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カーボンモノコック本体の重量はわずか180kg。エンジンなどを含めた総重量も1180kgしかない(ベース車)。写真は今回出品される“LM-Specification”(©2019 Courtesy of RM Sotheby's)。
今年もモントレー・カーウィークが始まる。毎年8月の中旬に、米カリフォルニア州のモントレー周辺で数多くの自動車関連イベントが開かれ、とくに世界中の超高級車・クラシックカーとクルマ好きのセレブが集まることで注目されている。
数あるイベントの中でハイライトと言っていいのが、RMサザビーズが開催するオークション。自動車黎明期のクラシックカーから激レアのスーパーカーなど、まさに垂涎のコレクションが次々にオークションにかけられる様は壮観だ。
さて、開幕まで4週間を切り、RMサザビーズ モントレーオークションの今年のラインアップが見えてきた。その中に超の付く珍しいクルマを発見した。それが「1994年型 マクラーレンF1 “LM-Specification”」だ。マクラーレン・カーズ(現マクラーレン・オートモーティブ)のファクトリーでLM仕様にチューンされた2台のうちの1台だ。
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ベース車両は1994年型の初期モデルだが、後年、LMを参考にエンジンを始め専用エアロキット等々、ファクトリーにて大幅なモディファイが加えられたのが“LM-Specification”(©2019 Courtesy of RM Sotheby's)。
ベースとなったマクラーレンF1は、エンジニアリングはF1マシンの設計で知られるゴードン・マーレー、デザインはピーター・スティーブンスが手掛けた。カーボン+アルミハニカムのモノコックボディはわずか180kg、エンジンなどを含めた総重量も1140kgしかない。しかも、シートレイアウトは特殊な並列3シーターで、中央に運転席を置き、やや後方左右に助手席を配置する。
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ユニークな並列3シーターはF1の特徴。元々は黒一色だったインテリアはキャメルカラーで再度コーディネートされている(©2019 Courtesy of RM Sotheby's)。
ミッドに縦置きマウントされるエンジンはBMW製の6.1リッターV12DOHC。その最高出力は627bhpで、当時世界でもっとも出力の高いクルマとしてギネスブックに載るなど話題となった。ちなみに、エンジンルーム内には遮熱のために金箔が張り巡らされ、インコネル製のエキマニやマフラー、チタン削り出しのショートパーツや車載工具など、採算を度外視したパーツがセレクトされている。その車両価格は当時およそ1億円と言われたが、ロードカーの生産は64台(1994年〜1997年)で終了したと言われている。
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エンジンはGTRやLMと同じ680bhp仕様に換装。冷却系やトランスミッションも強化されている(©2019 Courtesy of RM Sotheby's)。
マクラーレンF1のバリエーションといえば1994年〜1997年に28台が生産されたレース専用車の「GTR」、1995年にル・マン24時間総合優勝を記念してGTRをベースにプロトタイプ1台を含む6台が生産された「LM(LM for Le Mans)」、1997年にホモロゲーション取得用に3台が生産された「GT」が知られている。
ところが今回オークションに登場する「1994年型 マクラーレンF1 “LM-Specification”」に関しては、その存在はほとんど知られていなかった。なぜなら、この仕様はいったん販売された車両を再びマクラーレンのファクトリーに戻して仕立て直したものだからだ。1994年型F1をベースに、LM仕様を参考に数々の改造が施されている。
ブラックだったインテリアはキャメルカラーに一新され、ボディカラーもプラチナシルバーメタリックに塗り直された。フロントフェンダーベント付きのGTRノーズと巨大なリアウィングからなる空力効果のハイダウンフォースキット(HDK)も装備されている。
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スピードメーターは驚愕の400km/h仕様だが、実際に(瞬間だが)400km/h出たという非公式記録もある(©2019 Courtesy of RM Sotheby's)。
エンジンもLMと同じく、ノーマルの627bhpから680bhpにチューニングされたレーシングユニットが搭載されている。足回りもLM用に準じたレース仕様に、さらにホイールサイズはGTRと同じく18インチに変更されている。
同仕様のクルマは、実は2台存在するようだが、今回オークションに登場するのは紛れもなくそのうちの1台。定期的にマクラーレンでメインテナンスを受けてきた、まさに珠玉の一台だ。
果たして今回の落札価格は? ベース車両の当時新車価格が1億円、しかも超貴重なファクトリー・チューンともなれば10億円は軽く超えるかも知れない。