大人二人がしっかり座れる3列目シート
SAV(スポーツアクティビティ ヴィークル)の最高峰として登場したBMW X7は、まず見た目の迫力で圧倒してくる。なにしろボディサイズは、全長5151mm×全幅2000mm×全高1805mmにも及ぶし、左右が連結された過去最大級のキドニーグリル、その大きさを強調する薄いLEDヘッドランプなどが形作るフロントマスクも威圧感たっぷり。アメリカでならまだしも、日本の都心で遭遇したら、思わずたじろいでしまうに違いない。
これほどのサイズだけにインテリアは余裕たっぷりだ。最新のBMWライブコクピットを採用した運転席まわりは、基本デザインをX5と共有しつつ、よりラグジュアリーな仕立てに。天地方向にサイズを拡大したラジエーターグリルに合わせてフード先端も嵩上げしているので、高い着座位置からはボンネットがよく見える。これは取り回しの面でも悪くない。
シートレイアウトは3列が標準で、2列目は左右独立タイプの2座とベンチタイプの3座から選択できる。2列目はスライドとリクライニングが可能で、3列目にスペースを割り振っても、まだゆったり寛げるだけの余裕がある。ベルトラインが低いおかげで視界も上々。座ってみれば、ここが特等席だとすぐにわかる。
3列目も大人2名がしっかり座れる。2列目よりさらに高いヒップポイント、頭上や左右の余裕、アームレストや独立したエアコンの装備などによって、ほぼ我慢の要らない空間になっているのだ。
しかも空を見上げれば、前、中央、後の3セクションにわかれた大型パノラミックグラスルーフが抜群の開放感をもたらしている。さらにオプションのスカイラウンジを選べば、埋め込まれたLEDが1万5000ものグラフィックパターンで魅せてもくれるのだ。
広大なスペースを荷物のために使いたいというニーズも当然忘れてはいない。荷室容量は3列目を起こした状態でも326Lを確保。電動式のバックレストを折り畳めば、最大では2120Lもの空間を生み出すことができる。これでも足りないということ、そうはないはずだ。
どんな入力も包み込むようにクリアする快適な乗り心地
日本仕様はディーゼルエンジン搭載モデルからの導入となりそうだが、試乗車は3L直列6気筒ターボエンジンを搭載したxDrive 40iだった。物足りないかとも危惧したが、走りはこちらでも十分に軽やかで、発進からクルマを重たげに感じさせることなくスーッと速度を高めていく。
この時の室内は非常に静か。二重構造バルクヘッドの採用、リアゲートのそれ以外を遮音ガラスとするなどの対策によって、あらゆる騒音が抑えられており、前後席間でも自然に会話を楽しめる。ディーゼルならばなおのこと、その恩恵は大きそうだ。
乗り心地の良さにも驚いた。4輪エアサスペンションは柔らかくストロークして、いかなる入力も包み込むようにクリアしてしまう。その分、うねった路面などでは、上屋が揺り返すような動きもないわけではないが、次の瞬間にはスッと収まるし、基本的にはロングホイールベースを活かして、ゆったり真っ直ぐ走ってくれる。
それでいてワインディングロードを走ると、BMWらしい意のままに曲がる感覚を味わわせてくれるのだからさすがだ。インテグレーテッドアクティブステアリング特有の癖はあるが、切れ味のいいコーナリングについ頬が緩み、どんどんペースが上がってしまった。
余裕のスペースと上質な仕立て、そしてBMWのイメージを覆すほど静かで快適な乗り味で極上のラグジュアリー感を表現しながら、その奥底にはちゃんと駆け抜ける歓びも備えているX7は、このセグメントの個性豊かなライバル達の中でも埋没することのない1台に仕上がっている。期待の日本上陸までには、それほど時間はかからないはずだ。(文:島下泰久)
■BMW X7 xDrive 40i主要諸元
●全長×全幅×全高=5151×2000×1805mm
●ホイールベース=3105mm
●車両重量=2395g
●エンジン= 直6DOHCターボ
●排気量=2998cc
●最高出力=340ps/5500-6500rpm
●最大トルク=450Nm/1500-5200rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT