1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は2001年の第35回モーターショーを振り返ってみたい。

「9.11」直後のショーは例年にない雰囲気での開催に

2000年に商用車ショーとなった第34回が開催され、2001年の第35回は乗用車・2輪車ショーとなる。直前に発生した米国同時多発テロでの犠牲者へ弔意を表すため開会式などの行事を取り止める一方、来場者の手荷物検査を含め警備の強化も図られるなど、例年にない雰囲気の中での開催となった。出品車は今回も環境対応が軸だが、低公害・超低燃費を目指すコンパクトカー、ITを活用した新提案車も多く展示されて注目された。また新たに、iモードを使った電子チケットシステムの導入や、公道での電気自動車の同乗試乗などが試みられている。

■トヨタ FXS(タイトル写真)

スポーツカーに対して、憧れや夢、希望を抱き続けるアダルトに向けた2シーター・ピュアオープンスポーツ。高い運動性能と限界域における高い安定性を両立させるため、50:50の前後重量バランスと小さなヨーモーメント、低い重心高を達成することにポイントを置き、エンジンをフロントミッドシップの低い位置に搭載。前後オーバーハングを極限まで切り詰めている。シンプル&セクシーをテーマにデザインされたボディは、全長4150×全幅1870×全高1110mm、ホイールベース2500mmとワイド&ローの極致で、空力向上のためボディ下面をフラットにする処理も行われた。

エンジンはセルシオ用をベースに最高許容回転数を8000rpmに設定した4292ccのV8 DOHC(パワースペックは未公表)。伝達系は新開発のシーケンシャル6速MTを介して後輪を駆動するFRとコンベンショナルな方式だが、シャープな操縦特性を得るため前後インホイール式ダブルウイッシュボーンサスペンションに前245/40R18、後285/35R18の異サイズタイヤが選択されている。ブレーキも対向4ピストンキャリパーを4輪に装着して、スポーツカーの走りをバックアップしている。

画像: トヨタ FXSはリアビューも独特。トヨタ5000GTになるのではと噂されたのだが・・・。

トヨタ FXSはリアビューも独特。トヨタ5000GTになるのではと噂されたのだが・・・。

■日産 ideo(イデオ)

「ネットビークルの理想形を追求し、インタラクティブなコミュニケーションの実現を提案するコンセプトカー」。これから加速度的に発達していく通信技術を、いかに運転する楽しさや便利さに結びつけるかを具体的な形で示した「ネットビークル」と言う位置づけだ。タイヤを四隅に配置し、安定感のあるフォルムのボディに、センターピラーをなくした特徴的な観音開きドアを組み合わせる。デザインテーマは“和風”で、アルミ格子を用いたルーフのグラストップ、行灯の灯りをイメージしたウエルカムランプ、格子が透けて見えるスケルトン構造のリアピラーなど、和風建築の要素を取り入れた先進的なエクステリアとなっている。

一方、インストルメントパネル全体がスクリーンとなって情報を映し出すスーパーサラウンドスクリーンには、6年後の2007年に実用化されるアラウンドビューモニターがすでに提案されていた。インターネットのネットサーフィンの感覚で街の情報をキャッチしながら走る「シティブラウジング」や、表現力豊かなカーナビゲーションを楽しめるなど、今までにない運転の楽しさ、便利さを提供する近未来車として注目された。

画像: モノフォルムのスタイルが独特の、日産 イデオ。

モノフォルムのスタイルが独特の、日産 イデオ。

■スズキ GSX-R/4

世界最速の量産オートバイ、GSX1300Rハヤブサの1.3L 直4DOHCをリアミッドに縦置き搭載した、超軽量ロードスターコンセプト。高剛性のアルミ製スペースフレームに、部位ごとに分割した脱着式樹脂(リサイクル材)パネルをボルト止めする手法は、6月にデビューしたばかりの“フォーミュラ・スズキ HAYABUSA”に近い発想だ。エンジンカバーやプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンサスペンションのコイル&ダンパーユニットがむき出しになっているのは、2輪技術との融合を強調するためで、小ぶりなウインドシールドもオートバイを連想させる。サイズは全長3550×全幅1730×全高1010mm、ホイールベース2450mmで、車重は645kgに仕上げられた。

レッドゾーンが11000rpmというエンジンは最高出力175ps/9800rpm、最大トルク14.1kgm/7000rpmを発生。6速シーケンシャルMTで1psあたりわずか3.69kg/ps(!)の荷重を制御するのだから、エキサイティングな走りは約束されている。インパネにセットされたアドバンスドナビシステムに、燃料噴射や点火時期を変えられる車両セッティングメニュー、マシンチェック画面が表示できるほか、モンスター田嶋監修のサーキット攻略ナビなど、心を躍らせるアイテムが満載されていた。なおGSX-R/4はゲーム「グランツーリスモ」シリーズのいくつかに収録されている。

画像: スズキらしいオートバイ感覚でデザインされた、GSX-R/4。

スズキらしいオートバイ感覚でデザインされた、GSX-R/4。

■日産 GT-Rコンセプト

まだR34型“スカイラインGT-R”が生産・販売されていた2001年。ショー会場に設置された日産ブースは、「サプライズで“次期GT-R”が発表されるらしい」と聞きつけたプレス関係者で埋め尽くされていた。噂では「次期GT-Rの開発打ち切り」と言われていただけに、次期型の開発が継続されていると言うだけでも期待はきわめて高かったのだ。登場したGT-Rコンセプトは、寸法・重量からエンジン・駆動方式まで詳細は一切明かされなかったが、プレゼンテーションを行ったカルロス・ゴーンCEO(当時)がGT-Rコンセプトを前に、GT-Rは日産が掲げる究極のドライビングプレジャーを具現化したモデルと説明した後、「必ずGT-Rは復活します」と宣言して大喝采を受けている。その後コンセプトだったGT-Rは2005年のショーでプロトタイプを展示。2007年10月発売予定であることが明かされていく。

画像: 詳細なスペックは公表されなかったが、市販が心待ちにされた日産 GT-Rコンセプト。

詳細なスペックは公表されなかったが、市販が心待ちにされた日産 GT-Rコンセプト。

懐かしの東京モーターショーバックナンバー

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