

画像: ▲まずは座学。ビデオにて運転操作の概要をお勉強。講習会に当選した人には自宅に運転操作ソフトも送られてくるので当日まで勉強。

▲まずは座学。ビデオにて運転操作の概要をお勉強。講習会に当選した人には自宅に運転操作ソフトも送られてくるので当日まで勉強。

画像: ▲フォード モデルTセンタードアセダン(1915)。かなりクセがある。

▲フォード モデルTセンタードアセダン(1915)。かなりクセがある。

画像: ▲エンジンはサイドバルブ式直列4気筒2896cc。最高出力は20ps/1600rpm。最大トルクは約11kgmという。低速トルクがあり扱いやすい。

▲エンジンはサイドバルブ式直列4気筒2896cc。最高出力は20ps/1600rpm。最大トルクは約11kgmという。低速トルクがあり扱いやすい。

思いのほか簡単に運転できた!

続いてお待ちかねのドライビング。運転席に座る。
「ではブレーキを離して、ゆっくりとハンドレバーを前に押し込み、左足をグッと踏み込んでください」と山田さん。そのとおりに操作すると、ゆっくりとT型フォードが前に進んだ。
右手のスパークレバーを下に下ろすと、速度が徐々に乗ってくる。もちろん重ステだが、スッと曲がりあまり力は必要ない。
 
左足を離すとハイギアになり、さらにスピードが乗ってくる。点火タイミングを早めるため左手でレバーを調整する。

それにしても、慣れると面白い。確かに現代のクルマと操作方法が違うから戸惑うけれど、このセミ2速ATの楽な操作は、当時画期的だったそうだ。「下手にMTを乗りこなしている人よりも、AT限定免許の人の方が慣れるのは早いと思います(山田さん)」というのも、なんかわかる気がする。トルクもあり、低回転でも粘りがあるのが走りやすさに輪をかける。

画像: ▲今回マンツーマンで運転を教えてもらったトヨタ博物館の車両学芸グループ、足立隆博さん(左)と山田 章さん(右)。お世話になりました。

▲今回マンツーマンで運転を教えてもらったトヨタ博物館の車両学芸グループ、足立隆博さん(左)と山田 章さん(右)。お世話になりました。

1927年製クーペは、より運転しやすい

画像: 1927年製クーペは、より運転しやすい

27年製クーペはモデル末期ということもあり、14年製ツーリングよりも走りやすい。スターター付きで始動も簡単だが、この頃にはすでにライバルの高級化戦略に負け、人気を失いつつあったという。

「T型フォードは丈夫なんです。累計で1500万台以上も生産され、じつは今でも消耗品を含むパーツが簡単に手に入るんですね。ですので、こういう一般の人が運転できるイベントが開催できるんです」と話してくれたのは、副館長の浜田真司さん。とはいえ100年前のクラシックカーを、一般の人が実際に運転できるのは、おそらく世界でここだけのこと。それほど貴重な体験、クルマ好きなら是非味わいたいもの。このイベントの開催は春秋の2回を予定する。トヨタ博物館のホームページをチェックしよう。

画像: ▲講習終了後、「T型フォード運転講習修了証書」が手渡される。登録ナンバーは「TAM-206」。206人目の講習修了者、ということ。

▲講習終了後、「T型フォード運転講習修了証書」が手渡される。登録ナンバーは「TAM-206」。206人目の講習修了者、ということ。

取材協力:トヨタ博物館

開館時間 9:30〜17:00 定休日:月・年末年始
愛知県長久手市横道41-100
0561-63-5155 

リニモ芸大通駅から徒歩5分にあるトヨタ博物館は、本館・新館合わせて世界のクルマ約160台を展示する。国産車もトヨタ車だけでなく、エポックとなった多くの他メーカー車が展示され、懐かしさもひとしおだ。本物のクラシックカーに座って写真を撮影できる場所も。また自動車関連書籍1万1000冊に及ぶライブラリーもある。

http://www.toyota.co.jp/Museum/

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