陸上輸送の花形は大型トラックと言ってもいいだろう。【モンスターマシンに昂ぶる 第5回】では、見慣れているようで意外と知られていない大型トラックのなかから、至高とされるボルボ・トラック(VOLVO TRUCKS)のトラクターヘッド「FH」を紹介しよう。

2018年に連載してきた「モンスターエンジンに昂ぶる」。2019年からタイトルを「モンスターマシンに昂ぶる」に変更し、陸・海・空をゆくあらゆる“マシン”を考察していきたい。2019年1月6日まで、短期集中連載していこう!

陸上を疾走する豪華なクルーザー、ボルボ・トラック FH

今回は陸上貨物輸送の雄、大型トラックに焦点を当てよう。

ある取材で訪れたトラックショーの会場で、ひときわ存在感を示していたのがボルボ・トラックだ。一度はその名を聞いたことがあるかもしれない。今回は、その主力モデルである「FH」を体験取材した。

まずは、クルマファンでも意外と知らないトラックの基礎知識から。現在、陸送の主流はトレーラーと呼ばれる汎用の牽引車タイプだ。しかしトレーラーとはそもそも、コンテナやタンクローリーなど牽引される「荷車」のことを差す。この荷車を牽引するのが「トラクターヘッド」だ。ちなみにトラクターとは農耕車のことではない。「牽引車」という意味で、その頭=トラクターヘッドというのが正しい用語だ。

そのトレーラーの中でも多いのが、セミトレーラーに分類されるものだ。前半部重量をトラクターヘッドのカプラー(円盤状の連結器)に預け、後半部を自前の後輪軸で懸架する。

ボルボのトラクターヘッドが日本で注目された1990年代。高速陸送の合理化・効率化でトレーラー車両が増えた一方、これらの車両で「ジャックナイフ現象」という事故が頻発した。ジャックナイフといえば、急制動で後輪が浮き上がってしまうオートバイでの現象を思い浮かべるかもしれない。しかし、ヘッド部分が急制動で前のめりに倒れるわけではない。旋回&制動時に大きな慣性を持つトレーラーがトラクターヘッドより前に突進し、「く」の字型に折れ曲るような事故だ。

画像: 陸上を疾走する豪華なクルーザー、ボルボ・トラック FH

ボルボ・トラックに安全、快適機能が至れり尽くせり

そんな中、高速陸送の先進地域(しかも北欧)から来たボルボは、すでにジャックナイフ現象対策のひとつであるABSを採用していた。さらに、シート一体型シートベルトやエアサスを標準装備するなど、高い安全性と上質な快適装備を備え、プロ中のプロ=個人トラッカーから高い評価を得ていた。

車体面では、高硬度・高強度・耐食耐久性に実績あるスウェーデン鋼を多用して、シャシはもちろん、キャブの衝突実験でも優れた安全性を誇っている点。同社のキャッチフレーズに「交通事故に巻き込まれるトラックを完全になくす」とあるほどだ。

約13Lの直6ディーゼルエンジンは、欧州車共通のフラットトルク型。バスと違って積載/牽引重量の大小、走行条件が厳しいこともあり、ボルボではエンジンのダウンサイジングより、余裕ある排気量のまま低回転/大トルクで走行させる方針を貫いている。小型高出力指向で「踏んでしまう」よりも、タップリトルクで実用的な方が省エネということだ。このトルク特性を発揮するために、前進12速/後退4速の電子制御AMTが標準装備される。

画像: キャブの直下に収まる、緑色の12.7L 直6ディーゼルエンジンと排気タービン。最近のエンジンにしては補器が少なくシンプル。出力よりも、強力でフラットなトルク特性が特徴。

キャブの直下に収まる、緑色の12.7L 直6ディーゼルエンジンと排気タービン。最近のエンジンにしては補器が少なくシンプル。出力よりも、強力でフラットなトルク特性が特徴。

画像: 極めてフラットなトルク曲線が特徴。国産エンジンと比較すると面白い。

極めてフラットなトルク曲線が特徴。国産エンジンと比較すると面白い。

プロの仕事場として人気なのが、背の高いキャブ。国産車の全高は高いもので3.3m弱なのに対し、ボルボは3.7m強もある。標準コンテナの高さが約2.6m+台車部分の約1.2m=約3.8m。キャブの屋根に空気抵抗を減らすエアロパーツを付けるよりも、エアロ一体型の高い天井の方が合理的という考えである。

キャブの床面が高いため車内フロアをフルフラットにし、しかも運転席と助手席間をウオークスルーできるという、その開放感に驚く。しかも天井高は2m強もあるので、大柄なドライバーでも、直立姿勢で作業や移動ができる。

画像: 中型トラックを見下ろす視界は、2階建バスの上階に運転席があるようだ。特筆すべきは、国産車にはないフラットフロア。運転席から助手席にウオークスルーできる。ステアリングとシートのクリアランスも十分だ。

中型トラックを見下ろす視界は、2階建バスの上階に運転席があるようだ。特筆すべきは、国産車にはないフラットフロア。運転席から助手席にウオークスルーできる。ステアリングとシートのクリアランスも十分だ。

キャブは4端に配置されたエアサスでシャシに懸架され、高級車並みの調整機能を備えたシートもエアクッションで支持されている。ステアリングチルト機構やシート調整の幅も大きいので、窮屈感はまるでない。

本格的なベッドと天井部、ベッド下、車外にも収納スペースがあり、至れり尽くせり。この内装は欧米人が得意のプレジャーボートに近いといえる。

プロトラッカーに人気のモンスターは、多くの車両を見下ろしながら高速道路を悠然と航走する、まるでクルーザーそのものだ。(文&Photo CG:MazKen/ホリデーオート2018年7月号より)

※取材協力:株式会社ヨシノ自動車

画像: 2m近い室内高で、大柄な北欧の男性でも余裕で立つことができるだろう。しかも前後やベッド下に十分すぎる収納スペースが備わる。非常口兼用の天窓がある機能的なインテリアは、ヨットやクルーザー感覚だ。

2m近い室内高で、大柄な北欧の男性でも余裕で立つことができるだろう。しかも前後やベッド下に十分すぎる収納スペースが備わる。非常口兼用の天窓がある機能的なインテリアは、ヨットやクルーザー感覚だ。

D13H440型 エンジン主要諸元

形式:水冷直列6気筒ディーゼルターボ+インタークーラー
排気量:12.77L
最高出力:440ps/1800rpm
最大トルク:224kgm/1050〜1300rpm
燃料:軽油
参考燃費:約5km/L

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