フォード RS200(1984-1986年)
1986年まで、世界ラリー選手権(WRC)はグループBマシンによる激烈な戦いが展開されていた。英国フォードとしてもWRCには常に意欲的な体制で臨んでおり、ミッドシップ4WDでなければ勝てない状況に対し、ライバルたちに対抗できうるマシンを生産化した。
そのフォードが製作したマシン「RS200」は、メインモノコックの前後にスペースフレームをサブとして追加し、コクピットの背後には超軽量の総アルミ製1.8LのBDTエンジンを搭載している。
スタイリングは、当時フォードの一部門となっていたイタリアのカロッツェリア・ギアが担当し、フォードとしてのアイデンティティを確保するために、フロントウインドーはシエラの標準のものを、ドアパネルもシエラのプレスを流用している。それでも操縦性を考慮して前後オーバーハングを極端に切り詰め、全長は4mとコンパクトにまとめたシルエットは精悍そのもの。
インテリアは革巻き3本スポークのステアリング、FRP製バケットシート、ごついシフトノブなどはラリームードたっぷりで、スパルタンな雰囲気が漂っている。フロアセンターにはプロペラシャフトが通り、フロントのバルクヘッド付近にはトランスアクスルも配されて、角張ったボックスセクションが設けられている。
前述のBDTエンジンはエアリサーチ製のターボチャージャーとインタークーラーも装着され、ストリート仕様とはいえ最高出力230psと最大トルク28.5kgmのパワースペックを発生する。1987年当時、谷田部の日本自動車研究所のテストコースにおける実測テストでは、7000rpmでシフトアップしていって0→400m加速は14.51秒を記録。最高速度は222.46km/hを記録し、このときのエンジン回転数は5速で6700rpm、スピードメーターは230km/hを表示していた。ブースト圧を低めに抑えていての数値なので、最高速度はまだまだ伸びそうに思えた。
ストリート仕様とはいえグループBマシンゆえ、コクピットの中はかなり騒々しい。だが4WDのおかげで直進性はきわめて良く、空力性能も良いので高速時のリフトも少ない。旋回性能は出色のレベルで、ミッドシップによる50:50の荷重配分が効いており、これでシャープなハンドリングが得られる。
ボディ剛性も高く、前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションに、ダンパーは1輪につき2本装着されている。高度のスポーツ性能を持ちながらストリートユースにも問題なく耐えられる実用性も備える点は、十分に評価できるだろう。
フォード RS200 主要諸元
●全長×全幅:4000×1750mm
●ホイールベース:2530mm
●重量:1050kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1803cc
●最高出力:230ps/6000rpm
●最大トルク:28.5kgm/4500rpm
●燃料タンク容量:74+42L
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:225/50VR16