予選モード禁止規定関係なし、異次元の走りを見せたハミルトン
予選は気温28度、路面温度45度と暑いコンディションでスタート。パワーモード変更禁止という規定が予選にどんな影響を与えるのかに注目が集まったが、こと予選に関しては、メルセデスAMGの速さが揺らぐことはなかった。
予選Q1からメルセデスAMGが圧巻の走りを見せる一方で、その後ろ、3番手以降は大混戦。超高速コースのモンツァサーキットではスリップストリームがタイムに大きな影響を与えるため、各車がアタックのタイミングを見計らう異常な展開になっていく。
そうなるとスリップストリームを必要としないメルセデスAMGが予選の先導役を務めることとなり、コースは大渋滞。しかも3番手以降のタイムが接近しているため、各車1周しかタイムを出せないソフトタイヤを選択することになり、トラフィックの中でスリップストリームを使いながらいかにパフォーマンスを発揮するかが重要なポイントとなった。予選Q2で、3番手のカルロス・サインツ(マクラーレン・ルノー)から12番手エステバン・オコン(ルノー)まで0.5秒の中に10台がひしめく大接戦となったことからもその難しさがわかる。
そのQ2でのタイヤ戦略は、3番手以降がソフトタイヤを選択せざるを得なくなったことから、ギャンブルの必要のないメルセデスAMGも含めて全車ソフトを選択。上位10台は決勝をソフトタイヤでスタートすることになった。決勝が高温になった場合、このソフトタイヤでどこまで走れるかがポイントとなりそうだ。
決勝グリッドを決める予選Q3では、ハミルトンが1分18秒887という圧巻のタイムをマークして、モンツァで7回目、自身通算94回目のポールポジションを獲得した。ボッタスは0.069秒及ばず2番手、0.8秒差と少し離れた3番手にサインツが入った。フェルスタッペンはサインツから0.100秒差の5番手、アレクサンダー・アルボンは最終コーナーでトラックリミットを超えて1回目のタイムが取り消され9番手、ピエール・ガスリーは10番手という結果になった。
ダニール・クビアトは混戦となったQ2で0.105秒及ばずノックアウト。決勝スタート時のタイヤを自由に選べる11番グリッドを獲得した。
ちなみに、予選は気温28度、路面温度45度というコンディションで始まり、途中で気温31度、路面温度46度に上がったが、日曜日も同様の状況が続くと予想されている。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、決勝レースに向けて「イタリアGP予選は、新たに導入されたパワーユニットモード制限の下で行われた初めてのセッションとなりました。ここモンツァで例年発生する予選中のトラフィックなどににも影響されたところはありますが、予選結果は厳しいものとなりました。初日からマシンのバランスにやや苦しんでいたレッドブルのフェルスタッペン選手は接戦のなかで5番手、チームメイトのアルボン選手とアルファタウリのガスリー選手は、フェルスタッペン選手に対して0.3秒差ながらも、タイトな戦いの中で9-10番手、クビアト選手がそれに次ぐ11番手と、簡単な予選ではありませんでした。予選での各車のパフォーマンスは非常に拮抗しており、レースでは少しのミスがポジションを大きく左右することが予想されます。レースで最大限の結果を得られるように、チームと共に万全の準備をして臨みたいと思います」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「ダウンフォースが少ない中での最適なマシンバランスをつかめず、このレースウイークは苦戦しています。グリップが十分でないのでコーナーの攻略が難しく、予選5番手という結果になりました。若干パワーが不足している部分もありますが、それ以上にコースに合ったセットアップとコーナーでのスピードが不足しています。ウイングのセッティング変更など、できることは全て試しましたが、タイムは変わりませんでした。決勝ではいつもいい走りができていますし、表彰台獲得も可能だと思っています。3番手から10番手は接戦でオーバーテイクも簡単ではないですが、3位になるための戦いはできるはずです。一方で、メルセデスの2台は別のレベルにいるので、あまり話せることはありません。モンツァは特別なコースですが、通常のタイプのコースに戻れば再び3番手付近で力強い走りができると思います」
アレクサンダー・アルボン
「事前の想定どおり、予選は混戦となり、クリーンなラップを取ることが難しいセッションになりました。ここまでチームにとっても難しい週末になっており、この結果には満足していませんが、一方で、個人的にはマシンのバランスはこれまでよりも改善されてきていると感じています。予選結果にはつながっていませんが、僕とマックスとの差も縮んでいるので、比較的スムーズな週末になっていると考えています。スパでも見てきたように、低ダウンフォースのサーキットは僕たちのマシンとの相性が良くないので難しい週末になっており、チームとしては本来いるべきポジションよりもかなり下にいる状況です。マクラーレンはストレートでかなり速いですし、レーシングポイントも急に速くなっていますが、それを考慮してももう少し前の方にいたかったと感じています。いくつかのコーナーでほかのマシンに対してタイムを失っているところがありますが、プラクティスでの僕たちのレースペースは悪くありません。簡単なレースになるとは考えていませんが、タイヤの摩耗をうまくマネージしながらいいレースにしたいと思います」
ピエール・ガスリー
「Q3に進出できてうれしいです。午前中のフリー走行は難しいセッションになったので、予選に向けて改善する必要がありました。Q1とQ2ではいい走りができ、6番手でQ3に進出しました。新品タイヤで臨んだQ3最初の走行はオーバーステアとグリップ不足に悩みました。ユーズドタイヤでの2回目の走行はうまくいきましたが、タイムでは新品タイヤのほかのマシンにかないませんでした。10番手でしたが僅差ですし、決勝でいい走りができるパッケージに仕上がっていると思います」
ダニール・クビアト
「予選はスリップストリームの取り合いになり、それが成功したかしなかったかが勝負を分けました。運が悪いことに前を走っていたマグヌッセン(ハース)がコースアウトし、スリップストリームをうまく使えませんでした。それでも決勝は11番手からのスタートですので、ポイント獲得を目指してレースに臨みます」
タイヤを供給するピレリは「予選での戦略は、どのタイヤを使用するかだけでなく、他のドライバーのスリップをどう使うかが重要になりました。ただこれはトラフィックを引き起こしました。メルセデスがQ1でミディアムタイヤを使用しましたが、トップ10のドライバー全員がソフトタイヤでQ2を通過し、決勝はこのコンパウンドでスタートします。決勝はワンストップレースになるはずですが、ハードコンパウンドがレースで重要な役割を果たすことでしょう。53周の最速の戦略はワンストップであり、24周目にソフトからミディアムへの交換がベストと考えられますが、22周目にソフトからハード、26周目にミディアムからハードという戦略をとるチームも現れるでしょう」と分析している。
パワーモード変更禁止という規定は決勝レースにどんな影響を及ぼすのか。ソフトタイヤは暑いコンディションになった時にどう機能するのか。第8戦イタリアGP決勝は9月6日 日本時間22時10分(現地15時10分)から始まる。
2020年F1第8戦イタリアGP 予選結果
PP 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 1:18.887
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) 1:18.956
3位 55 C.サインツ (マクラーレン・ルノー) 1:19.695
4位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)1:19.720
5位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)1:19.795
6位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー) 1:19.820
7位 3 D.リカルド(ルノー)1:19.864
8位 18 L.ストロール(レーシングポイント・メルセデス)1:20.049
9位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)1:20.090
10位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 1:20.177
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)