軽量コンパクトなボディとM3譲りの並外れたパフォーマンス
2002年にZ3の後継モデルとして市場に送り込まれたZ4ロードスターは、ちょっと古典的なロングノースが特徴の、クリス・バングルのデザインが好評で、2003年の生産台数(米国サウスカロライナ州スパータンバーク工場で組み立て)は、ライバルのポルシェボクスター。メルセデス・ベンツSLK、またマツダMX-5をも上回る人気となった。
しかし、登場以来人気を博したZ4ロードスターも次第に販売台数は落ち込み、2006年、そのテコ入れ策のひとつとして、Z4ロードスターのフェイスリフトとZ4クーぺの新規導入とともに登場したのが、Z4 Mロードスター/Z4 Mクーぺだった。
Z4ロードスターの開発はZ3とほぼ同時期から始まっており、BMWとしてはZ3の後継モデルではなく、Z3よりも上位に位置するモデルとして企画、Mモデルが単にMロードスター/Mクーぺと呼ばれたZ3の時代とは異なり、Z4の名がつけられたのも特徴だった。
エンジンは当時のM3から移植された3.2L直列6気筒で、その最高出力は343ps、最大トルクは365Nm。Mロードスターは0→100km/h加速5秒フラットをマーク、最高速度は250km/hに制限された。
またシャシの補強にも力が入れられており、ブレーキはM3 CSLと同じ大径のドリルドベンチレーテッドディスクを装備、タイヤはランフラットではなく18インチの前後異サイズが装着されていた。
ちなみに、Z4 Mロードスター/Z4 Mクーぺのトランスミッションは6速MTのみで、当時Mモデルで好んで使われていたSMGの設定はなかった。
軽量コンパクトなボディとM3譲りの並外れたパフォーマンスを誇る3.2L直列6気筒がもたらす走りは痛快そのもので、そのフットワークはZ4シリーズ以上に上質だった。こうして、MモデルはこのZ4 Mロードスター/Z4 Mクーぺでまた、ラインナップのポートフォリオを拡大することになった。
モータースポーツの分野では、Z4 MクーペをベースにしたワークスレーシングカーがBMW M社から登場した。これらには最高出力430psに達する直列6気筒エンジンが装備され、2009年から2010年にかけてニュルブルクリンクの耐久レース選手権の16レースのうち11レースで勝利をあげた。2010年にはカスタマーレーシングカーとして、4.4Lの8気筒エンジンを搭載したZ4 GT3も登場している。
BMW Z4 Mロードスター(2006年)
●全長:4120mm
●全幅:1780mm
●全高:1300mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1485kg
●エンジン:直列6気筒 DOHC
●排気量:3245cc
●最高出力:343ps/7900rpm
●最大トルク:365Nm/4900rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●サスペンション:ストラット/セントラルアーム
●0→100km/h加速:5.0秒