乗り心地は締まった感じで硬め、直進安定性にも不安なし
オペル車はどうにも「地味」なイメージがつきまとう。そして「いいクルマなんだけどね」と言われる。ではライバルメーカーのフォルクスワーゲンが「派手」かというとそうでもない。ドイツ車、それも実用モデルはさほど「きらびやか」である必要はない。しかしユーザーはどこかに光る部分-これはメッキのデコレーションのことではもちろんないのだが-が欲しい。
日本に導入された新型オペル・ザフィーラは7シーターのコンパクトバンだ。このモデルは「光る部分」がこれまでのオペル車、たとえばアストラ、べクトラよりも多くてわかりやすい。それはいかにもドイツ車らしい、という輝きだ。
このザフィーラは、アストラで高評価を得た電子制御シャシ(IDS)の改良型を備えるが、基本構成はフロントがストラット、リアがトーションビームとごくスタンダード。この機械基盤が実に強靭なのが特徴。アンダーステアを制御するロジックと各輪個別ブレーキング機能を備えたESP、トラクションコントロール(TC)、コーナリングブレーキ制御(CBC)などなど、いかにも理詰めの頼もしいシャシ(コンパクトバンでは世界初)である。
エンジンは2.2L直噴のECOTECで、2本のバランサーシャフトを備えスムーズな回転を確保した。出力は110kW(150ps)で燃費性能も従来型より優れる。
そしてボディ。なにより「ホゥ」と感心するのはCd値が0.31ときわめて優れていることだ。これは同じGMグループのスポーツカー、コルベットと同じ数値。で、3列シートの最後列は子供用ではなく、ゆったりとリラックスして、とはいえないまでも、標準体型の大人が着座してのドライブに耐えるし、シートアレンジ、収納スペースもたっぷりある。またオプション装備だが収納コンパートメントと一体型のパノラマルーフシステムが快適だ。
新型ザフィーラには標準仕様の「CD」、「スポーツ」の2グレードがあり、後者はコンティニュアス・ダンピングコントロール(CDC=ダンパー制御機能)、16インチアルミホイール、レザーステアリングなどがプラスされるが、エンジンは同一。試乗車は「スポーツ」を選んだ。
一般路を少し走って高速道路へ。まず電動油圧式パワーステアリングの感触がいい。乗り心地は締まった感じで硬めの部類だが、ゴツゴツ感はさほどない。2.2L直噴エンジンは予想以上にパワフルで好ましいレスポンスを示したが、高回転域ではややうるさい。
当日は風がとても強かったが直進安定性に不安はなかった。ビシッと腰が据わった走りで、外乱に強い。おお、これがドイツ車のいいとこ=得意技だ、と実感できた。
途中でインパネにあるSPORTのスイッチをオンにする。するとどうなるか、というとシフトスケジュールが高回転側に変化する。これは標準の「CD」にも装備されているが、「スポーツ」ではさらに前述したCDCが働き、サスペンションの減衰力が高くなり、ステアリングもクイックな特性になる。この変化は劇的で驚いた。オーバーにいうと別のクルマになったような感じでもある。ファミリーを乗せてコーナリングを楽しむ、というパパは少数党にしても、この運動性は痛快だ。
唯一注文をつけたいのが、オートマチックトランスミッション。4速ではこのクルマのポテンシャルを十分引き出せていない。縦方向に動かすシフトも時代遅れだ。本国のディーゼルターボ仕様には6速ATが用意されている。「日本向けはライバル車より価格を抑えたいから、4速でいい」としたら、それは大きな間違いではないか。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2006年2月号より)
オペル・ザフィーラ2.2スポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4465×1805×1660mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2198cc
●最高出力:150ps/5600rpm
●最大トルク:215Nm/4000rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:299万円