フットワークのよさにさらに磨きがかかった
日本ほどではないにしても、欧州でも居住/積載空間が自由に割り振れるモノスペースカーが勢力を拡大しつつある。過去5年間の欧州におけるコンパクトバンのシェアは2.4%から7%へと増加、さらに今後5年間で10%を超えると予想されている。
オペルが1999年に発表した初代ザフィーラは、そうした市場動向の牽引役となったモデルである。日本にも導入され、国産勢と同様の巧みな折りたたみ機構を備えた「フレックス7」と呼ばれるシートシステムや、欧州車らしい堅実なフットワークで支持を集めたが、その後、同じGMアライアンスの一員であるスバルからOEMモデルのトラヴィックが導入されたことで状況が変わってしまった。
スバル トラヴィックはタイで生産されたザフィーラの同型車だった。しかもエンジンが強化された上に価格設定を国産車の水準に合わせていたため、本家のザフィーラは結果的に日本市場撤退を余儀なくされたのである。
しかしそれは日本の特殊な事情であって、欧州におけるザフィーラの人気は変わらず堅調に推移し、今年2005年春のジュネーブオートサロンで2世代目の新型を発表。このニューモデルを2005年秋に日本でも発表することが決定している。
そのザフィーラにスウェーデンで試乗するチャンスを得た。2代目となった新型は全長+150mm、全幅+59mmとボディを大幅に拡大。4467mm×1801mm×1635mmのスリーサイズを得て、日本でいうLクラスミニバンと同等のサイズ感を得た。これに伴って室内空間も広がり、とくに頭上や肩まわりの余裕が増して居住性は確実に向上した。
シートシステムは好評のフレックス7を継続採用。これは、左右2分割の3列目シートが床下にフラットに収納され、その上をセカンドシートがスライドしてスペースを柔軟に割り振れるという機構だ。新型は2列目のスライド機構などの操作性がさらに向上するなど相応の進化も遂げている。
ただし、3列目席は多少広くなってはいるものの、足下空間は余裕タップリというレベルではないし、着座位置も低めで閉塞感が強い。つまり基本的には「普段4~5人、時々7人」として使うクルマだ。
欧州のコンパクトバンはこうした考え方が一般的で、3列目をオプションの取り外し式とすることが多い。ただしこの場合、外したシートの置き場所問題が発生する。フレックス7はそれを解決する妙案であり、3列目を畳むだけで絶大な荷物収納能力が得られる。
また2列目のチップアップ、1列目助手席の前倒し(オプションのため日本導入は未定)なども併せて活用すれば、ユーティリティはかなり高く、こうしたアイディアが出尽くしている国産勢と較べても使い勝手に遜色はない。
日本仕様は150psの2.2L ガソリン直噴4気筒に4速ATの組み合わせとなる。スペック的には控えめなものの、このエンジンは実用域のトルクがなかなかに強力だ。高速走行が主体の今回の欧州試乗でも、十分な巡航能力が確認できたし、スタートのダッシュも軽快なので日本の道路事情で使っても不足はないはずだ。
しかも、先代でも感心させられた堅実なフットワークにはさらに磨きがかかっている。ドイツの高速環境で鍛えられた高いスタビリティはそのままに、乗り心地/ロードノイズといった快適性も向上しているのだ。また、ベクトラなどで定評のあるIDSプラス(可変減衰力サスを中心としたオペル独自のシャシ制御技術)も組み合わされており、コーナリングではロールが少ないフラットな姿勢と高い接地性を味わえた。
この新型ザフィーラ、日本での発表は2005年10月中旬で、来年2006年からの発売予定という。今回は200万円台中盤からと価格面のバリューも高めているし、天井に4枚のガラスをはめ込んだパノラマルーフ(電動シェード付き)といった快適装備もあるので、国産ミニバン勢と伍して戦う実力は十分にあるはずだ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2005年11月号より)
オペル ザフィーラ2.2CD(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4467×1801×1635mm
●ホイールベース:2703mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2198cc
●最高出力:150ps/5600rpm
●最大トルク:215Nm/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
※欧州仕様