1985年に2台のトヨタトムス85Cがル・マン24時間を走った。それ以来、トヨタは多くのレースカーを開発しル・マンで名勝負を演じてきた。なかでも、1998年に登場したトヨタTS020 GT-One は「ル・マン制覇」への切実な思いが感じられるマシンだった。
規定ギリギリで作り上げられたたGT1カー、それでもル・マンの壁は厚かった
1998年、ル・マン24時間の争いはGT1カーとWSCカーとなっていたが、大幅に進化した各ワークスチームのGT1カーはロードカーとはかけ離れたものだった。
1995年、96年とLMGT1規定で製作されたスープラGT LMで参戦したトヨタは、1年のインターバルを経てTS020 GT-Oneでル・マンに復帰するが、その姿はライバルのGT1マシンと比べても異質なものだった。
カーボンモノコック製のマシンはかつてのCカーとほぼ同じ外観を纏い、Cカー時代の強力な3.6L V8ツインターボエンジン搭載。トランクルームに燃料タンクを収めるという奇策まで講じられた、規則の隙をついたようなマシンと言えた。
しかし、優勝候補と言われながら、3台出場のうち2台がリタイア。片山右京/鈴木利男/土屋圭市組の9位が最上位だった。
翌1999年には規定が変更になり、LMGT1はプロトタイプカーのLMGTPとなる。トヨタは前年のTS020を新規定に合わせた発展型で参戦したが、残り1時間でタイヤがバーストして2位。またもや優勝はお預けとなった。
その後、トヨタは2012年に「TS030 HYBRID」が登場するまでル・マン24時間レースから遠ざかることになる。
トヨタ TS020 GT-One 1998年 主要諸元
●全長×全幅×全高=4840×2000×1125mm
●ホイールベース=2800mm
●エンジン=V8DOHCツインターボ
●排気量=3.6L
●最高出力=299ps/5700rpm
●駆動方式=MR