世話をしやすいから助手席に・・・という人は少なくないが
チャイルドシートは、ドライブ中の子どもの安全を守るもの。安全基準適合マークの付いたチャイルドシートを購入したら、クルマに取り付ける位置について考えてみましょう。4人乗りの軽自動車、5人乗りのセダンやステーションワゴン、7~8人乗りのミニバンなど、どこのシートにチャイルドシートを取り付けたらいいのか、迷いますよね。絶対にNGなこと、安心なシートの位置やそのメリットを知って、正しく取り付けましょう。
取り付け位置ですが、安全性を考えると基本的には後席に取り付けるのがベストだと言われています。「助手席はダメなの?」というと、法律的には違反とはなりませんが、助手席に取り付けるのは、もしもの時の危険が大きすぎます。取り付けミスなしで確実・簡単といわれるISO-FIXの取り付け金具も助手席にはありません。
とはいえ、ママと子どもの2人きりでクルマに乗る時、助手席に乗せていれば、顔が見えるので子どもが泣かない、泣いたりしてもすぐにあやせる、子どもの世話がしやすい、などといった理由で助手席に乗せている人も少なくありません。
助手席が危険だと言われる理由とは
それでは、チャイルドシートを助手席に取り付けた場合、どう危険なのか考えてみましょう。そもそも助手席のエアバッグは、正面衝突した場合に助手席の乗員を守るために装備されています。安全装備として、現在では助手席のエアバッグは当たり前になりましたが、かつて装備されていない頃には、助手席は、運転席に比べると、事故が起きた時に大けがを負ったり、死亡するといったケースがたくさんありました。
よく言われていたのは、正面衝突の危険にさらされると、運転者は思わずハンドルを切って、障害物とは反対の方向へ逃げようとするので、助手席側が障害物と衝突するというものでした。そんな助手席の危険性を考慮して、シートベルト着用の徹底と助手席のエアバッグの装備が推奨されました。
助手席での悲しい事故
人を守るための助手席のエアバッグですが、事故が起きた時、瞬間的にすごい勢いで膨らみます。勢いが強いので、顔に擦り傷ができたり、鼻血が出たという話を聞いたことがあります。もう30年以上も前のことですが、アメリカでエアバッグのある助手席にチャイルドシートを取り付けて子どもを乗せていた主婦が事故に遭い、エアバッグが膨らんだ勢いで子どもの首が切れて死亡したというショッキングなニュースが流れました。
数年前に、日本でも助手席にいた3歳児が衝突事故でエアバッグが膨らんだ際に強い衝撃を受けて死亡したという事故がありました。だからといって、エアバッグが悪いわけではありません。クルマのシートベルトをきちんとした大人の場合、シートベルトだけでは不十分な前方移動をエアバッグが抑えます。クルマのシートベルトとエアバッグの両方の機能によって安全が確保されているのです。
子どもの安全を第一に考えると助手席は危険
助手席にエアバッグがある場合、後ろ向き(乳児用)のチャイルドシートを取り付けるのはNGと、自動車メーカーもチャイルドシートメーカーも、注意を促しています。もしも時にエアバッグが展開したら、弾き飛ばされる危険があるからです。また、前向き(幼児用)のチャイルドシートであっても、固定しているシートベルトが緩んでいたら、衝突時にチャイルドシートが前方移動して、その時にエアバッグが展開すると、やはりシートが弾き飛ばされる危険があります。
子どもは、チャイルドシートに座ってベルトをしていても、手足をよく動かします。そんな子どもの手足に強い衝撃が加われば、骨折することも十分に考えられます。このようなリスクを考えると、いくら便利とはいってもチャイルドシートは後席に取り付けて正しく乗せるのがベストでしょう。海外では「10歳未満の子どもを前席に乗車させてはならない」と、法で規定している地域もあります。
それでも、家族構成によって、チャイルドシートが複数必要な場合は、どうしても助手席に取り付ける必要が出てきます。その場合ですが、助手席には前向き(幼児用)のチャイルドシートにします。そして、クルマのシートをできるだけ後ろへ下げて、エアバッグから遠くなるようにして、ぐらつきのないように取り付けましょう。助手席エアバッグの作動をキャンセルできるなら、キャンセルしておきます。(文:緒方昌子)