1980年-90年代、超ド級のレーシングカーが壮絶なバトルを繰り広げていた。最高出力1000ps、最高速400km/h、決められた燃料使用量でレースをいかに速く走り切るか、メーカーが知恵を絞ったことで様々なマシンが誕生したこともレースを面白くした。この短期集中連載では、そんなグループCカー時代を振り返ってみよう。第5回は「ザウバーC9/メルセデス」だ。

1989年ル・マンとWSPCシリーズを制覇、メルセデス黄金時代の礎を築く

1955年ル・マンでの観客83名が死亡する大惨事の影響で、長らくサーキットでのレース活動を停止していたメルセデスが、スイスのプライベートチーム、ザウバーにエンジン供給という形で耐久レースの場に戻ってきたのは1985年。「ザウバーC8・メルセデス」は1986年にはWSPCで1勝を挙げ、1987年にマシンをC9へとアップグレード、TWRジャガーと並ぶ打倒ポルシェの急先鋒となっていく。

C9の搭載エンジンはC8と同様に5L V型8気筒+ツインターボ。シャシはアルミモノコック+カーボンコンポジット補強で、空力はC8に比べてアンダーボディでのグラウンドエフェクト獲得に進化があった。

1988年にザウバーはメルセデスの正式なワークスチームとなり、この年のWSPCでは11戦中5戦で優勝。最終戦までエースのジャン-ルイ・シュレッサーがジャガーのマーティン・ブランドルとドライバーズタイトルを争った。

翌1989年のC9はエンジンを4バルブ化するとともにボッシュの燃料制御システムを最新仕様にアップグレード。カラーリングもジャーマン・シルバー一色のワークス・カラーに一新された。

迎えたル・マンは前年にタイヤトラブルで決勝レース出場を見合わせたというC9にとって因縁の一戦だったが、見事メルセデスにとって1952年以来となる優勝を1-2フィニッシュで達成。WSPCでもメイクス/ドライバーズ選手権を制覇するという圧倒的な強さを見せつける。

1990年はフルカーボンモノコックの新型マシンをC11を導入。マシン名はザウバーではなく正式に「メルセデス」となった。C11はWSPCから外れたル・マンには参加しなかったが、難なくシリーズ連覇を達成。加えてこの年から、将来のF1進出を見据えて若きミハエル・シューマッハらを擁したジュニア・チームプログラムをスタートさせ、これが紆余曲折を経て現在最強のF1チーム、メルセデスAMGの活動につながっている。

画像: エンジンはC8と同様、5L V8ツインターボを搭載。

エンジンはC8と同様、5L V8ツインターボを搭載。

ザウバーC9/メルセデス(1989年)主要諸元

●全長:4800mm
●全幅:1980mm
●全高:1069mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:905kg
●エンジン型式:M119HL
●エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
●排気量:4973cc
●最高出力:700ps/7000rpm
●駆動方式:MR

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