これこそが、公道も走れるレーシングカーだ。
1957年、イギリスのウオークレット兄弟が「ジネッタ」と名づけたコンペティション・スポーツカーの販売を始める。何種類もの小型スポーツカーを製作したウオークレット兄弟だが、1989年には会社を売却。その後、紆余曲折を経たが現在も会社は存続し、少数ながらスポーツカーを作り続けている。
ここで紹介するのは、ウオークレット兄弟が会社を売却する直前まで生産していた「G12」だ。オリジナルは1966年に短期少量生産されたコンペティション・スポーツカーだが、'80年代末期に復刻版として再生産された。
オリジナルと同じ治具で作られた復刻版のG12は、シャシの構造もレイアウトもそのままだが、ボディサイズはひとまわり小さくなっていた。
ミッドシップに搭載されるエンジンは、オリジナルは158psを発生する1.6Lの直4 SOHCだったが、復刻版ではコスワース社製のYAC型2.0Lの直4 DOHC16バルブを搭載。45mm径のウエーバー製キャブレターを2連装し、190psと21.6kgmを発生した。
トランスアクスル式のトランスミッションは、当時のF3などにも使われていたノンシンクロの平歯ギア5速MTだ。
ロールケージに囲まれたコクピットは、固定式のバケットシートにウイランス製のフルハーネス、MOMO製の小径ステアリングの向こうにスミス製のメーターやルーカス製のタンブラースイッチが並ぶなど、まさにレーシングカーそのもの。だが、日本でも保安基準を満たしており、ナンバーを取得して公道を走行することは可能だった。
600kgを切る軽い車重に190psだから加速は鋭く、コーナリング速度は十分に速い。平歯ギアのミッションも切れ味良いシフトフィーリングだ。
エキゾーストノートは、コスワース一族のエンジンに共通な澄み切った小気味良い音色だ。リアクオーターウインドーのおかげで後方視界も悪くない。
とはいえ、エアコンは非装着だし、ラゲッジスペースもない。助手席はあるが居住性は悪い。やはりこのクルマは、まぎれもなくレーシングカーなのだった。
ジネッタ G12コスワース(1989年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:3500×1550×1050mm
●ホイールベース:2286mm
●重量:580kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:190ps/6500rpm
●最大トルク:21.6kgm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前195/60R13、後205/60R13
※モーターマガジン社アーカイブからの懐かしく珍しいクルマの紹介は、今回でひとまず終了します。また機会をあらためて、アーカイブから秘蔵のクルマ?を探し出して紹介する予定です。