第1回目は、タイヤ履き換え後1週間でのファーストインプレッションをレポートした。その後、東京〜福島の長距離ドライブをはじめ、取材のお供として約1200km走行している。
第1回のレポートは、こちら↓
ウエット走行:グリップが強く安心感はピカイチ
POTENZA S007Aに履き換えたあと、日本列島をふつうと逆向きに襲った台風12号や関東を直撃した台風13号、突然の雨など、ヘビーウエットの路面を走る機会が何度かあった。
トレッドパターンの4本の太いストレートグルーブを見てもわかるとおり、POTENZA S007Aはウエットにとても強そうな顔を持つが、実際にウエット路を走っても、何事もなく普通に走ることができる。雨で路面にかなり水が浮いた状態の高速道路も走ってみたが、当然、ハイドロプレーニングがおこることもなかったし、不安になるような「手応えのヌケ感」もまったくない。
高速道路のインターチェンジ合流のような小さなコーナーで、試しに加速を続けてみても、手応えはまるでドライ路面を走っているときのようにしっかりとしている。そこからアクセルペダルを踏み続けていってもグリップは安定し、破綻するそぶりすらみせない。
イメージとしては、POTENZA S007Aのウエットグリップのレベルは、日本の法定速度内で、かつ「急」なドライブ操作(急ハンドル/急な加減速)をしなければ、土砂降りの雨でも基本的にはまったく何事も起きないほど高次元だ。
以前、ブリヂストンのプルービンググラウンド(テストコース)で、従来品のPOTENZA S001とのウエット比較走行をする機会があった。
性能チャートで見ると、新商品POTENZA S007Aのウエット性能はS001と同等なのだが、乗り比べるとウエットグリップ(とくに横グリップ)の限界が上がっていることを実感した。
試しにテスト車のESC(横滑り防止装置)をオフにして、クローズドコースのウエットハンドリング路を走行してみた。
従来品POTENZA S001でも、じつは相当にウエットグリップが良い。アクセルペダルを踏む右足に神経を集中すれば、加速/減速とも思いどおりで、ヒヤッとすることはなかった。前後だけでなく、横のグリップも粘りがあり、コーナーでアクセルペダルを徐々に踏み込んでいくと、限界を超えてからは穏やかに滑り出す。
新製品のPOTENZA S007Aは、「急」な操作をしない限りは、POTENZA S001同様に加速/減速の際にタイヤが空転することはなく、思いどおりのドライビングが可能だった。コーナリング時は、タイヤがグリップ限界を超え、クルマが横スリップを始める速度がPOTENZA S001よりもさらに高く、最後まで粘ってくれる。テストコースは下の写真のように、アスファルトに水が浮いているのがひと目でわかるほどのヘビーウエット状態だが、それでも運転していて安心感があった。
日常のシーンでは、雨の中、今回のテストのようにESCをオフにして走る…なんてことはないだろうが、このようにウエットグリップ限界が高くなったのは歓迎すべきことだ。
一般道走行:正確なハンドリングがもたらす気持ちよさ
POTENZA S007Aに履き換えたとき、最初に感じた良さが「正確なハンドリング性」だったというのは前回も書いた。そのファーストインプレッションが、日常での街乗りレベルでも同様に感じる…というのが面白いところだ。
ハンドリングの正確さなんて、たとえば高速道路を走行しているときとか、たとえばワインディング路を走っているときとか、それこそサーキットなどのクローズドコースで、限界に挑戦するようなときにだけ必要な性能なのではないか? そう疑問に思う気持ちもわかる。たしかに自分も履き換える前はそう考えていたところがある。
でも実際にPOTENZA S007Aを履いてみて、ハンドルを小さく切ったときには遅れなくクルマが動き、コーナーの曲率に合わせてハンドルを切ると、自分の意思のままに正確に曲がっていく…そういう、言ってみれば「当たり前」「普通」だと思えることが、じつは今まで、当たり前ではなかったということに気づくのだ。
POTENZA S007Aに履き替えて思うのは、そうした正確な応答性が、日常でのドライブ時にもプレミアム感を与えているということ。
前回も書いたが、路面継ぎ目が多い首都高での走行では、路面アタリは強く感じる。乗り心地的には硬め、という表現が正しいと思うが、ただ振動が残らずすぐに収束するから、不快にはならずスッキリとした味わいがある。また低〜中速域で走行中、とくに「ゴー」というロードノイズは、装着するクルマによるところも大きいが、メガーヌ・スポーツツアラーだと耳に届きがちだった。だが、そんなことは二の次に思えてしまうほど、日常域でハンドリングの正確さを実感し、そこに他のタイヤでは味わえない価値を見出せた。
ドイツのように速度無制限の高速道路もなく、一部で速度制限が引き上げられたとはいえ高速道路でも100km/h制限の場所が多い日本で、「そもそも、そんなハイスペックなタイヤって必要なの?」と思うかもしれない。でもそのクエスチョンって、「そもそも、日本でプレミアムカーって必要なの?」と言っているのと同じように感じる。
ブリヂストンのテストコースでは、高いコーナリング速度でもハンドル操作に対しダイレクトにクルマが動く楽しさを味わった。また、なかなかスキール音がせず、まったくヨレ感がないことにも驚いた。日常域では、そうした正確なハンドリングが、ドライバーにプレミアム感を与えてくれる。まさに「大きく打てば大きく響き、小さく打てば小さく響く」という言葉が相応しい。
タイヤとして全体的なパフォーマンスが高く、その上で、ドライバーの意思どおり、忠実にクルマを動かすタイヤだと思う。
POTENZA S007Aは、世界中のメーカーのハイパフォーマンスカーに標準装着タイヤとして選ばれたPOTENZA S001の後継モデルだが、そう書くとどうしてもアウトバーンなど海外の道をイメージしてしまいがち。
今回、1カ月履いてみてわかったことは、POTENZA S007Aは「日本の道にも合う」ということ。グローバルに展開するフラッグシップタイヤだが、やはりクルマの良さを引き出すことにも長けていると感じた。