運転免許証の有効期間は一般的に3〜5年と設定されている。その有効期限の1カ月前には免許更新の通知書が届き、期限の1カ月後まで手続きできるようになっている。しかし、もしこの2カ月の間に免許更新手続きができない場合、どのように対処したら良いのだろうか。

有効期限内に更新できなかった理由が必要

運転免許証は更新期限を過ぎれば効力を失い、これは無免許と同義である。この状態で運転を続ければ検挙されるだけでなく、交通事故を起こすと自動車保険の適用外となることもあるので、運転免許の失効は絶対に避けなくてはならない。しかし、運転免許証更新期限内に「やむを得ない事情」で更新できないこともある。

警察庁が「やむを得ない事情」と認めるのは、海外旅行や災害、病気、疾病、法令により身体の自由を拘束されていたり、社会の慣習上、または業務の遂行上やむを得ない用務が発生していた場合だ。いずれの場合もそれを裏付ける証拠が必要だ。日々の多忙さで免許更新を忘れていた、いわゆるうっかり失効は「やむを得ない事情」にあてはまらないので注意しよう。

運転免許証失効後の再取得時には、新しく免許を取得するときと同様、「原則的に」技能試験や学科試験が必要となる。しかし、再取得のための試験や講習などの行程を免除する制度があり、失効からの経過時間ややむを得ない事情の有無によって、その免除の内容が違う。

画像: 警察庁が定義する「やむを得ない事情」はさまざまだが、海外渡航もそのひとつ。

警察庁が定義する「やむを得ない事情」はさまざまだが、海外渡航もそのひとつ。

やむを得ない事情がある場合

・失効から6カ月以内
技能試験・学科試験ともに免除され、視力や聴力などの適性試験のみ実施される。その上、前免許証失効から新免許証取得までのブランク期間も免許証を所持していた扱いとなる。運転免許の再取得は必要だが、優良運転者期間の断絶がなくなるので失効によるデメリットを小さくできる。ただこの場合、次の免許更新日が非常に近くなる。次の更新日がいつなのか、チェックを怠らないようにしよう。

・失効から6カ月以上、3年未満の経過(やむを得ない事情が終了してから1カ月以内)
技能試験・学科試験ともに免除され、その内容は上記の「失効から6カ月以内」と同じ。ただし、やむを得ない事情が終了してから1カ月以上経過すると、下記の「やむを得ない事情がない場合」と同じ条件になる。

やむを得ない事情がない場合

・失効から6カ月以内
技能試験・学科試験ともに免除され、視力や聴力などの適性試験のみ実施される。ただし失効中のブランク期間は、免許証を所持していたことにならない。優良運転者であれば前免許失効とともにその資格もなくなる。

・失効から6カ月以上、1年未満の場合
仮免許の技能試験と学科試験が免除される。

・失効から1年以上
技能試験・学科試験・仮免許試験ともに免除なし。

「やむを得ない事情」は前述のとおりだが、これを証明する書類を提出する必要がある。例えば病気や疾病、妊娠、出産などを理由とする場合、入院証明書や医師の診断書でこと足りる。

海外渡航のケースでは法務省保有の「日本人出帰国記録」、いわゆる出入国履歴を提出するのが一般的。以前なら出入国スタンプのあるパスポートが証明になったのだが、近年国内主要空港で出入国ゲートが自動化され、パスポートへの押印を省略されているから注意が必要だ。

日本人出帰国記録は、情報開示申請書類(法務省公式サイトからダウンロード)や住民票、顔写真入りの本人確認書類などを揃え、郵送で開示請求できる。到着まで時間がかかるので、免許証更新日をスケジューリングして予定を立てよう。なお、警察庁が発行する海外渡航証明書は犯罪歴証明書であり、くれぐれも間違えないようにしたい。

画像: パスポートに押印された出入国スタンプが「やむを得ない事情」の証拠になるが、近年は押印しないケースが増えている。

パスポートに押印された出入国スタンプが「やむを得ない事情」の証拠になるが、近年は押印しないケースが増えている。

有効期限の1カ月以上前に更新できる特例も

ここまで「失効後」について解説してきたが、事前に「やむを得ない事情で更新できない」とわかっていることもある。この場合、特例更新により更新日の1カ月以上前でも手続きできる。

特例更新での「やむを得ない事情」には前述のほか、自然現象による交通網のマヒが加わる。例えば、例年豪雪により免許センターまでの交通手段がなくなってしまうような地域で、積雪前に更新手続きできるようなケースだ。このほかにも語学留学が決まっていたり、臨月の近い妊婦などのケースも考えられる。利用する場合には、管轄の免許センターに連絡して指示を仰ごう。(文:猪俣義久)

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