オーナー:由良拓也 Takuya Yura
レース業界では超有名なレーシングカーデザイナー。スーパーGTで活躍する「SGT EVORA」などの設計や開発、それにCFRPなど複合材料を使った製品製作を請け負うムーンクラフトの代表。乗り物創造作家の肩書も持つ。1984年、ネスカフェの「違いがわかる男」のテレビCMで一躍脚光を浴びたことも。
雨蛙号 パワーウェイトレシオは驚異の3.82kg/psを達成! 本家タイプRを凌駕!!
そのボディカラーから「雨蛙号」と名付けられた由良拓也さんの愛車は、公認改造まで取得した
とんでもない車両! スペックは初代インサイトと同じ860㎏(軽い!)という車両重量を実現しており、それに225㎰の高出力ユニットを組み合わせた規格外の仕様だ。
パワーウエイトレシオで換算すると3.82㎏/㎰。現行シビックタイプRでも4.34㎏/㎰だから、本家タイプRも霞む驚愕モデルと言っていいだろう。
製作のきっかけは初代インサイトをたまたま格安で購入したことだったという。由良さんにお話をうかがうと、「初代インサイト抜群に燃費性能が良いのは知っていたけど、やっぱり空力を考えたデザインだよね。あと、この時代のホンダのスタイリングが魅力的だったのもあるね」と語り、初代インサイトの素材としての良さは、以前から注目していたようだ。
当初はバッテリーやハイブリッドシステムを取り去り、エンジンのみを活かしたターボ仕様を製作しようとしていたが、スプーンの市嶋社長から「インサイトにタイプRのエンジンが載る」と言われ、「それは面白そうだ!」と、エンジンの搭載や公認取得まで同社に依頼したという。
完成後、外観はノーマルのまま走行していたのだが、「高速だと不安定なクルマだと思い、エアロも作ってみた」とのことで、スーパーGTのマシンでも使われる最新の素材や製造技術などを惜しみなく採用している。
リアウイングがひときわ目立つが、それでも純正のスタイリングが気に入っていることもあり、他に手を入れたのは前後のチンスポやディフューザーくらい。ちなみエアロの形状は、レースの経験値から最適な形状をすぐに導き出したそう。
「仕事の合間を見ながらエアロを作っていたので、完成まで2年ほどかかっちゃった。遊びで作ったクルマだけど、全て本気で作ったよ(笑)」とも。
五感をビンビン刺激する運転が楽しいライトウエイトスポーツカー
さて、そんな怪物インサイトに試乗させてもらった。4気筒自然吸気らしい弾けるようなエンジンは、クロスレシオの6速MTとも相まって、ゼロスタートから高速域まで息つくヒマもなく吹け上がる。しかも高回転域での伸びは異次元といってもいい。今ドキ速いだけのクルマはたくさんあるが、軽量ボディにハイパワーなエンジンの組み合わせは、アナログ的な速さでありながら強烈な加速により、全身にビンビン刺激を与える。
しかし、それでいて剛性感も高く乗り心地を損なっておらず、高速域ではエアロの効果もあって、路面に吸い付くような走りを披露してくれる。
由良さん曰く「楽しいライトウエイトスポーツカー」というが、まさにその通りだ。これだけ手を加えた愛車だが、また別の新しいクルマも作ってみたいと言う。
「作るのが好きなんだよね。作っている時が一番楽しいよ」とも。また近いうちに型破りのクルマに会えるのかも!?
インサイト タイプR by 由良拓也 主な改造項目
オリジナルデザインGFRP・Fバンパー/CFRPFチンスポイラー&アンダーボディー/同クレーンネックマウントリアウイング/同リアディフューザー/ Spoon製S2000用改ドアミラー/カラードダッシュボード/オリジナルステンレスエキゾーストシステム/ Spoon製モノブロック4ポッドFブレーキ/アドバンネオバAD08R(205/45R16)/ 16×7.0JレイズCE28ホイール/ストラットタワーバー/ Fロワアームブラケット補強フレーム/大型アルミラジエーターなど
■文・取材:野里卓也
■写真:原田 淳