トップ3は同じタイヤ戦略となり優勝争いは膠着状態に
心配された雨は降らず、晴れ間も見える中、気温17度、路面温度30度というコンディションで決勝スタートを迎えることになった。
レッドブル・ホンダは、ミディアムタイヤを履いたフェルスタッペンが3番手、ソフトタイヤのアレクサンダー・アルボンが5番手からスタート。アルファタウリ・ホンダは、11番手のダニール・クビアトがタイヤ選択自由の利を生かしてミディアムタイヤを選択、12番手のピエール・ガスリーはハードタイヤをチョイスと、チーム内でそれぞれ異なる戦略をとることになった。
フェルスタッペンはオープニングラップでダニエル・リカルド(ルノー)と激しく競り合い3番手をキープするが、アルボンはエステバン・オコン(ルノー)に抜かれて1つポジションを落とす。
レース展開の大きなポイントは11周目に訪れる。アントニオ・ジョヴィナッツィ(アルファロメオ)とジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)が相次いでクラッシュ。これによりセーフティカーが導入され、この間にガスリーとセルジオ・ペレス(レーシングポイント)を除く全車がピットインしてタイヤを交換した。
ここでフェルスタッペンはミディアムからハードタイヤへ、アルボンはソフトからミディアムタイヤに履き替える。
フェルスタッペンは3番手を守り、アルボンはオコンの前に出てレースを再開。その後、フェルスタッペンは2番手のバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)にプレッシャーをかけるべくプッシュするが、レース終盤にかけてタイヤの摩耗を抑える必要が出てきたため、ポジションを守る走りへと切り替えて3位でフィニッシュした。フェルスタッペンにとって不運だったのは、11周目のセーフティカー導入により、メルセデスAMG勢とまったく同じタイヤ戦略となり、逆転の糸口がつかめなかったこと。優勝したハミルトンはレース終盤に右タイヤに不安を抱えながらの走行となったが、順位を入れ替えるほどの状態にはならなかった。
アルボンもタイヤをいたわりながらポジションを守っていたが、2スティントめのミディアムタイヤの摩耗が大きく、最終ラップでハードタイヤのオコンにオーバーテイクを許して6位でチェッカーフラッグを受けた。
一方のアルファタウリは、11周目のセーフティカー導入時にピットに入らなかったガスリーが4番手までポジションアップ。クビアトもトップ10圏内までポジションを上げる。
その後、ガスリーは、残り17周となったところでピットインしハードからミディアムタイヤに履き替えて16番手でコースへと戻ると、そこから怒濤の追い上げを開始。次々とライバルをオーバーテイクして8位でフィニッシュし、このレースの「ドライバー・オブ・ザ・デイ」に選出された。チームメイトのクビアトはレーシングポイント勢を捕まえることができず11位に終わっている。
ホンダのパワーユニット勢は3台がポイントを獲得する健闘を見せたものの、1-2フィニッシュを飾ったメルセデスAMGには完敗。今週末にイタリア・モンツァで行われるイタリアGPで雪辱を期すことになる。
今回のレース結果について、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「ホンダのパワーユニットを積むマシン4台のうち3台が入賞し、まずまずの結果になりました。フェルスタッペン選手は、終盤タイヤの劣化が厳しい中でうまくペースをコントロールしながら、3位でフィニッシュ。6戦連続となる表彰台を獲得してくれました。チームメートのアルボン選手もトラフィックのある難しいコンディションの中で厳しいレースとなりましたが、6位入賞となりました。しかし、最終周でポジションを落としたことに悔しさを感じています。グリッド上で唯一ハードタイヤを履いてスタートしたアルファタウリのガスリー選手は、セーフティカー中にピットインせず、ほかのマシンとは異なる戦略を選択。数々のオーバーテイクを見せ、8位入賞となりました。レースを通して非常に力強い走りをしていたので、展開次第ではもう少し上の順位も狙えたのではと思っています。クビアト選手も粘り強くレースを続けましたが、惜しくもポイント圏外の11位という形になりました。次週からはイタリアでモンツァ、ムジェロの2連戦を迎えます。パワーユニットモードの使用制限という新たな制約下で初めてのレースになりますので、十分にパワーユニットの使い方などのシミュレーションを行った上で戦いに臨みます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「このコースは大好きですが、今回はあまりエキサイティングな展開にはなりませんでした。バトルも多くなく、自分のレースをして最善の結果を持ち帰ろうと取り組みました。ミディアムタイヤではそこまでグリップがなく、ハードタイヤに交換してからバルテリ(ボッタス)にプレッシャーをかけようとしましたが、なかなかギャップが埋まらず孤独なレースとなりました。大きな動きもなく、残念ながらタイヤの摩耗も大きかったので、あまりプッシュすることができませんでした。レース終盤にはフロントからバイブレーションを感じたので、タイヤマネジメントに集中せざるを得ず、リスクを冒さずに完走を目指しました。全体的には、いいレースウイークになりましたし、マシンのバランスもいいので、満足しています。3位になるためにここにいるわけではないですし、もっと上を目指していますが、今回も表彰台に立ててよかったです」
