2013年12月に発表されたBMW M3セダン(F80)/M4クーペ(F82)で、「M3」は再びストレート6に回帰、そのダウンサイジングターボは新しい時代への突入を示していた。また、2ドアモデルのクーペ、カブリオレは4シリーズと名称を変えていたため、原点となった、いわゆる「M3」は「M4クーペ」と名乗るようになっていた。「M3」は新型ではセダンボディとなるわけだ。

第5世代からM4とM3の2本立てに

1985年に登場した初代M3は、グループAホモロゲーション取得用マシンとして開発された「戦闘機」のようなモデルだったが、モータースポーツシーンだけでなく、市販モデルの販売でも大成功を収め、次の世代以降、M3はビジネスとしても重要な車種となり、量産化が進められていくことになる。

また、第2世代以降、レースレギュレーションの変更により4気筒エンジンでなければならない理由がなくなり、第2世代と第3世代では高性能なストレート6に変更、これがマニアの心をくすぐった。絶品のストレート6がM3のスポーツモデルとしての資質、価値を一気に高めたのだった。

そして、第4世代ではついにV8エンジンを搭載する。「M3にV8エンジンは似合わない」という声も聞かれたが、そのパフォーマンスは圧倒的で、激化するパワー競争の中にあって、ライバルのアウディRS4がV8エンジンを搭載し、同世代のM5がF1をイメージするV10エンジンを搭載するのに対し、M3がDTMと同じV8エンジンを選択したのは、その当時の時代の流れだった。

画像: 「サーキット性能の大幅な向上」をテーマに開発されたF82型M4クーペ。量産車をベースとして専用開発の高出力エンジンや足まわりが与えられたハイパフォーマンスモデルは数多く存在するが、M3/M4はレースを出自とするこだわりを持っていた。

「サーキット性能の大幅な向上」をテーマに開発されたF82型M4クーペ。量産車をベースとして専用開発の高出力エンジンや足まわりが与えられたハイパフォーマンスモデルは数多く存在するが、M3/M4はレースを出自とするこだわりを持っていた。

こうした流れを受けて、5代目M3(と初代となるM4)は、はV8自然吸気から直6ツインターボに変更するが、それは高性能化と高効率化を求めた結果であり、4Lから3Lへ排気量が縮小されたにもかかわらず、先代V8を11ps上回る431psのピークパワーと先代比約4割アップの550Nmというビッグトルクを得ることになった。またそれでいて、CO2排出量は先代V8の4分の3以下という数値だった。

当時はまだターボに懐疑的な目を向けるファンもいたが、BMWはF1にターボを持ち込んで成功を収めたパイオニアであり、2002時代から量産車に本格的にターボを採用するなど、もともとBMWはターボに積極的なメーカーであり、ターボに造詣の深いメーカーだった。そもそも航空機エンジンを手がけていたBMWであるから、ターボへの理解が深かったのも当然だ。

画像: 先代(E90/E92)のV8DOHCエンジンに代わり搭載されたS55B30A型3L直6DOHCツインターボ。高精度直噴システム、ダブルVANOS、バルブトロニックを組み合わせた新開発のエンジンで、先代モデルを約40%上回る550Nmの最大トルクを発生。M4クーペ/M3セダンともに0→100km/h加速は4.1秒。

先代(E90/E92)のV8DOHCエンジンに代わり搭載されたS55B30A型3L直6DOHCツインターボ。高精度直噴システム、ダブルVANOS、バルブトロニックを組み合わせた新開発のエンジンで、先代モデルを約40%上回る550Nmの最大トルクを発生。M4クーペ/M3セダンともに0→100km/h加速は4.1秒。

第5世代M3セダン(F80)/M4クーペ(F82)に搭載されたストレート6は、ターボ付きでありながら、最高回転数7600rpmという高回転型であったのは、いかにもBMWらしいところだ。

M3セダン(F80)/M4クーペ(F82)の開発にあたって、もっとも力を入れたのは「サーキット性能の大幅な向上」だった。そのため、軽量化とサスペンションの高剛性化に徹底的にこだわり、そうすることで快適性を手に入れていた。当時の試乗記を振り返ると、「ヒリヒリするほどの刺激を、それを失わない絶妙な快適性で包み込んでいる」と伝えている。

また、この世代では、さらに高性能高出力バージョンのコンペティションやGTSが投入されたほか、DTMチャンピオン エディションやMパフォーマンス エディション、インディビデュアルエディション、コンペティション Mヒートエディション、30ヤーレ(30周年記念モデル)など魅力的な限定車が設定され、いずれも好評だった。また、M4クーペ、M3セダンだけでなく、コンペティション/DCT/右ハンドル仕様と限定的ではあったが、M4カブリオレも日本に導入されている。

画像: 日常の快適性も兼ね備えたインテリア(写真はM4クーペ)。ドライバーに必要な情報をフロントウインドウスクリーンに示す「BMWヘッドアップディスプレイ」を装備。前車接近警告機能、衝突回避・軽減ブレーキ、レーンディパーチャーウオーニングなどの機能を持つ「ドライブアシスト」も備える。

日常の快適性も兼ね備えたインテリア(写真はM4クーペ)。ドライバーに必要な情報をフロントウインドウスクリーンに示す「BMWヘッドアップディスプレイ」を装備。前車接近警告機能、衝突回避・軽減ブレーキ、レーンディパーチャーウオーニングなどの機能を持つ「ドライブアシスト」も備える。

BMW Mの系譜のバックナンバー

BMW M4クーペ 7速DCT(2014年)主要諸元

●全長:4671m
●全幅:1870mm
●全高:1383mm
●ホイールベース:2812mm
●車両重量:1612kg
●エンジン:直列6気筒 DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:431ps/5500-7300rpm
●最大トルク:550Nm/1850-5500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速DCT
●サスペンション:前ストラット後5リンク
●0→100km/h加速:4.1秒
※欧州仕様

BMW M3セダン 7速DCT(2014年)主要諸元

●全長:4671m
●全幅:1877mm
●全高:1424m
●ホイールベース:2812mm
●車両重量:1635kg
●エンジン:直列6気筒 DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:431ps/5500-7300rpm
●最大トルク:550Nm/1850-5500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速DCT
●サスペンション:前ストラット後5リンク
●0→100km/h加速:4.1秒
※欧州仕様

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