現行NSXは2370万円~とちょっとやそっとでは手が出ないが、過去には5000万円という飛びきりのプライスタグを下げた限定車が存在した。2005年に1台だけ市販されたNSX-R GTだ。(写真:伊藤嘉啓)

スーパーGT参戦のために計画されたお宝級NSX

2005年3月、当時参戦していたスーパーGT・GT500クラスのホモロゲーション取得のために、期間限定・台数わずか5台のみの限定特別仕様車として注文を受け付けたのがNSX-R GTだ。驚くのはその販売価格。ナント、5000万円…! 

驚愕スペックのエンジンを搭載しているとか、“スペシャル”なハードウエアを装備しているわけではない。基本的なメカニズムはNSX-Rと同じだ。ホイールベースやトレッドなどのディメンションやエンジンスペックにも変更はない。

では、どこが違うか。それはスーパーGTに参戦しているマシンとほぼ同じに仕立てられたそのスタイリングにつきるだろう。

画像: 全長4610×全幅1900×全高1335mm。ノーマル比で全長は+180mm、全幅は+90mm。エンジンを始めメカニズムはNSX-Rと同じだ。

全長4610×全幅1900×全高1335mm。ノーマル比で全長は+180mm、全幅は+90mm。エンジンを始めメカニズムはNSX-Rと同じだ。

ノーマルのNSX-Rと比べ、全長でプラス180mm、全幅も90mm拡大された前後のカーボン製バンパーを筆頭に、専用の外装パーツを多数装備。中でも特徴的なのが、リアガラスハッチ上に設置されたリアハッチガーニッシュ(純正オプションにも設定されていた)。リアミッドにマウントされたエンジンへ導風するエアロパーツだが、実際にガラスを貫通しているわけではなくダミーとなっている。しかし、このパーツが「GT」の全体的なイメージを決めているのは間違いない。

画像: GTマシンを彷彿とさせるリアディフューザーはカーボン製。空力特性の改善は著しく、超高速域ではノーマルとの差は歴然。紛れもなく本物だ。

GTマシンを彷彿とさせるリアディフューザーはカーボン製。空力特性の改善は著しく、超高速域ではノーマルとの差は歴然。紛れもなく本物だ。

サイドのエアインテークも横に張り出した専用形状に変更されており、前後バンパーと相まってこれまでのNSXとは異なる雄々しいエアロダイナミズムをアピールしている。これだけのパーツを装着しているだけに、当時ある関係者は「5000万円でもぎりぎりの価格設定」と語っていた。

画像: 大きく張り出したサイドエアインテークもGTの専用装備。GT500の車両規定に合わせて車幅を拡大するための方策だった。

大きく張り出したサイドエアインテークもGTの専用装備。GT500の車両規定に合わせて車幅を拡大するための方策だった。

さてこのNSX-R GT、現実離れした車両価格のため、実は市販されていないのではないか…とか、いろいろなウワサが立っている。その真相をはっきりさせておこう。今回紹介するNSX-R GTは市販された1台(取材は。それも5台中の1台ではなく、唯一市販された1台だ。

取材させていただいたのは、NSXを7台乗り継いできたスーパーカー好きなオーナーの個人車両。購入の経緯だが、ふだんから付き合いのあるディーラーからの連絡で発表前に「5台限定です」と言われ、コレクション的な価値を見込んで購入を決意。その後、「これ1台」しか販売されない、という連絡があり、日本で1台ということは世界でも1台…というワケで、いっそう嬉しさがこみ上げてきたとか。

画像: シリアルナンバーは「GT001」。紛うことなき本物であり世界に1台のクルマである。

シリアルナンバーは「GT001」。紛うことなき本物であり世界に1台のクルマである。

ともあれ、世界に1台だけの市販スポーツカー。ホンダファンはもちろん、スポーツカーファンであっても、見かける機会があればすごく幸運だ。

あの限定車は凄かったのバックナンバー

ホンダ NSX-R GT 主要諸元

●ボディサイズ:全長4610×全幅1900×全高1335mm
●車両重量:1270kg
●乗車定員:2名
●エンジン型式・形式:C32B・V6DOHC
●エンジン総排気量:3179cc 
●エンジン最高出力:280ps/7300rpm
●エンジン最大トルク:31.0kgm/5300rpm
●駆動方式:MR
●サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
●ブレーキ形式:前後Vディスク
●タイヤサイズ: 前215/40R17 後255/40R17

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