スーパーカーが限られた一部の人しか所有できないクルマというのであれば、ロールスロイスのファントムはまさしくスーパーカーだ。今回はコストという概念とは無縁のファントムの世界を体感してみよう。(Motor Magazine 2018年10月号より)

高級という言葉では表現できない格別な世界

現在のロールスロイスはドイツとイギリスの合作と言っていいだろう。2003年からBMWの傘下になったことにより、ジャーマンテクノロジーを可能な限り投入し、英国のグッドウッド工場で「クラフトマンシップ溢れるクルマ作り」という超高級車の理想的な製造を守り続けている。そしてロールスロイスの旗艦モデルであるファントムは、どこを取り上げても他の追随を許さない唯一無二の存在だ。

2018年1月に日本導入が発表された新型ファントムのエクステリアデザインは、ロールスロイスの歴史を感じさせる風格を持ちながらモダンな雰囲気も演出している。パルテノン神殿をモチーフとしたラジエターグリルは誰もがロールスロイスとわかる。

さらにナローに見せるトランクリッドと、がっちりしたCピラーによって後部まわりは昔ながらのファントムをイメージさせる。

そして思い切り前方にレイアウトされたフロントアクスルとロングノーズが大型の高級車らしさを演出し、往年のシルバークラウドを彷彿とさせるボディサイドのショルダーラインは後方に向かうほど低くなる。さらにドアのサッシュや段差のないウインドウガラスのフラッシュサーフェイスなどもモダンなデザインが感じられる。

インテリアも高級という言葉だけではもの足りない。超高級な革を使うだけでなく、その縫製も英国のクラフトマンの手による丁寧な仕上げがなされている。ダッシュボードに広がる1枚の強化ガラス内には、インパネ、モニター画面、そしてオーナーが希望するアイテムを入れることもできるというユニークさも唯一無二だ。

観音開きの前後ドアにより、後席への乗り降りはとてもスムーズにできる。だが運転手やドアマンがドアを閉めてくれないときには少し不便なことがある、それはシートに座るとドアに手が届かないのだ。しかし、それは心憎い気配りにより、後席のCピラーにはドアクローズ用のスイッチが用意されている。これは運転席にも設置され、運転席だけでなく助手席のドアも閉めることができる。

シートやハンドルはやや大きめだが、調整範囲が広いのでベストなドライビングポジションを取ることができる。運転席の座り心地もすこぶる良好だ。たとえ日本一周ドライブをしたとしても苦痛に感じることはないだろう。

画像: 圧倒的な存在感を放つツートーンカラーのファントム。鏡のような艶を放つボディカラーの価格は237万5000円。

圧倒的な存在感を放つツートーンカラーのファントム。鏡のような艶を放つボディカラーの価格は237万5000円。

画像: 6.75L V型12気筒ツインターボエンジンは、570ps/900Nmを発生。溢れんばかりのトルク感が魅力。

6.75L V型12気筒ツインターボエンジンは、570ps/900Nmを発生。溢れんばかりのトルク感が魅力。

画像: トランクルームと呼ぶには豪華すぎるラゲッジスペース。

トランクルームと呼ぶには豪華すぎるラゲッジスペース。

画像: ファントムに相応しい落ち着いたデザインのホイールは大径の22インチ。静粛性の高いタイヤは255/45を装着。

ファントムに相応しい落ち着いたデザインのホイールは大径の22インチ。静粛性の高いタイヤは255/45を装着。

ショーファーカーに相応しいV12エンジンと高い静粛性

6.75L V型12気筒ツインターボエンジンは571ps/900Nmを発生する。市街地ではアクセルペダルの操作に気を遣いそうだが、過敏さなどいっさいなく、とても扱いやすい。これは車両重量によるものではなく、ショーファーとして扱いやすいクルマに仕上げてあるからだ。

しかもただ扱いやすいだけでない。いざアクセルペダルを深く踏み込むと、遅れずに加速が始まりターボラグを感じさせないところも素晴らしい。

ハンドリングの応答性もゲインが低めだ。大きめのハンドル径も手伝って舵角に正確なヨーの動きを引き出せる。またニュートラル付近は遊びがなく、微小舵から確実に動き、軽いながらもしっかりとした手応えを感じることができる。6m近い全長にもかかわらず、後輪ステアの効果もあり、意外と小まわりも効くので市街地でも苦にならない。

そしてブレーキだが、まさにショーファーカーに相応しいほど滑らかでスムーズに効く。しかし乗り始めて最初のブレーキタッチでは、効きが弱く感じるかもしれない。これは車両重量が影響しているのではなく、そこから少し踏力を増すと確実に減速し、しかもペダルストロークを深くしなくても制動感が増すという理想的な効き味なのだ。ショーファードリブンも楽にこなし、ドライバーとして運転を楽しむこともできるので長時間の運転でも飽きることはないだろう。

走り出して気づくのは、もの凄く静かなことだ。それはエンジン音だけでなく、タイヤの走行音、風切り音もほとんど聞えない。しかし、完全に音を断ち切った無音ではなく、全体の音量を心地よく下げているところが自然で良い。ファントムはたしかに唯一無二の突き抜けた世界の超高級車だ。(文:こもだ きよし)

画像: クラシカルなデザインの中にモダンな一面も取り込んだ運転席まわり。高級ウッドを採用したダッシュボードはスイッチ類が少なくスッキリとしている。

クラシカルなデザインの中にモダンな一面も取り込んだ運転席まわり。高級ウッドを採用したダッシュボードはスイッチ類が少なくスッキリとしている。

画像: ロールスロイスの象徴でもある観音開きドア。後席への乗り降りのしやすさはショーファーカーに相応しい。

ロールスロイスの象徴でもある観音開きドア。後席への乗り降りのしやすさはショーファーカーに相応しい。

画像: 天井一面に広がる星空に見立てたルームランプ。光量はアームレストに備わるスイッチで調整可能だ。

天井一面に広がる星空に見立てたルームランプ。光量はアームレストに備わるスイッチで調整可能だ。

画像: ウッドピクニックテーブルには大型液晶モニターとDVDプレーヤーが備わる。テーブルの開閉は電動式。

ウッドピクニックテーブルには大型液晶モニターとDVDプレーヤーが備わる。テーブルの開閉は電動式。

画像: リアシートのアームレストの奥には「リアクールボックス」もオプションで設定される。撮影車にはシャンパンとシャンパングラスが用意されていた。

リアシートのアームレストの奥には「リアクールボックス」もオプションで設定される。撮影車にはシャンパンとシャンパングラスが用意されていた。

画像: 後方に向かうほど低く絞り込まれるスタイリングも独特。

後方に向かうほど低く絞り込まれるスタイリングも独特。

ロールスロイス ファントム エクステンデット ホイールベース 主要諸元

●全長×全幅×全高=5990×2020×1645mm
●ホイールベース=3770mm
●車両重量=2750kg
●エンジン=V12DOHCツインターボ
●排気量=6749cc
●最高出力=571ps/5000rpm
●最大トルク=900Nm/1700-4000rpm
●トランスミッション=8速AT
●駆動方式=FR
●0→100km/h加速=5.4秒
●車両価格=6540万円

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