夢の技術がついに実用化
マツダが発表した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」は、「世界の自動車産業を取り巻く環境の急激な変化を踏まえ、より長期的な視野に立ち、クルマの持つ魅力である“走る歓び”によって、“地球”、“社会”、“人”、それぞれの課題解決を目指すチャレンジ」というものだ。
そして“地球”領域では「“Well-to-Wheel”での企業平均CO2排出量を2050年までに2010年比で90%削減することを視野に、2030年までに50%削減を目標とする」とあり、さらに「クリーン発電地域や大気汚染抑制のための自動車に関する規制がある地域に対して、EVなどの電気駆動技術を2019年から展開する」と説明する。
こうした長期目標を実現するための具体的な手段が次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブX)」だ。これはかねてより世界の自動車メーカーが取り組んでいるが、いまだに実用化への道筋をつけたことがないHCCI(予混合圧縮着火)技術によるものだ。
具体的にはガソリンと空気の混合気をピストンの圧縮によってディーゼルエンジンのように自己着火させる。プラグ着火よりも燃料の密度が少ない混合気を効率よく燃やすことができる(スーパーリーン燃焼)ので燃費が向上し、さらにパワーもアップする。
ただし、すべての領域で圧縮着火するわけではなく、プラグ着火する領域もある。いかに圧縮着火する領域を増やすかが技術開発の課題だったが、マツダは独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controll Compression Ignition)」(火花点火制御圧縮着火)によって、それを解決した。
いわばガソリンエンジンとディーゼルエンジンの“いいとこ取り”のこのエンジンだが、「燃費、トルク、レスポンス」はディーゼル並み、「出力(伸び)、暖房性、排気浄化性」はガソリン並みだという。なお公表されたデータによると、スカイアクティブXは従来のスカイアクティブGに比べて全域で10%以上、最大30%以上のトルク向上を実現し、燃費は最大で20〜30%改善するという。
以上のように、スカイアクティブXは単に燃費が向上するというだけの技術ではない。より次元の高い走る歓びを低燃費で実現するものであり、その点からも大いに評価されるべき、歓迎されるべき技術だろう。
スカイアクティブXは2019年に導入されるが、どのクルマに搭載されるのかは未発表だ。考えられるのは次期アテンザ、あるいは次期アクセラだろうか。その動向を注目したい。また、スカイアクティブXが実用化された後も、アップグレードされたスカイアクティブG/Dが併売されるという。