ゴールデンウイークの短期集中連載企画として、日本のスーパーカーブームを築いた1970年代のスーパーカーを紹介していきたい。第3回は、カウンタック、BBと並ぶ「スーパーカー御三家」の1台、ポルシェ 930ターボだ。(ホリデーオート2018年11月号別冊付録より)

KKK製ターボで動力性能を高めた911シリーズの最高峰

「PORSCHE 930 Turbo:ポルシェ 930ターボ」

画像: ノーマルの911カレラよりワイドなリアフェンダーと巨大なリアウイングがハイパワーを感じさせる佇まい。

ノーマルの911カレラよりワイドなリアフェンダーと巨大なリアウイングがハイパワーを感じさせる佇まい。

Can-Amレースに本格参戦したポルシェは、5Lのフラット12ターボで大排気量のシボレーV8勢を蹴散らし、1972-73年シーズンを席巻した。その後、燃費規制の導入などもあってワークス活動からは撤退したが、ターボポルシェ(917/10K、同30K)の速さは人々の脳裏に強く焼き付いた。

1973年のフランクフルトショーに、911ベースだが明らかにカレラよりも幅広い(実際、123mmも広かった)ワイドフェンダーと大型リアウイングを備えたプロトタイプが出品される。2.7Lのフラット6はエーベルスペヒャー製ターボで過給され、280psを発生すると公表された。

翌74年には「930ターボ」と名付けられてパリショーに登場。75年からデリバリーを開始するとアナウンスされる。

画像: リアウイングは後期型ではさらに大きくされていた。

リアウイングは後期型ではさらに大きくされていた。

リアに縦置き搭載される930/50型エンジンは911伝統の空冷フラット6。排気量は2994ccでKKK製3LDZターボを装着し、ブースト圧0.77バール、圧縮比6.5:1とボッシュKジェトロニックによる燃料供給で、260ps/35.0kgmを発生。最高速度は250km/h以上と公表された。

これだけの高性能車にもかかわらず、トランスミッションは当初4速MTのみだった。これをポルシェは「4速で十分性能を発揮できるから」と説明したが、実はサーボシンクロ機構がターボのトルクに耐えられないため4速にしたとも言われている。

画像: 後期型は圧縮比7.0とKEジェトロに過給圧0.8バールのKKKターボを装着し300psを絞り出す。

後期型は圧縮比7.0とKEジェトロに過給圧0.8バールのKKKターボを装着し300psを絞り出す。

とは言え、930ターボは市販モデルでも実測で240km/hオーバーを確実にマークした。イタリアン・スーパーカーの多くが6個のツインチョークキャブレターの同期調整に手こずり、本来の性能が発揮できなかったのとは対照的で、この安定性がポルシェの真骨頂とも言えた。

1978年にはさらに戦闘力を高めるためエンジンを3.3Lにスケールアップする。リアウイング内には空冷インタークーラーを搭載し、圧縮比を7.0:1に上げた結果、最高出力は+40psの300psに、トルクは+5kgmの40kgmまでアップした。

クラッチ機構の改良でエンジン搭載位置が30mm後退し、インタークーラーをエンジンフードの真下に装着したため、リアウイングの形状が変わっているのが特徴だ。

画像: 機能性に徹したコクピット。89モデルが出るまでトランスミッションは4速MTだった。

機能性に徹したコクピット。89モデルが出るまでトランスミッションは4速MTだった。

1980年代以降もマイナーチェンジが繰り返されるが、中でも大きな変更が1989年のトランスミッション換装だろう。それまでのG930型4速MTに見切りをつけ、ボルグワーナー製G50型5速MTの採用に踏み切ったのだ。

熱したナイフでバターを切るような…と言われたポルシェシンクロの操作感を惜しむ人もいたが、節度感のあるボルグワーナーのシフト感を歓迎する声が多かったのも事実だ。

と同時に、1989年をもって930ターボは15年間にわたる歴史の幕を閉じる。圧倒的な高性能をいつでもどこでも引き出せるポルシェ911の頂点は、次世代の964型に移行した。

画像: ヘッドレスト一体型のスポーツシートはポルシェの伝統で、現行の911まで引き継がれている。

ヘッドレスト一体型のスポーツシートはポルシェの伝統で、現行の911まで引き継がれている。

ポルシェ 930ターボ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1775×1320mm
●ホイールベース:2270mm
●重量:1140kg
●エンジン:空冷・水平対向6 SOHCターボ
●排気量:2994cc
●最高出力:260ps/5550rpm
●最大トルク:35.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:4速MT
●駆動方式:リア縦置きRWD

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