Z4ロードスター誕生から3年、2006年、ハイパフォーマンスモデル「Z4 Mロードスター」が登場している。また同時に、Z4ロードスターのフェイスリフトと新エンジン投入も行われているが、なぜ当時このような大幅な変更が行われたのか。Motor Magazine誌でその内容を振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2006年1月号より)

ユニークなデザインだけに販売の浮沈が激しいZ4

ドイツでの気温はこの季節、日中の家の南側でもわずか4度。日照時間も短く午後3時にはもう薄暗くなってしまう、すでに冬の真っ盛りである。

けれども職場の話題は「暖かくなったら、どこへ行こうか?ナニに乗ってゆこうか?」

と、すでに来春に飛んでいる!そんな彼らにBMWからニュースが届た。今からちょうど3年前、2002年の秋に登場した2シーターロードスターであるZ4の、フェイスリフトおよび新エンジン追加、そしてハイパフォーマンスモデルのMバージョン追加が発表されたのである。

BMW Z3の後継モデルとして市場に送り込まれたZ4は、「誰からも好かれる必要はない!」と思い切ったユニークなバングル・ラインで、最初は例によってデザイン論争が起こったが、フタを開けてみれば2003年のアメリカ、サウスカロライナ州スパータンバークでの生産台数は5万6589台と、ライバルのポルシェボクスター(1万5404台)およびメルセデス・ベンツSLK(2万1662台)、またロードスターの量販モデル、マツダMX-5(3万0106台)まで追い抜く勢いであった。

しかし、ユニークなデザインだけに落ち込みも早く、翌2004年には3万5136台と、前年比で65パーセント近くにまで激減してしまった。

もちろんBMWにとってはこうした事態はプログラム済み。そのテコ入れもあり、かねてから噂のあった新エンジンの搭載とハイパフォーマンスMバージョンの追加、そしてフェイスリフトを発表した、という経緯になっている。

まずはスタンダードモデルから観察すると、フロント部分ではバンパー下のインテークが「困ったような口元」からワイドで鋭角的になり、同時にホクロのようだったフォグランプが横長になって、ここに収まった。またよく目を凝らさないとわかりづらいが、ヘッドライトとキドニーグリルがわずかに大きくなり、ヘッドライト脇のフェンダーにリフレクターが追加されている。

そしてこの長いボンネットの下にあるエンジンのラインナップも、エントリーモデルに2Lバージョン、Z4 2.0(150ps)が設定されるなど一新された。

177psと218psの2種類の2.5L直列6気筒エンジンが追加されたこともニュースだ。この新エンジンはすでに3シリーズ(E90)に搭載されているバルブトロニックとダブルVANOSを装備した軽量コンセプトによるマグネシウム/アルミ合金のシリンダーブロックを持つ新世代パワープラントで、前者はZ4 2.5i、そして後者はZ4 2.5siと名付けられ、それぞれ0→100km/hが7.1秒と6.5秒、最高速度は229km/hと240km/hに達する。

さらにZ4 3.0iにも新エンジンが採用されてZ4 3.0siとなり、最高出力は231psから265psへとパワーアップ、0→100km/hが5.7秒、最高速度は250km/hのリミットに達する。

そして、これらZ4シリーズのトップに登場したのがMバージョン、「Z4 Mロードスター」である。まず、搭載されるエンジンから話を進めると、一部で予想された次期M3用と同じ4L V8ではなく、現行型M3から移植された3.2L直列6気筒であった。パワーアウトプットも現状維持で最高出力343ps/7900rpm、最大トルク365Nm/4900rpmとなる。この結果、標準の6速マニュアル仕様Mロードスターのスタートから100km/hまでの加速所要時間は5秒フラット、最高速度は250km/hに制限される。

ところでエクステリアの変化だが、少なくとも写真で見る限りではベーシックモデルとの差はそう大きくはなさそうである。

まず、フロントバンパー下のエアインテーク両脇にブレーキ冷却口と思しきインテークが追加され、同時にワイドタイヤに当たる空気の流れを整えるためにスポイラー両端が下方に延びている。またリアエンドにはディフューザーのようなアウトレット左右に2本のマフラーが延びている。

インテリアにはM社のロゴ入りのスポーツステアリングホイール、カーボンとナッパレザーによるアプリケーションが採用される。

一見すると変化に乏しい印象のMロードスターだが、M社で開発を担当するゲルハルト・リヒターによれば「シャシには相当の力」が入っており、タイヤサイズはフロントが225/55ZR18、リアには255/40ZR18が採用されている。またブレーキにはM3 CSL移植された大径のドリルドベンチレーテッドディスクが用意される。

画像: Z4 Mロードスターに搭載されるエンジンは3代目M3(E46)と同じ3.2L直6DOHCで、最高出力は343ps/7900rpm、最大トルクは365Nm37.2kgm/4900rpmとなる。これにより0→100km/h加速は5.0秒、最高速度は250km/h(リミッター)の性能を誇った。

Z4 Mロードスターに搭載されるエンジンは3代目M3(E46)と同じ3.2L直6DOHCで、最高出力は343ps/7900rpm、最大トルクは365Nm37.2kgm/4900rpmとなる。これにより0→100km/h加速は5.0秒、最高速度は250km/h(リミッター)の性能を誇った。

画像: 4本出しのテールパイプがZ4 Mロードスターの特徴。Mバッジ以外では、ハイマウントストップランプがクリアとなる。

4本出しのテールパイプがZ4 Mロードスターの特徴。Mバッジ以外では、ハイマウントストップランプがクリアとなる。

MロードスターにSMGの採用が見送られた

ところでこのMロードスターには、BMWがM3やM5に採用し、声高にスポーツ性を喧伝していたシーケンシャル式トランスミッション、SMGの採用は見送られている。

これは同システムの操作性が好まれず、その販売がもとより非常に少ないこと、さらにフォルクスワーゲングループが開発したデュアルクラッチを採用するDSG(ダイレクトシフトギア)の方が誰の目から見ても完成度も評価も高いため、このままではBMWのハイテクイメージを損ないかねないという判断が働いてのことなのかもしれない。

ちなみにBMWのサプライヤーでもあるゲトラグ社はDSG方式の開発を進めており、同時にZFも同様の開発作業を始めているといわれている。

さて、このZ4フェイスリフトとエンジンバリエーションの拡大、そしてZ4 Mロードスターの登場というニュースだが、来春の発売を控えてドイツではすでに国内価格が発表されている。

まず、Z4 2.5iが3万1400ユーロ(約440万円)、Z4 2.5siが3万4400ユーロ(約482万円)、そしてZ4 3.0siが4万0400ユーロ(約566万円)、そしてトップモデルのZ4 Mロードスターは5万7900ユーロ(約811万円)となっている。冒頭で述べたZ4 3.0iは4万0400ユーロ(約566万円)である。ただし現時点では、これらモデルの日本上陸の時期や価格は発表されていない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: Z4 Mロードスターは6速マニュアルトランスミッションの設定。

Z4 Mロードスターは6速マニュアルトランスミッションの設定。

ヒットの法則

BMW Z4 Mロードスター(2006年)

●全長×全幅×全高:4120×1780×1300mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1485kg
●エンジン:直列6気筒 DOHC
●排気量:3245cc
●最高出力:343ps/7900rpm
●最大トルク:365Nm/4900rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:5.0秒
※欧州仕様

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