ライフスタイル路線に乗って登場した初代A1
今世紀に入って、クルマに「ライフスタイル」なる標語が使われるようになった。“ライフスタイルに合わせたクルマ”という表現にはちょっと意味不明な点もあったが、なぜか新鮮であった。
その言葉が多く使われ、ヒットしたのMINIだ。2001年に登場した全長3.6mのMINIはバリエーションを拡大し、ユーザーの「ライフスタイル志向」に訴えた。当時このプロジェクトを監督していたDr・ブルクハルト・ゲッシェル氏(開発担当副社長)は「復活のキーはプレミアム、そして“ライフスタイル”に訴えかけること!」と語っていた。
このMINIは計画どおり大ヒット、この成功に影響されたのがアウディA1だ。当時、アウディは不成功に終わったA2に代わり、ポロのプラットフォームを用いて小型クラスへの進出を計画しており、A1はまさにそのライフスタイル路線に乗って登場した。
スタディモデルは2007年の東京モーターショーに出品された「メトロプロジェクト クワトロ」だ。真っ赤なボディにグリーンハウス上縁をシルバーで囲んだ大胆なカラーリングを持った3ドアハッチバックは、その3年後に登場したA1とほぼ同じだった。A1は欧州で発売が開始され、その後5ドアのA1スポーツバックも追加、2018年5月までにおよそ90万台がベルギー工場から出荷された。
シャープで迫力あるデザインでスポーティさを強く押し出す
新たにプラットフォームMQB/AOをベースに誕生したのが第2世代のA1である。全長×全幅×全高/ホイールベースは4029×1740×1433mm/2563mmと、旧モデルよりもボディは75mm、ホイールベースは94mm長い。また、全幅は変わらないが、全高は10 mmほど高くなっている。ちなみに新型A1は5ドアボディのみの設定で、正しくはA1スポーツバックとなる。
その結果、スペインで対面した最初の印象は「随分と大きく、立派になった!」と久しぶりに対面した息子のようだった。シャープな線と面で構成されたエクステリアデザインには、ダミーではあるがボンネットの上縁に1984年のスポーツクワトロの特徴であった3本のスリットが加わり、精悍でスポーティな姿だ。旧モデルでは20%しか売れなかった3ドアのラインナップはない。
一方、インテリアは他のアウディ同様にデジタル化が進み、ドライバー正面には標準の10・25インチのバーチャルコックピット、そしてダッシュボード中央には1950ユーロ(約25万円)のオプションになるが10.1インチのMMIタッチスクリーンがドライバーに向かってレイアウトされる。ちなみにこの鮮明なインフォメーションとボイスコントロールを操作するソフトウエアは、トップモデルのA8から移植された。
インテリアで気になったのはコストセーブで、見た目はともかく、触ってみると安価なハードプラスチックが多用されていた。またゴツいハンドブレーキレバーも残る。
試乗車は、もっともパワフルな200ps/320Nmを発揮する2L直4ターボエンジンを搭載するA1スポーツバック 40TFSIで、6速Sトロニックとの組み合わせで0→100km/hには6.5秒、最高速度は235km/hに達する。
まずはスペインの市街地を駆け抜けて郊外へ飛び出すが、低回転域から湧き上がるトルクはドライバー込みの重量およそ1200kgのボディを軽快に飛翔させる。
ターボエンジンはパワフルだが、回転を上げていくと、金属的な響きが結構気になる。まあ、街中では使えるのだが、オートルート上ではまったくの新車のためか回転の上がりがやや緩慢で130km/h付近まで加速するのがちょっと辛い。しかし、アスカリサーキットまでの峠道では、シャープで路面感覚をしっかりと伝えてくれるハンドリングにより楽しいドライブを堪能できた。
新型A1はドイツでは2018年11月末から発売が始まっており、1L直3ターボエンジンのエントリーモデルが2万1150ユーロ(約280万円)からと発表されている。日本導入時期と価格はまだ発表されていない。(文:木村好宏)
アウディA1スポーツバック 40 TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高=4029×1740×1433mm
●ホイールベース=2563mm
●エンジン=直4DOHCターボ
●排気量=1984cc
●最高出力=200ps/4400-6000rpm
●最大トルク=320Nm/1500-4400rpm
●トランスミッション=6速DCT
●駆動方式=FF
●最高速=235km/h
●0→100km/h加速=6.5秒