マクラーレンのロードカーはこれまで「スポーツ」、「スーパー」、「アルティメット」の3シリーズに分類されたが、新しいGTはそれらとは異なる独立したモデルに位置づけられている。あえて近いシリーズを探せば、採用されるテクノロジーは「スポーツ」に、シャシは「スーパー」に近い。GTのエンジンは4L V8ツインターボで、最高出力は620psに抑えられるが、最大トルク630Nmの95%を3000rpmから7250rpmの広い領域で生み出すことで、優れたドライバビリティを実現している。今回は、最新ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」から、マクラーレンGTのそ試乗記をお届けしよう。

ドライバビリティはエレガント

GTのスタイリングは、既存のマクラーレンのどれとも似ていない独自性の強いものだ。720Sのシンプルで穏やかな造形をベースとしつつも、より流れるようでエレガントなスタイリングとされている。これもグランドツアラーに相応しい造形といえる。そして570GTとよく似たテールゲートを設けることで、その下側に420Lものラゲッジスペースを生み出している。

マクラーレンによれば、そこには、サイズには限りがあるもののゴルフバッグまたは185cmのスキー板が2セット積めるという。

試乗すると、低速域で足まわりの動き出しがしなやかなことに驚かされる。その後のストローク感も文句なしに滑らかで、スーパースポーツカーとは味付けが明確に異なっている。

タウンスピードから高速道路まで極めて快適。私は570Sで300kmほどを一気に走ったことがあるが、GTだったら500km、いや1000kmでも疲れ知らずだろう。しかも、そうやって長距離を淡々と走ってもドライバーを飽きさせない。

それはステアリングインフォメーションであったり路面から伝わる振動であったりロードノイズであったりするわけだが、必要な情報を伝えつつもドライバーを疲れさせず、しかも飽きさせない。

570Sに比べてエンジン音が乾いた高音で、音量が控えめにされている点もキャラクターにマッチしている。もっとも、これらに近い要素は、GT以外のマクラーレンのラインアップも持ち合わせている。

つまり、グランドツアラー性とスーパースポーツ性の共存。マクラーレンの本質でもあるこの特徴を、GTは見事に体現しているとも言えるだろう。(文:大谷達也/最新ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」より)

画像: 2019年10月にデリバリーが開始された「マクラーレンGT」。長距離ドライブにおける快適性を意識して開発されたスポーツカーで、その存在は非日常的だが、価格は2645万円と良心的。

2019年10月にデリバリーが開始された「マクラーレンGT」。長距離ドライブにおける快適性を意識して開発されたスポーツカーで、その存在は非日常的だが、価格は2645万円と良心的。

マクラーレン GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4683×2045×1213mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1605kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:3994cc
●最高出力:620ps/7500rpm
●最大トルク:630Nm/5500-6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●車両価格:2645万円

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