東京モーターショー2017のスバルブースで注目を集めたコンセプトカー「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」。次期WRX STIだとの前評判だったが、どうやらもっと複雑な背景があるようだ。その真相を探るべく調査を進めたホリデーオート誌のスクープ班がたどり着いた結論とは?
画像: 東京モーターショー2017で公開された「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」は、あくまで“スポーツセダン”の将来像をイメージしたピュアコンセプトであり、次期WRX系は現行型のイメージを濃厚に残すという。

東京モーターショー2017で公開された「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」は、あくまで“スポーツセダン”の将来像をイメージしたピュアコンセプトであり、次期WRX系は現行型のイメージを濃厚に残すという。

次期WRX STIはFA20の2Lターボ。プラグインハイブリッドの搭載は難しい。

次期WRX STIは現行モデルのイメージを踏襲するも、質感を大幅向上してくる

「見た目の印象は、現行モデルからそんなに大きくは変わらないはず…」。そう語るのは、スバルの内部事情に詳しい人物である。すでに、デザインは決定しているそうだ。

現行インプレッサの登場以降、スバルは次世代車として新型プラットフォームを使い新たなデザインコンセプトを採用している。ならば、次のWRX系のデザインも大きく変わるのではないか? と尋ねたところ、こちらが拍子抜けするような答えが返ってきたのだった。

画像: 開発は兄弟車でもある次期レヴォーグとWRX S4が先行しているとの情報。両車は2019年の発売がマストだ。

開発は兄弟車でもある次期レヴォーグとWRX S4が先行しているとの情報。両車は2019年の発売がマストだ。

「ひと口にWRXと言っても、実際はSTIとS4、そして事実上の兄弟車だがワゴンとして別車種扱いされているレヴォーグが存在している。この3車はほぼ並行して企画・開発されていて、ベースは同じ。つまり、基本メカニズムやディメンションはもちろん、デザイン面でも共用すべきところは共用するから、どうしても(基本デザインは)集約的になってしまう。キャラクターの違いは、主に樹脂パーツで表現することになる」

スバルのブランドイメージを牽引しているクルマでもある。それゆえに、デザイン面では保守的にならざるを得ないのかもしれない。
「何でも変えればいいというものではない。WRX系は現行モデルでインプレッサとの関係を絶って独立した車型となったばかりだ。それに、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDのパッケージは今後も変わらない。一部にウワサされているハイブリッドも、S4とレヴォーグで検討されていることは否定しないがモデルライフ半ばまでは予定がないし、STIに至っては最後までスポーツ一辺倒で押し切ると聞いている。もちろん、新しいデザインテーマである“ダイナミック&ソリッド”は採用されるけれど、正常進化と言った方がいいと思う。ただし、質感は相当アップするはずだから、そちらは期待していい」

かつてWRX系は、2代目のフルモデルチェンジで大失敗。短時間で大幅なフェイスリフトをせざるを得なかった苦い経験がある。ならば正常進化が予想される次期WRX系のデザインは、ファンにとってはむしろ望ましいことなのかもしれない。

次期WRX STIは現行モデルのイメージを踏襲するも、質感を大幅向上してくる

「そういう意味で期待していいのは、一新される中身の方だね。S4やレヴォーグは欧州車にだって引けを取らないレベルを目指しているし、STIはさらに上質な速さを追求している」

前述のとおり、次世代スバル車には、新開発のSGP(スバル グローバル プラットフォーム)が用いられる。軽さと強さによる上質なハンドリングと、来たるべき電動化時代にも対応する優れたプラットフォームだ。これをベースにS4とレヴォーグはツーリングカーとしてさらなる高みを目指し、STIはより洗練された速さを身につけるという。

では、エンジンはどうなるのか。情報筋はそれこそが次期WRXのポイントになると言う。「S4とレヴォーグは2019年に登場することは間違いない。中期計画でも明らかにされているとおり、新世代の直噴ダウンサイジングターボを搭載する。恐らくS4とレヴォーグは1.8Lターボのみのラインアップに集約されるだろう」

