ハイパフォーマンスなオープンモデルという贅沢
BMW M4カブリオレが日本に上陸した。かつてはM3にセダンとクーペがラインナップされていたが、今はセダンがM3、クーペがM4と明確にセグメンテーションされている。そして、初代M3から本国ではカブリオレが設定されていたが、そのデビュー以来30年間、日本に正規導入されたことはなく、今回が初めてのカタログモデルだという。
「M」のオープンとなれば、かなり特別なモデル、そして、日本はオープンカーの需要がそれほど高くないことを鑑みれば致し方ない判断だったのだろうが、一方で心待ちにしていた方もいるだろう。
そもそも「M」モデルは、BMWの中でもモータースポーツ直系のDNAを持つスポーツモデル。そして、M4でもよりスパルタンな「コンペティション」モデルをベースにM4カブリオレは仕立てられている。
試乗日は青空広がる絶好のオープンカー日和となった。オレンジのボディカラーは太陽の光を受けて深みを増し綺麗に輝く。そして、ホワイトのインテリアとのコントラストによりさらに際立つ。内外装の対比を同時に楽しめるのもオープンモデルならではのもの。シートなどレザーのみならず、ダッシュやセンターパネルもホワイトなのが新鮮。そして、シートベルトにもMラインがあしらわれ、自ずと気分も上がる。
トップを開けた瞬間、それだけで日常が非日常に変化する
M4カブリオレの心臓部には、3L直6ツインターボエンジンが搭載され、450ps/7000rpm、550Nm/2350-5500rpmという強大なパワー&トルクを発生する。となれば、オープンといえども、それなりにトンがった乗り味かと思いきや、良い意味で期待を裏切られた。
サスペンションがしなやかに動き、見事なボディコントロールを見せる。ドライブモードのスイッチはハンドルに装備され、状況に応じて、手を離すことなく即座に変えることができる。通常、コンフォートをチョイスするような荒れた路面でスポーツプラスにしてみると、明らかに減衰力は高まるが、それでも不快な突き上げはないし、接地が抜けることもない。
そもそも、フラットな路面のサーキットで使うモードでさえ、このしなやかさ。アダプティブMサスペンションシステムの威力を実感した。また、アクティブMディファレンシャルのおかげで、舵角の多いタイトなコーナーでもトラクションが抜けず、力強い蹴り出しを体感できる。
スポーツモデルはたいてい操舵力がズシッと重めだが、M4カブリオレはハンドリングやレスポンスだけでなく、パワステのアシスト量も3段階で変更できるので、非力な女性でも大丈夫だ。
どれだけパワフルかはスペックを見れば一目瞭然だが、扱いにくさはなく、ターボエンジンでありながら7600rpmという高回転まで淀むことなく吹け上がっていくのが気持ち良い。そして、オープンではその心地良いサウンドをよりいっそう、ダイレクトに堪能することができる。
リトラクタブルハードトップは、18km/h以下であれば走行中でも約20秒で開閉可能だ。軽さだけを考えればソフトトップの方が良いが、サーキットの高Gにも耐えることまで考慮すれば、ハードトップの方が剛性は高い。クーペライクなルックスのみならず、おそらくMカブリオレはそこまで考えてハードトップをチョイスしたのではないだろうか。
トップを開けた瞬間、それだけで日常が非日常に変化する。そして、究極の非日常、サーキットに持ち込んでも存分にスポーツを堪能できる。もちろん、トップを閉めればクーペとして、日常に使える。そして、これらどのシーンにおいても、実用性、快適性、クルマとの密な時間を味わえる。
これほどまでにワイドレンジでそれぞれのシーンを楽しめるクルマはそうそうないだろう。けっして安くはないが、エクストラコストを払う価値は十分にあると思えた。スポーツドライビングからオープエアドライブまで楽しみたいという欲張りな方にオススメだ。(文:佐藤久実)
BMW M4 カブリオレ コンペティション 主要諸元
●全長×全幅×全高=4685×1870×1390mm
●ホイールベース=2810mm
●車両重量=1880kg
●エンジン=直6DOHCツインターボ
●排気量=2979cc
●最高出力=450ps/7000rpm
●最大トルク=550Nm/2350-5500rpm
●トランスミッション=7速DCT
●駆動方式=FR
●車両価格=1380万円