シャープな横型デザインとなったヘッドライト
DNAはスポーツカーメーカーにあり。ジェントルサルーンのブランドというイメージを払拭する象徴として、名スポーツカー「Eタイプ」にオマージュしたネーミングが冠されたFタイプが発売されて、丸6年が経過した。
そんなタイミングで行われたマイナーチェンジモデルの国際試乗会の舞台は、冬でも暖かな陽光が射し込むポルトガル。内陸のワインディングロードを中心に設定された試乗ルートは、ピュアなスポーツカーのチェックにはうってつけのコースだった。
用意されたのは、メカニカルスーパーチャージャーを加えた5L V8エンジン搭載のクーペ/コンバーチブルに、2直4ターボエンジンを搭載するクーペの3台。V8エンジンを積んだクーペは「R」のグレード名が与えられたシリーズ最強バージョンで、専用チューニングが施されたことで575psまで高められた怒涛のパワーが、4WDシステムによって4輪へと振り分けられ大地を蹴る、硬派なモデルである。
モデルライフ途中でのリファインでもあり、アルミ製のボディ骨格や前出エンジンは、基本的にこれまでのアイテムを踏襲。新型での一番の見どころは、一新されたその顔付き。奥行き方向が強調されたこれまでのアーモンド型から、サイドにまで鋭く回り込んだシャープな横型へと変更されたヘッドライトを中心に、その表情はまさにフルチェンジ。従来型ユーザーへの買い替え需要を喚起できそうな一方で、「前の方が良かったのに」という声も聞こえそうな大胆なイメージ変更だ。
2モデルでも絶対的な加速力に不足はなく、FRレイアウトを採用しながらオープンエアを採り入れたV8モデルの走りも、直接耳に届けられるV8サウンドを含めて何とも官能的だった。
が、もっともエキサイティングだったのは、やはり前出の「R」の走り。V8エンジンに4WDシステムまでを備えるものの、その走りは軽快感に溢れ、同時にダイナミックそのものでもあるのが特徴だ。「なるほどこれなら、いかにもスポーツカーメーカーだとアピールしたくなるのも当然……」と、最新のジャガーに改めてそう実感させられたのだった。(文:河村康彦)