創刊以来、65年の歴史を刻むモーターマガジン(MM)のアーカイブから、ちょっと懐かしく珍しいクルマを紹介する大型連休の短期連載企画。第7回はブリティッシュ ロードスターの「ミラク」だ。

ミラク(1991年)

画像: 他に類を見ないユニークなスタイル。ブラックアウトされたサイクルフェンダーでタイヤはむき出しのように見える。

他に類を見ないユニークなスタイル。ブラックアウトされたサイクルフェンダーでタイヤはむき出しのように見える。

イギリスはイングランド南西のデヴォン州に本拠を置く、メイ・コーポレーションが製造するミラク(MIRACH)。このユニークなスタイルのクルマを設計したのは、1980年代後半からイギリスの自動車デザインに大きな話題を提供し続けているクリス・フィールドだ。その開発コンセプトは、当時の先新技術を駆使して、イギリスの生んだ傑作「スーパーセヴン」に匹敵する動力性能と軽快感を演出することだった。

その圧倒的な存在感と鮮烈な印象を与えてくれるボディは、カーボンファイバーとケブラーを主材料としている。メインシャシはスチール製だが、エンジンなどメカニカルコンポーネンツを加えた状態での車両重量は910kgにおさえられている。ボディ下部はグランドエフェクト効果を得るために微妙な曲線が描かれている。

ミラクはドアもないロードスターだが、トップの部分が左右分割でガルウイング式に開閉する、脱着式のタルガトップも備えている。またボディサイドのロッカーパネルは、エキゾーストパイプの熱から乗員を保護する目的で採用されているが、脱着は可能だ。

インテリアはブリティッシュ スポーツカーらしく、コノリーレザーのアジャスタブルシートも備えて上質な雰囲気をかもし出している。小径のMOMO製ステアリングやVDO製メーターの備わるコクピットは少しタイトだが、スポーツカーらしく操作性に不満はない。

画像: ローバー製の3.9L V8をフロントミッドシップ搭載。公称の最高速度は240km/h、0→60mph(96km/h)加速は4.7秒。

ローバー製の3.9L V8をフロントミッドシップ搭載。公称の最高速度は240km/h、0→60mph(96km/h)加速は4.7秒。

フロントに搭載されるエンジンは、ローバー製の3.9L V8 OHVを基本としたもので、ルーカス製の電子制御燃料噴射を組み合わせて、最高出力は178ps、最大トルクは30.4kgmのパワースペックを発生する。組み合わされるミッションは、リバースが左上に位置する5速MT。280psのハイパワーモデルが登場し始めた当時としても、絶対的なパワーは特筆すべきスペックではないが、900kgそこそこの軽量ボディには十分なパワーで、加速感は申し分ない。

前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションは可変ダンパーを備え、好みに応じて減衰力の設定を変えることができる。実際の乗り心地は、一般的なライトウエイトスポーツとほぼ同等で、スパルタンな印象は薄い。ストロークにも余裕があり、凹凸の激しいコーナーをクリアするときでも動きは実に紳士的だ。

ステアリングはクイックで、通常のワインディング走行なら左右に4分の1回転も切れば十分だ。コーナリングスピードは一般的なスポーツモデルと比べるとかなり高く、弱アンダーステアに終始する。キックバックも良くおさえられている。

現代(1990年代当時)のスーパーセヴンと言われても、ミラクにはスーパーセヴンの面影はない。また、公道を走れるフォーミュラマシンという比喩も、少し違う。ミラクの走りは一般的なライトウエイトスポーツとは大きくその雰囲気が異なり、しかもきわめて高い実用性と快適性を同時に備えているのだった。

画像: リアビューも独特。全長は4m足らずだが全幅は1.9m近くあり、車高は1.2mもないロー&ワイドなプロポーション。

リアビューも独特。全長は4m足らずだが全幅は1.9m近くあり、車高は1.2mもないロー&ワイドなプロポーション。

ミラク 主要諸元

●全長×全幅×全高:3962×1867×1160mm
●ホイールベース:2502mm
●重量:910kg
●エンジン種類:V8 OHV
●排気量:3947cc
●最高出力:178ps/4750rpm
●最大トルク:30.4kgm/3250rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前205/50VR15、後285/40VR15

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