1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は2005年の第39回ショーを振り返ってみたい。

半世紀を迎えた東京モーターショーは、世界最先端の環境・安全技術が集結

2004年には商用車ショーの第38回ショーが開催され、2005年の第39回ショーは乗用車・2輪車ショーとなる。1954年の第1回全日本自動車ショウから50年という節目の年にあたることもあって、79台のワールドプレミアをはじめ世界最先端の環境・安全技術等が集結した。とくに1991年に始まったASV(Active Safety Vehicle:先進安全自動車)計画はフェーズ3に入って、車両単独での安全確保だけでなく、他の車両と連携することで安全性を高めるという視点で開発された最新技術が各社から展示され注目されている。また、イベントホールでは、カロッツェリアが製作した個性豊かなオリジナルカーを展示。前回のショーに続く2回目の開催で、今回は慶應義塾大学の8輪型電気自動車「Eliica(エリーカ)」や米国サリーン社の「S7 ツインターボ」など、7社・1大学が製作した15台が出展され、華やかさを競った。

■ダイハツ HVS(タイトル写真)

走行性能と環境性能を高次元で融合させたハイブリッド・オープンスポーツ・コンセプトがHVS(Hybrid Vehicle Sports:ハイブリッド ビークル スポーツ)だ。全長3715×全高1695×全幅1235mm、ホイールベースは2235mmのボディサイズは、NB型マツダロードスターとほぼ同じだが、FRでなくFFベースとしたところが、コペンでFFスポーツの性能を実証して自信を持ったダイハツらしい。ただ、エンジンに加えフロント2モーター/リア1モーターのハイブリッド4WD機構を新開発し、スポーティな走りと走行安定性を追求したところに、次世代スポーツカー開発への意気込みが伺える。

フロントに横置きされる1495ccの直4DOHCエンジンは105psを発生。モーターは前が36kW×2基、後は20kW×1基で、リアモーターは左右駆動力制御機構を備え、高い旋回性能を実現した。車重などの詳細は未公表だが、CVTとの組み合わせでSS400mを17秒で走りきると公称した。低重心のスピンドルシェイプを基調にしたスタイリングの完成度は高く、居住性や耐候性に配慮して電動ハードトップも備える。コクピットはスポーツシート&ロールバーに加え、メーターバイザーやセンターコンソールにメタル加飾を採用して先進感とスポーティ感を演出していた。

画像: 出展時には往年の名車「ダイハツ・コンパーノの再来か?」と言われたダイハツ HVS。

出展時には往年の名車「ダイハツ・コンパーノの再来か?」と言われたダイハツ HVS。

■トヨタ Fine-X

燃料電池ハイブリッドシステムの環境性能と、4輪独立の駆動力制御、大舵角機構による自在な動きが革新的な、クルマ進化のビジョンを示す新コンセプトカー。VIBRANT CLARITYのデザインフィロソフィの下、明快に造形された全長3860×全高1750×全幅1550mm、ホイールベースは2850mmというボディの中に、革新的パッケージでカムリクラスの室内空間を実現した。トヨタらしい「おもてなし」は、乗降時にガルウイングドアが大きく開き、シートが車外にせり出す「電動お迎えシート」や「ゆらぎ照明」などにより演出される。

一番のポイントは、4輪各々に電気モーターを内蔵するインホイールモーターで4輪を独立駆動し、4輪独立操舵、77度まで切れる大舵角ステアリング機構と組み合わせることで、その場での転回や駐車、Uターンが自在にできる、全く新しい運動性能を付与したことだ。最新のIT・ITS技術で車両全周を監視する運転を支援する、現在のパノラミックビューモニターに通じる技術も提案されている。環境性能では、燃料電池ハイブリッドシステムの採用はもとより、自然界のCO2を吸収して育った植物を原料とした素材を内装に使うことで、廃棄時に燃焼させても、自然界のCO2を増加させないカーボンニュートラルを追求した。

画像: 大きなガルウイングドアを採用したトヨタ Fine-X。

大きなガルウイングドアを採用したトヨタ Fine-X。

■日産 ピボ

都市部での使い勝手を高めるため、日産の最先端技術を投入して開発された電動フレンドリーコンパクト。遊園地の遊具のようなキャビンの中央前方に運転席、その両脇後方に2名分のシートを配した3人乗りとしている。一番の特徴はキャビン部を180度回転させられることで、たとえば狭い場所での駐車時に前向き駐車しても、出るときにキャビンを回転させれば前方発進できるためバックが不要になり、安全運転に繋がるという趣向だ。土台(シャシ)部が前後対称なのはキャビンを回転させても車両感覚が変わらないようにデザインしたものという。キャビンの回転を実現させるために投入されたのが「X by Wire」と呼ぶ新技術。ステアリング/アクセル&ブレーキペダルの3つから配管やシャフトなど機械的な連結機構を廃し、ドライバーの操作を電気信号に置き換えたことで、キャビンとプラットフォームを切り離すことを可能にした。

動力にはコンパクトなリチウムイオンバッテリーを電源とするスーパーモーターを前後に2基搭載。1基のモーターから2軸の動力が取り出せるスーパーモーターにより、1基の出力軸が1輪を担当する4輪駆動力独立制御を成立させている。運転支援では、クルマの周囲360度の俯瞰画像を映し出すアラウンドビューモニターを搭載。さらにピラー外側に内蔵したカメラで撮影した車外の風景をピラーの内側に映し、あたかもピラーがないように見えるという「シースルーピラー」も装備される。新しいインターフェースとして、赤外線カメラで指の動きを認識し、指を動かすだけでオーディオのコントロールを可能にした「IRコマンダー」も取り入れられた。

画像: 日産 ピボは前後対称のユニークなデザインだった。

日産 ピボは前後対称のユニークなデザインだった。

■三菱 コンセプトD:5

このショーでワールドプレミアした、次期デリカのコンセプトモデル。開発の狙いは「いつでも、どこへも行ける高機動性・高機能性を目指す“新4WDモノボックス”」で、上質な居住空間や機能性とデリカ伝統の4WDシステムがもたらす走破性能を目指している。エクステリアデザインのキーワードは「超高機動」で、ノーズの張り出しを感じさせないワンボックスにこだわり、デザイン要素を最小限に抑えたシンプルでソリッドな面構成でまとめた。インテリアは、開放感を演出するワイドクリスタルライトルーフや、金属+自然素材など相反する要素を組み合わせる"剛"と"柔"のコントラストによって、安心感と快適性の融合を表現している。

駆動はAWC(All Wheel Control:オールホイールコントロール)思想のもと、アウトランダーと同様の先進の電子制御4WDを搭載。新型2.4L MIVECエンジン+スポーツモード6速CVTのパワートレーンとともに、あらゆる路面において力強い走りを約束するのは、4WDの第一人者・三菱の大きなアドバンテージでもある。サスペンションはリアにマルチリンクを採用。ストロークを大きく取ってオフロードの走破性を確保する一方、20×8Jホイールと255/55R20タイヤの組み合わせでオンロードでの高いロードホールディング性能も実現した。さらに、車両周辺監視システム/レーンキープアシスト/アダプティブ・クルーズコントロールなど、安全運転をサポートする各種ASV技術を導入。予防安全・衝突安全に新たな提案を行なっている。

画像: 三菱 コンセプトD:5は、2007年にデリカD:5として発表される。

三菱 コンセプトD:5は、2007年にデリカD:5として発表される。

懐かしの東京モーターショーバックナンバー

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