2019年9月29日、F1 第16戦 ロシアグランプリの決勝がソチ・オートドロームで開催され、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが4位、アレキサンダー・アルボンが5位に入賞した。次戦の日本グランプリ(鈴鹿サーキット)に向けてパワーユニットを交換したため、グリッド降格ペナルティを受けたものの手応えを感じさせる好走につながった。日本GPでフェラーリやメルセデスAMGを打ち破ることはできるのか、ロシアGPでの戦いを振り返ってみた。(タイトル写真は、4位入賞したレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン)
日本GPでフェラーリ、メルセデスAMGと戦う準備は整った
日本GPを前にグリッド降格ペナルティを受けてまでパワーユニットを交換したホンダ勢にとって、ロシアGPの結果は上出来と言えるものだった。レッドブル・ホンダとトロロッソ・ホンダの4台はいずれも予選結果より後方からの決勝スタートとなったが、レッドブルのふたりがポイントを獲得、トロロッソの2台もスタートグリッドよりも順位を上げてフィニッシュした。
決勝レースは1周目からセーフティカー導入となったが、4台とも混乱に巻き込まれずに好スタート。セーフティカー解除後に、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが8番手(9番スタート)、トロロッソのピエール・ガスリー12番手(16番スタート)とダニール・クビアトが13番手(19番スタート)とポジションを上げた。
その後もフェルスタッペンは好調なペースを見せ、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)、ランド・ノリス(マクラーレン)、カルロス・サインツ(マクラーレン)を次々とオーバーテイクして5番手に浮上。ピットレーンからミディアムタイヤでスタートしたアレクサンダー・アルボンも、トロロッソの2台の前まで順位を回復する。
レースが動いたのは26周目、ガスリーがピットアウトした直後のことだった。セバスチャン・ヴェッテル(フェラーリ)がトラブルによってストップし、バーチャルセーフティカーが導入されたのだ。タイミングの悪かったガスリーは、ここでポジションダウンすることになってしまう。
一方、ハードタイヤで19番手からスタートしたクビアトは、このバーチャルセーフティカーのタイミングでピットインしてソフトタイヤに交換。フェルスタッペンもミディアムタイヤに履き替える。アルボンはここではあえてステイアウトを選択して、さらにポジションを上げる作戦に出る。
すると、バーチャルセーフティカー解除直後の29周目に、今度はジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)がクラッシュしてすぐにセーフティカーが導入される。これを活かして、アルボンとクビアトが新品のソフトタイヤに交換したが、同じタイミングでピットインしたドライバーが多く、クビアトは戦略的なアドバンテージを得られずにトップ10圏外に落ちてしまう。
一方のアルボンはソフトタイヤに交換後、すばらしい走りでオーバーテイクを繰り返し、5位でフィニッシュ。フェルスタッペンもトップ3の直後で粘り強くレースを進め、少し離されたものの4位に入賞した。純粋な速さでフェラーリに敵わなかったという課題は残ったものの、新しいパワーユニットのデータを収集することができたのは大きい。
トロロッソのふたりは、クビアトは10位から2.5秒遅れての12位、ガスリーが14位で、惜しくもポイント獲得はならなかった。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、ロシアGPを振り返ってコメント。
「グリッドペナルティのため、9番グリッドからスタートしたレッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手が4位、予選のクラッシュの影響でピットレーンスタートのアルボン選手が5位でレースを終えました。2人とも多くのオーバーテイクをみせ、確実にポジションアップを果たしました。特にアルボン選手はフェルスタッペン選手に次ぐ順位でフィニッシュと、力強い走りを見せました。ただ、上位の2チームに追いつくにはパフォーマンスが足りていなかったと感じています。トロロッソ・ホンダの2台ついては、ガスリー選手はセーフティカーが入る直前のタイミングでピットインするという不運によりポジションを落とし、クビアト選手も最後尾スタートからいい走りをみせましたが、ポイント圏内には届きませんでした。ホンダとしては、パワーユニットに信頼性の問題が発生した週末でしたので、次戦の日本GPに向かう前に入念に原因の分析を行い、ホームレースに向けて万全なかたちで臨みたいと思います」
