マカンターボの走りにさらに磨きがかけられた
ポルシェがカイエンに続く2つめのSUVモデルとして投入したミディアムクラスのマカンは、期待を裏切らない圧倒的な走りの世界が支持されて、瞬く間に市場で確固たる地位を築いた。マカン ターボ パフォーマンスは、そんなマカンの走りの実力に一層の磨きをかけたモデルだが、それは単に動力性能を向上させたという意味ではない。優れた走りの質を丁寧に磨き上げているのがなによりの特徴だ。
外装はボディ同色塗装サイドブレードが追加された程度だが、インテリアはアダプティブスポーツシートやアルカンターラルーフライニングなどによってグ ンと精悍、そして上質な印象となっている。見目麗しいだけじゃない。乗り込むとシートの確かなホールド感、そしていかにもポルシェらしいコクピットの設えが、走りの気分を昂揚させる。
メカニズムではやはりエンジンに注目だ。マカン ターボのV型6気筒3.6L直噴ツインターボに専用のマネージメントシステムを組み合わせたエンジンは、最高出力440ps、最大トルク600Nmを発生する。これはマカン ターボに比べ、実に40ps、50Nmの大幅なゲインとなる。そしてサスペンションにはPASMを組み合わせた15mmローダウンのスポーツシャシを標準装備。ブレーキにはマカン ターボより30mm大きい390mmという大径のスリット入りディスクが採用される。試乗車には、ポルシェ トルクベクタリング プラス(PTV Plus)や21インチの911ターボデザインホイールもセットされていた。
精緻なドライブフィーリングは紛れもなくポルシェ
その走りで、まず驚かされるのが快適性の高さだ。がっちりと剛性感高いボディを土台にサスペンションがしなやかに上下動して、あらゆる入力を難なくいなしてしまう。タイヤサイズを考えればなおのこと、驚異的な乗り心地と言える。
ドライバビリティの良さも、さすがポルシェだ。ステアリング、アクセル、ブレーキの操作に対する反応がとにかく正確で、微低速域から速度の乗った領域まで、クルマとの極上の一体感を味わわせてくれる。この精緻なフィーリングは、まさに紛れもないポルシェである。
もちろん見所はそれだけには留まらない。3.6Lターボエンジンの好レスポンスぶりはトップエンドに至るまで変わらず。この徹頭徹尾フラットなトルクカーブのおかげで、まさにどこから踏んでも即座に鋭い加速を得ることができる。7速PDKのダイレクト感も、その好印象に貢献しているのは言うまでもないだろう。とくに、標準装備のスポーツクロノパッケージを「スポーツ」あるいは「スポーツプラス」に設定した時の変速の歯切れの良さ、そして排気音は格別だ。
フットワークも、やはり速度域を問わず、意のままになる感覚。ロールが少なく、軽やかにターンインしつつも、アクセルオンでフロントが引っ張っていくから安心感も高い。電子制御式4WDのメリットが活きていて、とにかく踏んで行けるのだ。
冒頭に記したように、このクルマが具現化しているのは単なる高い動力性能ではない。速度域や走る場面を問わず、極上の一体感に浸らせてくれる精緻な操縦感覚こそ何より特筆すべきポイントである。改めて言うまでもなく、これは911にも共通のポルシェらしさだ。
そう、月並みながらポルシェが作れば4ドアでもSUVでもスポーツカーになる。マカン ターボ パフォーマンスは、改めてそのことを実感させてくれる1台である。
(文:島下泰久/写真:永元秀和)
主要諸元 <マカン ターボ パフォーマンス> 全長×全幅×全高=4700×1925×1610mm ホイールベース=2805mm エンジン=V6DOHCツインターボ 3604cc 最高出力=324kW(440ps)/6000rpm 最大トルク=600Nm/1500-4500rpm エンジン最高回転数=6700rpm トランスミッション=7速DCT(PDK) 駆動方式=4WD タイヤサイズ=前265/45R20 後295/40R20 車両価格=11,600,000円