2005年8月、ついに導入が遅れていたBMW325iが日本に上陸した。3シリーズの中核で、主力となるモデルはどんな走り味を持っていたのか。320i、330iとはどう違っていたのか。上陸なったばかりに行われたテストドライブの模様を振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年10月号より)

パワー&トルクのバランスがよく、滑らかに、しなやかに反応

いったいどこまでこの勢いは続くのだろうか。BMWは全世界で快進撃が止まらない。2005年1~7月の世界累計販売台数は対前年比10%アップだ。

その第一の要因は新型3シリーズが絶好調であることだ。市場導入から5カ月も経過していないのに、累計販売は10万台に達しようとしている。いわゆる「ニューモデル効果」というものがあるのは事実だが、先代モデルのE46型がデビューしたときと比べて、その効果がもの凄いのだという。発売開始から同期間で見ると、新型は1.85倍売れているのだそうだ。もちろん、日本でも販売は好調だ。

こうなってみると「全幅が1815mmもあるから日本では思うように販売は伸びないのではないか」などというマスコミの論調があったこと自体、その片隅にいる人間としてちょっと恥ずかしくもある。

新3シリーズが市場で歓迎されていることは100%証明された。でも実は気になることがひとつだけあった。330iと320iには試乗することができたが、325iだけはその機会に恵まれていなかったということだ。果たして、このラインナップの中心にあるモデルの出来はどうなのだろうかと、ずっと気になっていた。それに今回、試乗することができた。

欧州車の魅力のひとつに「どんなエンジンを積んでいてもそれなりによい」ということがある。考え方としてボディが主で、エンジンは従なのだ。どんなエンジンを積んでもボディはそれに応じた力を発揮してくれる。そして、搭載するエンジンは実際に幅広い。たとえば3シリーズと同クラスで、すでにラインナップが出揃っているメルセデスCクラスで見ると、1.8Lの直4から、5.5LのV8まで搭載する。そして、それぞれが独自の魅力をもっている。

この辺りの考え方は日本車とまったく違う。日本の同クラス車の場合、2~3Lとか、2.5~.3.5Lとか、いいところ排気量の幅は1Lだ。ボディもそういう前提で作っているのだろう。欧州車は幅広いエンジン搭載を前提にボディ設計をしている。日欧のクルマの持ち味が違うのは、このあたりから来ている部分も大きいのではないかと思う。蛇足になるが、必然的にクルマのクラスを考えるとき、欧州はボディサイズだが、日本はエンジン排気量となる。

さて、新型3シリーズについてもそんな欧州車の典型で、どんなエンジンを積んでいても、それぞれよいという印象を持っていた。パワフルな330iもいいし、軽快感がある320iもいいという感じだ。片や258psエンジン、片や150psエンジンであるにもかかわらず、それぞれがいいのだ。前後の重量バランスなど共通の良さに、それぞれの魅力が加わり、2モデルの個性が形成されているわけだ。

ところが325iに乗って「これはちょっと違うぞ」という印象を受けた。「これがベストバランス」だと感じた。そして、走れば走るほど、その確信を深めた。215ps/250Nmというパワー&トルクが、1510kgのボディにはちょうどいいのだろうか。確かにそれもよいのだが、ポイントはアクセルペダルを踏み込んだときの力の出方なのだと思う。まるでモーターのように、このエンジンは滑らかに、しなやかに、さらに微妙な踏み込みの変化に対応して回ってくれる。そのフィーリングと絶対的なパワー&トルクのバランスがよいのだ。実は525iに別の機会に乗ったが、これもエンジンのフィーリングは実によかった。

試乗車で気になるところもあった。ダイナミックパッケージ(26万2000円)が装着されていたが、このスポーツサスはちょっとコツコツと硬すぎる感じがした。許容範囲ではあるが、ノーマルサスを試したかった。それにダイナミックパッケージを付けるなら、さらにアクティブステアリングもプラスされるアクティブダイナミックパッケージ(39万8500円)にした方が、スポーティな走行が楽しめる。試乗車の仕様、ダイミックパッケージだけというのはもったいないと思う。また、iDrive(28万9000円)がないインパネまわりはデザイン的にはよい。でもやはりこれは欲しい装備だ。というところで私の3シリーズ、ベストチョイスは325iのノーマルサス、iDrive付ということになる。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2005年10月号より)

画像: 発表はされていたものの、日本導入がやや遅れていたBMW325i。ダイナミックパッケージ装着車は車高が15mm低くなる。

発表はされていたものの、日本導入がやや遅れていたBMW325i。ダイナミックパッケージ装着車は車高が15mm低くなる。

ヒットの法則

BMW 325i(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1410mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:525万円(2005年当時)

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