レースを終えた各ドライバーは次にように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「4位は今日のできるかぎりの結果だったと思いますし、ヴェッテルのリタイアというラッキーもありました。フェラーリとメルセデスAMGに速さがあり、かつペナルティによるグリッド降格からスタートしたことを考えると、満足すべき結果だったと思います。中団のトラフィックから抜け出したあとは、特に大きなことは起きませんでした。セーフティカーが出るまでは単独で走行する少し寂しいレース展開となりました。トップ3のマシンと比べると明らかに速さは足りていませんでしたが、レース終盤で周りがソフトタイヤを履いていた中、ミディアムタイヤで戦うのはさらに困難でした。最善を尽くした結果でしたが、もちろんもっと多くの表彰台や優勝を獲得したいので、周りの速さに負けないように改善するべきことはまだあると感じています。次戦の日本GPが行われる鈴鹿での一戦が今から楽しみです。ホンダのホームレースで日本のファンの皆さんの前でベストを尽くして戦いたいと思います」
アレクサンダー・アルボン
「今日の決勝はいい戦いができましたし、5位という結果は最善の結果であったと思います。予選でのクラッシュを挽回したかったので、セーフティカーのおかげも少しあったと思いますが、今日のレースの運びにとても満足しています。土曜は自分のモチベーションが上がらず、予選後の夜はチームが修復のため作業に時間を費やすこととなったため、今日の結果はそんなチームのためにあると思います。ポイント圏外からスタートしながら、他車とバトルできるポジションまで戻ってこられたことはよかったですが、毎回このようなレース展開にしたいとは思っていません。次戦の日本GPではクリーンでスムーズな展開の一戦になることを願っています。レースウイークでもっと早くスピードを上げ、リズムに乗れるよう努力しなくてはなりませんが、そのためにはもっと多くの周回を走り、マシンを走行する時間を増やす必要があります」
ピエール・ガスリー
「今日はチームにとって難しいレースになりました。ポイント獲得に至るほどのペースは、残念ながら今日はありませんでしたし、コクピットの中からできることはすべてやりましたが、さほど多くのことはできない状況でした。途中ダニール(クビアト選手)といいバトルができました。そのとき12番手争いをしていたのですが、12番手はなにかが前方で起これば、10番手までポジションアップが叶うかもしれないという重要な位置です。できる限りのことは試しましたが、速さ足りず、難しい一日でした。レースウイーク序盤で見せたパフォーマンスを今日は発揮できなかったので、次戦の鈴鹿ではいいレースができるよう原因を十分に解明し、準備したいと思います」
ダニール・クビアト
「今日は力強い戦いをみせることができた一戦となりました。グリッド後方からスタートし、ポイント圏内まであと一歩のポジションでレースを終えることができたのは、チームワークのおかげだったと思います。スタートもうまく決めることができ、見応えのあるバトルもすることができました。最後の最後までバトルをすることができたので、今日のレースにとても満足しています。ここ数日抱えていたトラブルを考えると、終わってみればとてもいい決勝日になったと思います。ポイント獲得でお返しができず、残念ではありますが、チームはとてもいい仕事をしてくれたので感謝しています」
全チームにタイヤを供給するピレリがロシアGP決勝を分析
「タイヤ戦略が重要なポイントになりました。トップ10台でメルセデスAMGのふたりだけがミディアムタイヤでスタート、ふたりはフェラーリよりも長い最初のスティントを走り、バーチャルセーフティカーの下で唯一のピットストップを行い、ソフトタイヤに切り替えました。ルクレールはこのピットストップでハミルトンの後ろになってしまったため、その2周後に、セーフティカーの下で2回目のストップを行い再びソフトタイヤに交換をする戦略に切り替えることになりました。ここが勝負の分かれ目となりました。メルセデスAMGが最初に選択したミディアムタイヤが柔軟性の点で有利でした。しかし、ソフトタイヤの寿命は長く、その後方ではさまざまな戦術が見られました。アルボンはピットレーンからスタートし、ミディアムからソフトに交換して5位に入賞。ハードタイヤでスタートしたのはクビアトだけでした。ワンストッパーが最速の戦略であると予測されていましたが、セーフティカーが導入されたこともあり、ツーストッパーも見られました」
さて次戦、F1 第17戦 日本グランプリは三重県の鈴鹿サーキットを舞台として2019年10月11日に開幕し、10月13日に決勝レースを迎える。
2019 F1第16戦ロシアGP決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)53周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+3.829s
3位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+5.212s
4位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+14.210s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+38.348s
6位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+45.989s
7位 11 S.ペレス(レーシングポイント・メルセデス)+48.728s
8位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+57.749s
9位 20 K. マグヌッセン(ハース・フェラーリ)+58.779s
10位 27 N.ヒュルケンベルグ(ルノー)+59.841s