初開催の難コースを攻略したタナック
WRC初開催となったラリー・チリのステージはラリー・フィンランドとラリーGBをミックスしたような高速の森林ステージが中心。当然ながらペースノートもゼロから作りあげるため、どのドライバーにとってもチャレンジングな1戦となった。
前戦アルゼンチンをオルタネーターのトラブルで落とし、選手権ポイントでティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイ)、セバスチャン・オジエ(シトロエン)に遅れをとったトヨタのエース、オイット・タナックにとっては、どうしても勝っておきたいイベント。デイ1金曜日のSS1こそセッティングが決まらず本人にとっては不満のスタートとなったが、それでもSS2で早くも首位に浮上する。
昼のサービスで高速で滑りやすい路面に合わせてセッティング変更を施したタナックとヤリスWRCは、午後のステージでさらにペースアップ。ライバルを圧倒するタイムを並べ、初日を終えて2位のオジエに22.4秒の大差をつけた。
土曜日午前には他のドライバーがスペアタイヤ1本積みで臨んだのに対し、タナックは重量過を承知の上で安全策のスペア2本積みでスタートする余裕もみせてこの日も首位をキープ。
最終日前半はマシンとタイヤをセーブして走り、ボーナスポイントのかかる最終パワーステージでフルアタックすると、あっさりとベストタイムでフィニッシュし、優勝(25点)+ボーナス5点のフルポイント30点を獲得した。
「すごくタフで難しいラリーだったけどミスなく走れた」とフィニッシュ後に笑顔を見せたタナックは、これで選手権ランキング2位に浮上した。
ほかのトヨタ勢は土曜日のアクシデント(クリス・ミークはSS7の転倒で大幅タイムロス、ヤリ-マティ・ラトバラはSS14でドライブシャフトを壊してデイリタイア)が響き、ミークが10位、ラトバラが11位に終わった。
ヌーヴィルがあわやの大クラッシュ
第4戦ツール・ド・コルス(フランス)、第5戦アルゼンチンを連勝し、ポイントリーダーに立っていたヒュンダイのティエリー・ヌーヴィルが土曜日、アクシデントに見舞われた。
オジエと僅差の2番手争いを繰り広げていたSS8、ステージ半ばの13.9km地点のクレスト(丘)を全開でクリアしたヌーヴィルはオーバースピードでアウト側の溝にタイヤを落としてクラッシュ、その衝撃でマシンは原型を留めないほどに損傷した。
コドライバーのニコラ・ジルソールはすぐに脱出したものの、ヌーヴィルはしばらくクルマから出られず心配されたが、幸いにして打撲程度の軽傷ですんだ。最新WRカーの安全性の高さがあらためて証明されることになった。ヘリコプターで運ばれた病院での検査を終えて松葉杖姿でサービスパークに戻ってきたヌーヴィルは「ペースノートが楽観的すぎた」と大クラッシュの原因を笑顔で語っている。
ヌーヴィルの脱落で2位争いはオジエとローブの争いになったが、オジエが渾身のアタックでしのいだ。オジエは最終パワーステージでも2位=4点を得て、タナックに10点差でポイントリーダーに浮上している。
なお、プライベーターカテゴリーのWRC2でトヨタの育成ドライバー、日本の勝田貴元(フォード・フィエスタR5)が、昨年のスウェーデン以来となる優勝を飾った。
次戦はヨーロッパに戻り、5月30日~6月2日の日程でラリー・ポルトガルが開催される。
WRC第6戦ラリー・チリ 結果
優勝 8 O.タナック (トヨタ ヤリス WRC) 3h15m53.8s
2位 1 S.オジエ(シトロエン C3 WRC) +23.1s
3位 19 S.ローブ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +30.2s
4位 33 E.エバンス(フォード フィエスタ WRC) +1m36.7s
5位 3 T.スニネンン (フォード フィエスタ WRC) +3m15.6s
6位 4 E.ラッピ (シトロエン C3 WRC) +3m45.4s
7位 89 A.ミケルセン(ヒュンダイ i20クーペ WRC) +4m39.0s
8位 22 K.ロバンペラ (シュコダ・ファビア R5) +7m52.5s
9位 23 M.オストベルグ(シトロエン C3 R5) +8m16.1s
10位 5 K.ミーク (トヨタ ヤリス WRC) +8m33.4s
※結果は暫定