アレクサンダー・アルボン
「何をしても難しい状況で、フラストレーションの溜まるレースでした。レース前から、ルノー勢はダウンフォースを低くして最高速が速いので、オーバーテイクが難しいと分かっていたのですが、それを実際のレースで証明する形になってしまいました。ソフトタイヤでのスタートはなかなかいいと感じていましたし、ピットクルーが素晴らしい作業をしてくれて、オコン選手の前に出ることもできました。ミディアムタイヤでここまでデグラデーションが大きいとは思っていなかったのですが、もしかしたらタイヤ選択が正しくなかったのかもしれません。できる限りのプッシュをしてオーバーテイクを試みましたが、タイヤが終わってしまいました。モンツァのことを考える前に、まずはこれを振り返ってみます。ただ、チャンピオンシップで4位にポジションが上がったのはいいことですし、前進していることの証でもあると思います」
ピエール・ガスリー
「アントワーヌ(ユベール選手)のことがあったので、好結果を目指した重要な日でした。僕らは、ほかのマシンと異なる戦略を採り、ハードタイヤでスタートすることを決めましたが、それが予想よりもうまくいき、何台ものマシンをオーバーテイクすることができました。ペレス選手をパスしたときは特に激しいバトルでしたが、とても楽しめました。スタートから20周までにセーフティカーが出てしまうと致命的だと思っていましたが、不運にもそういう展開になり、ほかのマシンにピットストップをされてしまう形になりました。それでもマシンはよくてペースがあったので、決してあきらめず、可能な限りハードにプッシュしました。ピットストップを終えると、ほぼ最後尾というポジションで、中団でバトルをしなければなりませんでしたが、楽しんで走ることができて、8位という素晴らしい結果を手にしました。セーフティカーによって20秒ほどタイムをロスしましたが、最終的には5位のオコンと7秒差だったので、5位になれるポテンシャルがあったと思います。前を行くマシンを抜いていくのは大仕事でしたが、それをやり遂げたのは素晴らしいことですし、この結果がとてもうれしいです。ドライバー・オブ・ザ・デイを獲得できたこともよかったです。投票してくれた皆さんに感謝しています。このパフォーマンスを、今後のレースでも発揮できるように頑張ります」
ダニール・クビアト
「今回は正しい戦略を採れなかったと思うので、しっかりと振り返ります。レース前には判断がつかなかったので、僕らのチームは2台で戦略を分けたのですが、不運にも僕が機能しないほうの戦略となりました。硬めのタイヤでスタートできればもっといい結果が出せたと思いますし、スパのようなコースでは古いタイヤでペースを維持するのが難しいのですが、決勝ではレース中、常に間違ったタイミングとポジションだったように感じました」
一方、タイヤを供給するピレリはベルギーGPを振り返って「雨の予報もありましたが、レースは最初から最後までドライのままでした。ポールからスタートしたハミルトンは、11周目のセーフティカー導入の間にミディアムからハードタイヤに履き替えて、そのままフィニッジュしました。 表彰台に上がった3人はすべてこの戦略でした。結局、上位4台はすべてグリッド順にゴール、トップ10のうち8台はセーフティカーの下での1ストップでした。多くがハードタイヤで長い最終スティントを走らなければならず、最後はタイヤマネージメントに苦労したドライバーもいましたが、リカルド(ルノー)はハードタイヤで最終周に最速ラップを記録しています」とコメントしている。
次戦第8戦イタリアGPは、9月4日〜6日、ミラノ近郊のモンツァ・サーキットで開催される
2020年第7戦ベルギーGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)44周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +8.448s
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+15.455s
4位 3 D.リカルド(ルノー)+18.877s
5位 31 E.オコン(ルノー)+40.650s
6位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+42.712s
7位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+43.774s
8位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+47.371s
9位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+52.603s
10位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+53.179s
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +70.200s