画像: 次期WRX STI搭載エンジンは2種類。北米は2.4L直噴ターボ、国内仕様は2L直噴ターボ。WRX S4との性格の違いがさらに広がる…。

次期WRX STI搭載エンジンは2種類。北米は2.4L直噴ターボ、国内仕様は2L直噴ターボ。WRX S4との性格の違いがさらに広がる…。

ならば、STIはどうなる?
「一番気になるところだね。2019年には間に合わないかもしれないが。すでにあちこちでウワサになっているとおり、国内仕様はFA20DITにスイッチする。EJ20は現役を退くだろう。新エンジンは現行型のFA20DITとは別物だ。STIのための専用チューニングエンジンだと考えていい。開発陣は“スペックを超えた上質な速さ”を目標に据えているらしいが、ごく低回転からいまより大幅に向上する最高許容回転数まで、とにかくスムーズに吹け上がり、それでいて街中での扱いやすさも実現する。特別仕様のS208が先日発売されたが、次期STIはストックの状態でSシリーズを超えると言われている」しかも、その乗り味はあくまでしなやかだという。

画像: EJ20エンジンは現役引退。代わりに専用チューニングを施されたFA20DITが国内仕様に搭載される。

EJ20エンジンは現役引退。代わりに専用チューニングを施されたFA20DITが国内仕様に搭載される。

次期WRX STIの発売は2019年を予定するが、翌年にズレ込む可能性も…。

「もうひとつ、情報を教えてあげよう。北米仕様のSTIには2.4LのFA24DITが搭載されるらしいよ」

FA24というのは、来年北米で発売される大型の7シーターSUV「アセント」に搭載される新型直噴ターボエンジンだ。基幹部品は群馬県の大泉工場で生産されるが、組み立ては米インディアナ州の工場で行われる。最高出力は抑え気味(250ps前後?)だが、トルクは400Nmを超える。このエンジンをベースにチューニングを施し、最高出力を320ps前後まで上げたものが、北米仕様WRX STIに搭載されると言う。

画像: 2018年に北米で発表されるアセントは、2.4Lにボアを拡大した“FA24”が搭載される。

2018年に北米で発表されるアセントは、2.4Lにボアを拡大した“FA24”が搭載される。

「スペックだけで判断すると、国内仕様と北米仕様にそれほどの差はないはず。ただ、その出力特性は全然違うはず。どちらがよりSTIらしいのかは、まだわからないけれど」

日本仕様は現行型の正常進化である「軽やかな吹け上がり」が特徴で、北米仕様はどちらかと言えば「トルクで走る」チューニングになると予想できる。

ところでSTIが2019年には間に合わないと予想する根拠はなにか。
「レヴォーグとS4には次世代のアイサイトが搭載されるはずだが、マニュアルミッションのSTIには搭載されない。スバルの計画では2020年に次世代アイサイトを導入とあるから、前年に登場するレヴォーグとS4に前倒しでこれを搭載してくるはず。となれば、ピュアスポーツのSTIの開発よりも優先されるだろう。基本設計・開発は3車共通だが、最後の煮詰めは各車の開発チームが担当する。その人数はレヴォーグ&S4の方が多いと聞いている」

気になるのは価格だが、とくに最近のSTI特別仕様車の価格はどんどん上がっている。次期型はSシリーズの性能がデフォルトとなるということは、大幅な価格アップが心配されるが。

「価格がある程度アップするのは仕方がないんじゃないかな。スバルの次世代モデルは走りだけでなく、内外装の質感の向上にも力を入れているから。とは言っても、いきなりSシリーズに匹敵するレベルまで上がることはないと思う。あまり心配する必要はないと思う」

ちなみに、市販モデルのコンセプトカーは2018年中に北米で開催されるモーターショーに出品されるとのこと。可能性が高いのは、2018年11月のLAショーだろうか?
(ホリデーオート2017年12月号より)

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