(Ⓒ2018 Twentieth Century Fox Film Corporation)
少女の姿をした最強兵器「アリータ」が戦う理由とは?
『アバター』と『タイタニック』で、全世界での歴代映画興行収入の1位と2位を独占しているジェームズ・キャメロン監督。この2本は、ふだんあまり映画を観ないという人でも劇場に足を運んだのではないだろうか。
そのキャメロン監督は現在『アバター』の続編以降作品を製作中だが、製作・脚本に関わった新作がこの2月に公開される。
それが日本のSFコミック、木城(きしろ)ゆきと原作の「銃夢(ガンム)」を原作とした「アリータ:バトル・エンジェル」だ。
キャメロンに原作コミックを紹介したのは、日本のアニメやコミックに精通しており『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を受賞、『パシフィック・リム(実はキャメロンの勧めで押井守監督作『機動警察パトレイバー』を観て構想を得たのだそうだ)』で日本特撮ファンを喜ばせたギレルモ・デル・トロ監督。
原作を読んだキャメロンは、自身で脚本を書きながら『シン・シティ』でアニメチックな手法を実写映画に取り入れるなど斬新な手法で映画界に新風を送り込んだ旗手、ロバート・ロドリゲスに監督を依頼。
その独特の感性は本作にも脈々と波打たれているが、驚いたのはロドリゲス監督作品なのに、その映像の在り方が実にキャメロン的なこと。
監督をしたのがキャメロンだと言われても信じてしまうほどに映画的色合いが酷似している。それほどロドリゲスは原作とキャメロンに心酔して本作に関わったのではないだろうか。
物語は現在の世界からかなり遠く離れた未来世界。世界を揺るがした没落戦争後、支配する者とされる者に分断された世界で始まる。
天空都市ザレムから輩出される大量廃棄物に埋もれた地上のアイアン・シティ。そこで暮らすサイバー医師のイドは瓦礫の中からひとつの少女の形をした頭部を見つける。
記憶はなかったが奇跡的に脳が生きていることを知ったイドは、その頭部に新しい機械の身体を装着し、ひとりの少女の姿へと蘇らせた。
少女はアリータと名付けられイドと暮らしていくが、ある日彼女は自分の中に驚異的な戦闘能力が秘められていることを知る。実は彼女は300年前の大戦中に作られた“最強の兵器”だったのだ。
果たしてアリータは自分の秘密を知るため、生きる意味を見つけるために“本当の自分の敵”との戦いの旅に出ることになる。
特筆すべきは、映画で表現されるアリータの大きな双眸だろう。これはコミック的な手法で実写映画化に挑戦したことの証し。
日本でよく見るコミックの女性キャラクターたちは一様に目が大きめにデフォルメされている。アニメーションにすればその目の大きさが可愛らしさに繋がるが、実写にしてしまえばかなりの違和感があるのは否めないところ。
そこをかなりギリギリのラインまで拡大して表現している。最初はかなり違和感があるが、見慣れてくればアリータの個性として映画の中で存在感を立ち上げていくし、とんでもなく美人にさえ見えてくる。最初の頃だけ少しの違和感を我慢して観ていただきたいと思う。
とにかくキャメロン映画では、現在の映画的世界で最も独創的かつ最先端の映像を楽しめるのも注目点のひとつ。
本作でもかなり作り込まれたCG映像(未来都市やそこで稼働している乗り物、何体ものサイボーグたちとのバトルシーンなど)が、我々の想像力を未来へ誘ってくれるはず。
『アリータ:バトル・エンジェル』はシリーズ化を想定して製作されたそうで、原作コミックのストーリーをどこまで描いていくかは原作ファンにも注目だろう。
本作を観た後では早く続きを観たくなるはず。まず我々はこの壮大かつ魅力的なコンテンツを純粋に楽しむことにしよう。(文:永田よしのり)
2月22日 全国ロードショー公開
上映時間:122分
製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローサ・サラザール、ジェニファー・コネリーほか
配給:20世紀フォックス映画