“ATFは無交換でいい”に一理あるものの、百害もある
エンジンオイル以上に、交換時期についてさまざまな意見があるATF。AT内部の潤滑だけでなく、各部作動のための油圧発生・伝達にも使用されることから、オイルではなく、フルードと呼ばれている。シビアな使用環境もあって「メーカー指定よりも早く交換すべし」や「メーカー指定は厳守」などの意見が飛び交っている。
肝心の自動車メーカーでは、8万〜10万kmでの交換を指定していることがほとんど。以前は“無交換”とするところも多かったが、最近では具体的な距離を指定するようになってきた。
メーカーの中でも気になるのが日産で、4万kmごとの交換を指定している。この数字は、ほかのメーカーのシビアコンディションに近いものだ。
ちなみに、シビアコンディションと聞くと悪路を走ったり、多走行距離といったイメージだが、ストップ&ゴーや低速走行、チョイ乗りなどの多い場合も当てはまる。つまり、街中で普通に使っているだけでもシビアコンディションと言えることが多く、日産の指定はこれを通常の交換指定としていると考えられる。
その昔“ATFは無交換でいい”と言われてきた時代もあっただけに、交換に抵抗があるかもしれないが、5万km走行したATFは真っ黒。トランスミッションを分解すると、細かい油圧ラインにはスラッジが堆積し、湿式のクラッチも焼け気味といった感じだった。これを踏まえると、頻繁に換えなくてもいいけど、定期的に交換する必要があると言っていい。
長い間交換していないATFを交換すると、ATがビックリしてトラブルが発生しやすいという意見を耳にする。確かに、洗浄力の強い新油がスラッジをはがし、流れ、そして詰まるということは“なくはない”。
その対策として、半量ずつ3カ月ほどあけて交換すればいい。劣化したATFを使い続けるほうが、よっぽどトラブル発生の可能性を高くするのだから。(文:近藤暁史)