3LのV6ターボで230psの大パワーを与えられた3代目Z
日産 フェアレディZ 300ZX:昭和58年(1983年)9月発売
日本を代表するスポーツカーとして、また世界で最も売れているスポーツカーとして、確固たる地位を築き上げたフェアレディZが2度目のフルモデルチェンジを受けたのは、昭和58年(1983年)9月のことだった。
Z31という型式を持つ3代目Zは、初代モデルからの流れを受け継いだロングノーズ+ファストバックスタイルの2シーターと2by2。とくにテールまわりの造形は、Zのアイデンティティを明確に表すデザインとなっていた。
このモデルの外観上の特徴として注目されたのは、Zとして初めてリトラクタブルヘッドランプを採用したことである。ただしこれも従来のイメージとあまりにかけ離れてしまうのを嫌い、通常でも半分ほどが露出した状態で、点灯時に垂直にライズアップする独特の機構を採用していた。
そして、初代のS30やS130と最も大きく異なっていたのは、エンジンが直6ではなくV型6気筒とされていたことだ。搭載されるのは3L+ターボのVG30ET型と2L+ターボのVG20ET型の2種類。これらはメカニズム的に見れば、一般的なSOHCヘッドを採用した何の変哲もないエンジンで、V6であることを除けばごくごく普通のパワーユニットだった。
しかしVG30ETは、そのパワースペックで人々を圧倒した。当時はまだグロス表示だったとはいえ、国産車としては前代未聞の最高出力230ps/5200rpmというハイパワーを発生したのだ。最大トルクも34.0kgm/3600rpmと、驚異的に図太かった。このころライバルとされていたセリカXXは、5M-Gに強化したとはいっても175ps。実に50ps以上のアドバンテージをZは確保したわけである。
実際に走らせてみても、Zの230psのパワーは鮮烈な印象を与えた。FJ20ETを搭載するスカイラインやシルビアのRSターボが、210km/h台の最高速度を出して速いと言われていた時期に、300ZXは234.91km/hを叩き出したのだ。また、0→400m加速にしても、一気に15秒を切る14.42秒をマーク。真のスポーツカーはここにあり、とでも言うような、強力な説得力を持つ動力性能を見せつけた。
前がストラット、後ろがセミトレーリングアームというサスペンションの基本形式は2代目のS130から引き継いだものだが、設計はもちろん全面的に見直されている。最初から大パワーによる超高速走行を前提としていたため、直進安定性などのレベルは当時の国産車としては抜群に高かった。また旋回性能にしても、直6より重量配分的に有利になったこともあって、弱アンダーステアの良好な特性を示した。
一方、2Lモデルは最高出力が170ps/6000rpm、最大トルクが22.0kgm/4000rpmで、スーパースポーツに進化した3Lに対し、スペシャリティ度を高めた比較的おとなしい設定とされていた。しかしそれが不評を買い、結局1985年10月には、V6専用モデルだったはずのZに、直6DOHC+セラミックターボのRB20DET搭載モデルを追加することになる。このあたりは商品企画面での失策かもしれない。
1986年10月には、Zはかなり大がかりなマイナーチェンジを受ける。まずスタイリングをリフレッシュするために、フロントマスクやリアエンドのデザインを、アメリカにあるデザインセンターNDIに任せて変更。力強さの中にも上品さを漂わせる、洗練された造形となった。
そしてこの時に追加されたのが、NA(自然吸気)の3L DOHCエンジンVG30DEを搭載した国内専用モデル300ZRである。300ZRはそれまでのGT志向のサスチューンを完璧な運動性能重視のセッティングに変更。NAエンジンならではのクイックレスポンスと相まって、最も走りを楽しめるZとして人気を集めた。対米モデルをもとにしたクルマ造りではなく、日本の要求を100%受け入れた純スポーツカーを目指したことによって生まれた、ベストモデルといえるだろう。
日産 フェアレディZ 300ZX 2シーター 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1725×1295mm
●ホイールベース:2320mm
●重量:1325kg
●エンジン型式・種類:VG30ET型・V6 SOHCターボ
●排気量:2960cc
●最高出力:230ps/5200rpm
●最大トルク:34.0kgm/3600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:215/60R15 90H
●価格:320万円