美しいスタイル、快適な乗り心地、最先端の安全性、軽快な走りetc。ヒットする要素がすべて揃っている
フルモデルチェンジなのかマイナーチェンジなのかがわからないほど、姿形を変えることなくキープコンセプトのまま世代の重ねるモデルとは明らかに違い、従来のV60との違いが、ひと目でわかる変化を遂げている。オーナーでなくても新しいことが、瞬時でわかるのがボルボの新型V60である。ただ先にデビューしたV90との違いを、はっきりと指摘できる人は少ないかもしれない。それは同じデザイン言語を持った、ボルボのエステート(ワゴン)ファミリーであることを強く主張しているからにほかならない。つまり美しいV90のデザイン手法が、そのままV60で表現されているということだ。
新しいV60のインテリアに目を移すとそこに広がるのは、V90とは異なる先にデビューしたXC60と同じ世界観のデザインである。ただし、縦型のメインディスプレイは共通だ。これこそがボルボのインテリアのアイコンであり中心的存在である。つまりこのディスプレイがボルボが語るストーリーの主役なのだ。
そしてそこに用意された舞台はクリーンでスマート。どこから見てもボルボそのものだし他のなにものでもない。これほど印象深いインテリアデザインは他に類をみない。そんな新型V60には、18年2月にスウェーデン ストックホルムで行われたグローバルローンチで初めて対面した。その時から心待ちにしていたのである。試乗する日が来るのを。
SPAを使った60シリーズの第二弾がワゴンボディのV60
走り出す前にまずはボルボのラインナップを整理しよう。SUVとして日本へ導入されているのがXC90、XC60、XC40であり、クロスオーバーとしてV90クロスカントリー、V60クロスカントリー、V40クロスカントリーがある。セダンはS90とS60のみ。そしてワゴンとしてV90、V60、V40が揃っている。その中でボルボの新世代アーキテクチャーのSPA(スケーラブル プロダクト アーキテクチャー)を使うのは90シリーズとXC60、CMA(コンパクトモジュラー アーキテクチャー)を使うのがXC40となる。
そして今回、日本導入前にいちはやくスペインで試乗することができたのが、60シリーズの第二弾となるV60である。この新型V60、最初に日本への導入時期を言ってしまうと18年の秋を予定している。
従来のV60も日本で高い評価を得てヒット作となったが、新型への期待もかなり大きく、注目すべきポイントも多い。ではどんなところが注目なのか。
まずはそのスタイルである。ボルボのワゴンのフラッグシップV90と同じデザイン言語でまとめられていて、横に2台並べないと、その違いを一瞬で見分けるのはとても難しいほどだ。しかしよく見るとかなり異なっていることに気づくはずだ。まずはヘッドライトが大きく違う。トールハンマーデザインを採用するのは同じだが、ヘッドライトの内側がフロントグリルまで伸びている。V90と新型V60を見分けるには、まずこの部分をチェックしたほうがいい。
サイドの美しいラインはV90に通じるものがあるが、ラゲッジルームをより有効に使うためV60は従来型よりもDピラーが立っている。
これならV70から乗り換えても、ラゲッジルームの使い勝手でそうそう不便を感じることはないだろう。その容量は529Lを確保する。さらに分割可倒式のリアシートバックを倒すことで1441Lにまで拡大することができる。またボディサイドの彫りが深くなっていることで、よりスポーティな印象になっている。ここもV90と異なっている部分だ
すべての電動化を進めているボルボらしくPHEVは2種類
新型V60のトピックスは、T8とT6に2種類のプラグインハイブリッド(PHEV)が用意されることだ。PHEVには今回試乗できなかったが、2L直4ターボエンジンを搭載するT6 AWD インスクリプションに試乗することができた。最高出力は310psとなるが、実は、日本へ導入されるのはどうやらT5が最初となるようだ。
ちなみにT5の最高出力は254ps。これはV90にも積まれている2L直4ターボエンジンで、V60よりも重いボディを軽々と走らせるのだから、V60だとさらに軽快さはアップするはずだ。さらに言えば、従来型にもこのエンジンは積まれている。新型になっても車重はあまり変わらないようなので熟成されている分、進化具合は手に取るように感じられるはずである。
さて走り出そう。最初の数百メートルで驚いたのが室内の静粛性だ。従来モデルよりもかなり静かになっている。ワゴンボディなので前席と後席では若干音の聞こえ方が異なるが、それでもこの静粛性はこのセグメントのワゴンではトップクラスだろう。
安全・運転支援機能系も上級モデルのV90と同等以上の機能が、〝インテリセーフ〞として標準装備されている。リラックスできて、長距離であっても疲れないボルボの特徴はこの全方位の安全装備も大いに貢献しているのである。ボルボには〝新しい機能は上級モデルから〞という考えはなく、新型モデルに積極的に採用する。このV60にもオンカミングミディケーション(対向車線衝突回避支援機能)にブレーキ機能が加わるなど安全装備が新採用されている。
V70からの乗り換えでも不満が出ることは少ない
試乗コースの高速道路に入り右足に力を入れてみた。予想どおり鋭い加速力である。カタログ値では0→100km/h加速は5.8秒。なかなかの俊足だ。追い越し時の加速もスムーズで、比較的ペースの早いスペインの高速道路でも余裕ある走りが味わえる。これなら制限速度の低い日本ではなおさら快適だろう。
ワインディングロードに入るとV60は軽快なフットワークを見せてくれた。積極的に高回転域を使って走ればコーナーのひとつひとつをクリアするのがとても楽しいのである。これならクルマまかせにするのはもったいない。積極的にギアを選んで走りたい、そんな気にさせてくれる。パドルシフトが用意されないのが残念だと感じるほどだ。
ところでこのセグメントは、ドイツプレミアムスリーがとても強い。つまりこのボルボV60が競合するのは、メルセデスベンツCクラスステーションワゴンやBMW3シリーズツーリング、アウディA4アバントなどである。いや、もうひとクラス上の5やE、A6かもしれない。だが、今回の試乗でこれらに引けをとらない実力を持ってるという感触を掴んだ。
ところで試乗会場に、1800ES、240、850、960とボルボの歴代ワゴンが展示されていた。この流れはV70へと受け継がれるのだが、このV60もボルボワゴンのDNAの継承者である。いまだに街中を多くのV70が走っているが、そんなオーナーにも日本へ導入された時には新型V60を一度見てもらいたい。きっと満足できるはずである。ボルボが長年の経験から培ったワゴンづくりのノウハウが、この新型V60にはぎっしりと詰め込まれているからだ。
主要諸元
ボルボV90 T6 AWD インスクリプション(欧州仕様)
●Engine=種類 直4DOHCターボ+スーパーチャージャー、総排気量 1969cc、ボア×ストローク 82.0×93.2mm、圧縮比 10.3、最高出力 228kW(310ps)/5700rpm、最大トルク 400Nm/2200-5100rpm、燃料・タンク容量 プレミアム・60L、燃費 総合12.5-11.1km/L※ 、CO2排出量 184-206g/km※
●Dimension&Weight=全長×全幅×全高 4761×1850×1420mm、ホイールベース 2872mm、トレッド 前1600mm/後1600mm、車両重量 1690(最小)~2069(最大)kg※、ラゲッジルーム容量 529/1441L
●Chassis=駆動方式 4WD、トランスミッション 8速AT、ステアリング形式 ラック&ピニオン、サスペンション形式 前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク、ブレーキ 前Vディスク/後Vディスク、タイヤサイズ 235/40R19
●Performance=最高速 250km/h、0→100km/h加速 5.8sec. (※データはEU準拠)