F1にタイヤを供給するピレリはグランプリの決勝直前に推奨タイヤ戦略を公開しているが、「ベルギーGPでは多くのドライバーが最適な戦術として予測したワンストップ(ソフト→ミディアムタイヤ)を選択し、そのうちの3名が表彰台を独占した」と発表。前日までとは異なる気象条件のもとで、摩耗と劣化の速度をどう予想するかがこの日のポイントになったと分析している。(タイトル写真は18番グリッドから5位に入賞したアレクサンダー・アルボン)

ルクレール優勝の一方で、ヴェッテルはなぜ4位に敗れたか

ベルギーGPが行われたスパ・フランコルシャンは高低差のある高速コースで、エンジンパフォーマンスが問われると言われている。しかしその一方で、すべての方向から強い力がかかるためタイヤに厳しく、タイヤ戦略、タイヤマネージメントがパフォーマンスに大きく影響した。

ベルギーGPが行われた9月1日、スパ・フランコルシャンの天候は雲が多いながらも晴れ。決勝前に雨が降り出して一時路面はウエットになったが、スタート時にはすっかりドライとなっていた。それもあって、気温は前日よりも10度以上も低く、路面温度も30度に達していなかった。また、レース中に雨が降る確率は60%という予報もあり、スパウェザーと言われるだけあって、予断を許さない状況だった。

決勝スタートのタイヤはQ3進出の10名は全員ソフト、そのほかのドライバーもほとんどがソフトタイヤを選択してグリッドに着いた(アレクサンダー・アルボン、ダニール・クビアト、ジョージ・ラッセル、ロバート・クビサ、アントニオ・ジョビナッツィの5名はミディアムタイヤを装着)。

画像: ベルギーGP決勝前にピレリタイヤが推奨したタイヤ戦略。

ベルギーGP決勝前にピレリタイヤが推奨したタイヤ戦略。

画像: ベルギーGPでの実際のタイヤ戦略。ソフトタイヤとミディアムをどう使うがポイントで、ハードタイヤが使われることはなかった。ダニエル・リカルドとキミ・ライコネンはレギュレーションによりソフトタイヤでスタート、1周目のセーフティカーのタイミングでミディアムに交換している。

ベルギーGPでの実際のタイヤ戦略。ソフトタイヤとミディアムをどう使うがポイントで、ハードタイヤが使われることはなかった。ダニエル・リカルドとキミ・ライコネンはレギュレーションによりソフトタイヤでスタート、1周目のセーフティカーのタイミングでミディアムに交換している。

レース前にピレリタイヤが推奨したタイヤ戦略は「ベストはソフトタイヤで18〜22周走行してミディアムに切り替えるワンストップ」となっていたが、表彰台に上がったドライバーはすべてその戦略をとった。

優勝したシャルル・ルクレール(フェラーリ)は21周目、2位のルイス・ハミルトンは22周目、3位のバルテリ・ボッタスは23周目に、いずれもソフトからミディアムに交換して、そのままワンストップでゴールしている。

そんな中、2番グリッドからスタートしたセバスチャン・ヴェッテルは一度ハミルトンに抜かれた後、ポジションを取り戻したもののタイヤの劣化に苦しみ、上位陣のなかでは一番早く15周目にミディアムタイヤに交換した。

そのためボッタスがピットに入った23周目にトップに浮上したが、周回を重ねるうちに次第にペースが落ち込み、チームの指示でルクレールにトップを譲った後、しばらくメルセデス勢を抑え込む役目にまわった。これが結果的に、ルクレールの優勝に貢献することになる。

ヴェッテルは可能な限りルクレールを援護。ハミルトン、ボッタスに抜かれて4番手に落ちた時点で再度ピットインして、ソフトタイヤに交換、この日のファステストラップを記録している。

15周目でのタイヤ交換は、メルセデスAMG勢のアンダーカットを警戒してのアクションとも考えられるが、ヴェッテルは想定よりも7周も早いタイミングでピットインしており、実際タイヤの劣化に苦しんでいたようだ。

レース終盤、ハミルトンが猛然とルクレールを追い上げたのも注目ポイント。ハミルトンとルクレールのタイヤ交換のタイミングは1周しか違っていないので、フェラーリはタイヤマネージメントで不利な状況があったのかもしれない。

一方、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)は新品のミディアムタイヤを装着してスタートし、無理をすることなく少しずつポジションを上げ、23周目に新品のソフトタイヤを装着。そこから一気にペースを上げて5位に入賞している。スタート時にミディアムタイヤを装着したドライバーは5名いたが、同様に早めにソフトにスイッチしたダニール・クビアトも7位に入っている。第2スティントで新品のソフトタイヤを使ったのがポイントだが、終盤タイヤマネージメントに苦しんだドライバーが多い中、この戦略は今後注目されるかもしれない。

ピレリタイヤでは、今回のベルギーGPを「ルクレールは理論的に最速のタイヤ戦略を完璧に実行し、ハミルトンから激しいプレッシャーを受けながら、摩耗と劣化の速度を予想しつつ、最後までミディアムタイヤをうまく管理しました。 今日のドライバーにとって大きな課題のひとつは、前日までとは異なる気象条件にどう対応するかでした」と分析する。前日よりもずっと涼しく、路面温度は30度以上になることはなかったが、それでもレース終盤に中団グループの順位は大きく変動している。

心配された降雨はなく、レース展開に影響を与えるタイミングでのセーフティカー導入もなかったので、レースとしては大きな波乱もなく進み、ミディアムタイヤで第1スティントを長くとる作戦は不発、次戦イタリアGPでもこのタイヤ戦略とタイヤマネージメントは大きなポイントとなりそうだ。

画像: フロントロウを独占したフェラーリだったが、タイヤ戦略が明暗を分ける形となった。

フロントロウを独占したフェラーリだったが、タイヤ戦略が明暗を分ける形となった。

画像: レース終盤になって、ルクレールを急追したハミルトン。もう1周あったら逆転もあったかもしれない。

レース終盤になって、ルクレールを急追したハミルトン。もう1周あったら逆転もあったかもしれない。

2019 F1第13戦ベルギーGP決勝 結果

優勝 16 C.ルクレール(フェラーリ)44周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+0.981s 
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+12.585s 
4位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+26.422s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+81.325s 
6位 11 S.ペレス(レーシングポイント)+84.448s 
7位 26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)+89.675s 
8位 27 N.ヒュルケンベルグ(ルノー)+106.639s 
9位 10 P.ガスリー (トロロッソ・ホンダ)+109.168s
10位 18 L.ストロール(レーシングポイント)+109.938s

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