2006年、まずセダンボディで登場した2代目アウディRS4に、カブリオレとアバントが登場している。そして、このカブリオレのリリースは市場に大きなインパクトを与えた。カブリオレにRS4は必要だったのか、どんなモデルに仕上がっていたのか。RS4アバントとともに振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年7月号より)

420psものパワーを誇るが、その佇まいはエレガント

「カブリオレに420psも必要なのだろうか」というのが、レポーターの偽らざる疑問であった。というのもオープン4シーターとは緑の中でのフレッシュエアドライブを楽しんだり、さらにはリゾートの街並みを見ながら、あるいは見られながら、流すように走るのが本当なのではないかと思っていたからである。それゆえにアウディRS4のカブリオレの発表を見て「何もここまで」と考え込んでしまったのだ。

というわけで、本当はお見合いの前に先入観を持ってはいけないのだが、ちょっと疑心暗鬼の状態でローマ空港に降り立った。そして、RS4カブリオレとの出会いに向かう。

RS4シリーズの特徴はフロントエンド、シングルフレームグリルの左右に追加されたエアインテーク、そしてリップスポイラーに始まり、際立ったオーバーフェンダー状のホイールアーチとサイドシル部のプロテクトモール、そしてリアエンドではトランクリッド上端の整流エッジ、左右両端から伸びた楕円形のマフラーカッターなどである。

もちろんRSの伝統となったアルミ製ドアミラー、さらにボディの前後左右、ブレーキキャリパーなどいたるところに貼られている「RS4」のエンブレムが決定的な証となる。

ところで、このRS4カブリオレとの出会いで改めて一つの大きな魅力を発見した。パーソナルなタッチである。クラシカルなキャンバストップと2ドアからなる佇まいはエレガントであった。

そういえばアウディRSにはスタンダードな4ドア、そして実用性の高いアバントはあっても2ドアクーペが存在しない。つまりRSの持っているパーソナルでスペシャリティな魅力と特性を臆することなく表現しているのは、このカブリオレしかないのだ。

搭載エンジンはセダンRSと同じで排気量4163ccのFSIヘッドを持つ4バルブV8で、最高出力420ps、最大トルク430Nmを発生する。プレスキットによれば、ボディの補強や電動油圧による開閉装置などによって1845kgとなったカブリオレボディにもかかわらず、6速マニュアルギアボックスを介してのスタートから100km/hまでの加速所要時間はわずかに4.9秒で、セダンやアバントと同等だ。

画像: 2代目RS4で登場したカブリオレ。その高性能はエレガントで優雅な佇まいを壊すものではなかった。

2代目RS4で登場したカブリオレ。その高性能はエレガントで優雅な佇まいを壊すものではなかった。

セダンとはひと味違う痛快な楽しさがある

さて、素晴らしい快適性とスポーティなサポート性が高い次元で両立したシートに身体をあずけ、コクピットを見渡す。下側の部分にアルミを使ったエルゴノミックなステアリングホイール、カーボンとアルミ、そしてレザーの組み合わさったスポーティで豪華なダッシュボードとセンターコンソールなど、すべてがさすがアウディと思わせる高い品質で仕上がっている。

そして、スタートしようとイグニッションキーを捻ったのだが、なも起こらない。そこでもう一度周囲に目を凝らすとハンドブレーキの脇、目立たないところにアルミ製のスターターボタンを発見、ようやくエンジンが回り始めた。もちろん慣れればまったく問題のないことではあるが、やはりスターターボタンはドライバーが正面を向いた時の視界内に、それも赤などの目立つ色でレイアウトして欲しい。

非常に滑らかにアイドルするV8エンジンは、ひとたびスロットルペダルに力を込めると8本のシリンダーはまったくフリクションがないかのようにタコメーターの針とシンクロナイズする。つまりストレスなしにどのギアでも7800rpmに飛び込んでしまう。そして、当初のイメージをはるかに超えたレベルでオープン4シーターを加速させる。

しかもトップを開けたままの状態であるから、外界周囲の景色が激しく後方へ飛び去って行き、セダンとは違う痛快な楽しさがある。もちろん200km/h以上ではかなり風を巻き込むが、後部座席を犠牲にしてウインドディフレクターを立てれば快適なオープン空間が確保できる。

実際に200km/h以上のスピードでアウトバーンを移動するのであれば、ソフトトップは閉じることをお勧めする。このRS4のキャンバストップにはノイズを効果的に遮断するアコースティックルーフ構造が採用されており、高速走行でもキャビンはクローズドボディと同等レベルの静粛性を保っているのである。

もちろん定評あるクワトロシステムによるトラクションの確かさ、そしてロードホールディングの高さは、スタートしてからの高速巡航、そしてヴァレルンガサーキット周辺のワインディングロードなど様々なセッションで感じることができた。とくに積極的なコーナリング時におけるハンドリングの向上は、間違いなく新たに採用されたフロント40%に対してリア60%という基本トルク配分によるところも大きいに違いない。

さらに、18インチホイール内に収められた大径ドリルドベンチレーテッドディスクとフロント用が8ピストンキャリパーなるブレーキシステムは、420psをきっちりと受け止める大役をしっかりと務めている。

200km足らずのテストコースであったが、420psのカブリオレに対する偏見は前述したような様々なドライビングパフォーマンスを体験することによってレポーターの頭は徐々に消え、拒絶から許容、いや賛同の方向へと変化していった。

また、いかにもアウディらしい特徴をもつ世界最高ワゴン、RS4アバントにも乗ることができた。カブリオレと同様、プラスαの魅力をもつこの仕上がりは、期待どおりであったことは言うまでもない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年7月号より)

画像: RS4カブリオレと同時に登場したRS4アバント。

RS4カブリオレと同時に登場したRS4アバント。

ヒットの法則

アウディRS4 カブリオレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4555×1814×1391mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1845kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:420ps/7800rpm
●最大トルク:430Nm/5500rpm
●トランスミッション:6速MT
●0→100km/h加速:4.9秒
●最高速: 250km/h(リミッター作動)
※欧州仕様

アウディRS4 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4586×1816×1415mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1845kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:420ps/7800rpm
●最大トルク:430Nm/5500rpm
●トランスミッション:6速MT
●0→100km/h加速:4.9秒
●最高速: 250km/h(リミッター作動)
※欧州仕様

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