2007年、それまでMTのみだったアルファ159のラインアップに2ペダルMTの「セレスピード」が追加された。先代156に搭載されていたセレスピードとどう違うのか、159のMT仕様と比べて走りはどうなのか。Motor Magazine 誌では、さっそく159のMTと「新しいセレスピード」を持ち出してパフォーマンスを試している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

適切で違和感のないギア比に応じた変速

ブレラ顔のカッコ良さに加えて、ドイツ車にも引けを取らない強靭なプラットフォームを手にしたプレミアムセダン、アルファ159。その2.2JTSに待望のセレスピードが登場した。

セレスピードはフェラーリのF1技術に端を発し、MT操作にATモードも備えた画期的な2ペダル。MTを電制のアクチュエータを介してクラッチ操作するもので、「ロボタイズド」とも呼ばれる所以でもある。

これはマニエッティ・マレリとアルファロメオとの共同開発による技術で、日本には1999年のアルファ156から導入された。以来、8年を経たセレスピードだが、今回は改めてその進化を実感させられた。

今度のセレスピードはシフト操作が従来と大きく異なる。それはシフトアップが手前、ダウンは奥というパターンに180度転換したこと。さらに、ボタン操作だったATモードへの切り替えは、シフトを右に倒すことで済むようになった。また、スポーツ・シフトが備わったことでスイッチひとつで制御をスポーティに切り替えることができるようになり、リバースの位置が変更されてMTと同じく左奥となった。

これらの変更は従来のセレスピード・ユーザーにとっては当初は戸惑うかも知れないが、あくまでも「慣れ」の問題。なお、ステアリングホイールにある右アップ、左ダウンのパドルスイッチに変更はない。

走り出してまず感じるのが賢くなった制御システムだ。エンジン回転数、アクセル開度、車速などをよりきめ細かく演算していて、シフトアップもダウンもこれまで以上に適切に行ってくれる。ATモードにセットしてもギアの繋がりがスムーズで、いわゆるギクシャク感がほとんどない。これまでのように繋がる瞬間を意識してのアクセルワークは必要なくなった。

アルファ159のトランスミッションは、開発時にGMと関係があったためオペル系のものを流用している。そのためドイツ的に牽引することを想定していて、1、2速がローギアで、そのぶん3速がちょっと離れている。

今回、セレスピード化することで、この点を一番懸念していたのだが、それは杞憂に終わった。ATモード時はあえて1、2速を引張り気味にして3速に繋いでいたのだ。対照的に3速以降はギア比がクロスしているため早め早めに繋いでいく。

また、MTモードにして感じるのが、従来に比べ格段にシフトチェンジが素早くなっていること。3段飛ばしのシフトダウンでも瞬時に回転合わせを行ってくれるのは見事だ。ただし、シフトアップ時に無理な注文を強いると即座に「オペレーションノットアドミッシブル」の英語表示が出される。このことからも制御が、より緻密になっていることは十分に窺い知れる。

画像: アルファ159 2.2JTS セレスピード仕様。エンジン回転数、アクセル開度、車速などを細かく演算してシフトアップ&ダウンをスムーズに制御。ATモード時でにスポーツシフトのボタンを押せば、各ギアで高回転まで引っ張ってくれる。

アルファ159 2.2JTS セレスピード仕様。エンジン回転数、アクセル開度、車速などを細かく演算してシフトアップ&ダウンをスムーズに制御。ATモード時でにスポーツシフトのボタンを押せば、各ギアで高回転まで引っ張ってくれる。

この賢くなったセレスピードに馴染むと、MTにはない楽しみを実感できる。やはり基本は6速あるだけにMTモードが一番だ。シフトはストロークが小さく手首の動きだけで操作できるし、パドルを操ればステアリングホイールから手を離さずにアップ&ダウンを楽しめる。

それでいて一度渋滞に巻き込まれたら、シフトを右に倒してATモードに切り替えればいい。さらにATモード時でもスポーツ・シフトのボタンを押せば、各ギアは高回転まで引っ張ってくれるから、ここでも楽しみは残されている。今回の新世代セレスピードはMTでもATでも走る楽しみが大きく広がっているのが特徴だ。

気になることもあった。セレスピードはエンジンを切る際、サイドブレーキの保険としてリバースに入れる。従来はエンジン始動時ブレーキペダルを踏んでキーをオンにすれば自動的にニュートラルとなってエンジンがかかった。これが安全上からだろう、ニュートラルをセレクトしないとできなくなったのだ。

今回、セレスピードが設定されたのは2.2JTSでプログレッションとディスティンクティブの2グレードで、前者はディスティンクティブのMTと同価格の399万円、後者は471万円となっている。これはなかなか戦略的な価格設定である。なぜなら前者はオートライトやパワーシートなどわずかな装備の差でMTと同価格としているし、後者は一見高価に感じられるかも知れないが、バイキセノンヘッドライト、ポルトローナフラウ製レザーインテリア、18インチのタイヤ&ホイール、前後のパーキングアラームなど15項目のオプション「ヴィラ・デステⅡ」をセットしてのことだから逆にお買い得とも言える。

セレスピードの追加でアルファ159の魅力は確実に広がった。さらに、今年はスポーツワゴンも登場するし、3.2JTSにはQトロニックと呼ぶ6速ATも用意されるはずだ。AT専用免許なるものが存在する日本においては、アルファロメオとて2ペダルは欠かせない。それだけに、今回のセレスピードを含めたバリエーションの広がりに大いに期待したい。(文:河原良雄/Motor Magazine 2007年4月号より)

画像: 2.2JTS セレスピード ディスティンクティブは、ポルトローナフラウ製レザーインテリアなどをセットした「ヴィラ・デステⅡ」パッケージを標準装備。ヴィラ・デステとはミラノの北にあるコモ湖ほとりのホテル名が由来。

2.2JTS セレスピード ディスティンクティブは、ポルトローナフラウ製レザーインテリアなどをセットした「ヴィラ・デステⅡ」パッケージを標準装備。ヴィラ・デステとはミラノの北にあるコモ湖ほとりのホテル名が由来。

ヒットの法則

アルファ159 2.2 JTS セレスピード ディスティンクティブ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4690×1830×1430mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2198cc
●最高出力:185ps/6500rpm
●最大トルク:230Nm/4500rpm
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:FF
●車両価格:471万円

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