デビュー時とは大きく姿を変えて現れた「917」
耐久レースの王者と言われるポルシェだが、1970年、「917」でル・マンで初優勝を遂げた日のことを忘れることはできないだろう。歴史に残る悪天候の中でのポルシェ初優勝はいまも語りぐさになっている。
1970年、ル・マン24時間レースの前哨戦となるデイトナ24時間レースに姿を現した「917」は前年までの「917」とは大きく変わっていた。可変ウイングが禁止されたことから、リアエンドを大きく跳ね上げた斬新なボディフォルムに変わっていたのだ。可変ウイングにかわって大きなダウンフォースを獲得するための苦肉の策だった。これにあわせてフロントカウルの形状もスクエアなデザインとなっていた。
デイトナで勝利したポルシェ917は、1970年のル・マンに必勝体制でのぞんだ。ワークスとしてのエントリーを見送り、プライべーターたちにホモロゲーション取得のために製作したマシンを託し、チームを全面的に支援する形で参戦することになった。
前年のル・マンに登場したロングテール仕様の「917LH(Lang Heckラングヘック=ロングテール)」、ショートテール仕様「917K(Kurzクルツ=小さい)」、軽量化モデルなど、ざまざまなチャレンジも見受けられた。
前年のル・マンで4連勝を飾ったフォードがこの年のル・マン参戦を見送ったこともあり、ポルシェは絶対の自信を持って乗り込んだが、ル・マンは簡単には勝たせてくれなかった。ストレートをまっすぐに走れないほどの悪天候に見舞われ、ロングテールの「917LH」は3台ともリタイアしてしまった。
結局、完走わずか7台というル・マン史上に残る壮絶なレースを制したのは、ポルシェ ザルツブルグチームの「917K」だった。2位も同チームの「917K」、3位には「908スパイダー」が入り、ポルシェは1-3位を独占する快挙を達成するのだった。
ただ皮肉にも、排気量が5Lにアップされた新開発エンジン搭載車はリタイア、ル・マン用にロングテールとした「917LH」もふるわなかった。
1970年、ついにル・マンで金字塔をあげたポルシェ「917」は、その後、スポーツカーレースを席巻、モータースポーツ史に残る快進撃を見せることになる。(続く)