2020年9月6日に行われたイタリアGPは少々意外な結果となった。もっともメルセデスAMG以外のチームのタイムは接近しており、誰が勝ってもおかしくない状況ではあった。それでもここまでのシリーズの流れを考えれば、「メルセデスに対抗するレッドブル」と予想する向きが多かった。それではなぜメルセデスAMGが後退し、ガスリーが優勝したのか。ガスリーの優勝までの過程をもう一度見てみよう。

再スタート後の27周のスプリントレースをミディアムタイヤでコントロール

モンツァ・サーキットで行われたイタリアGPは、各車のタイム差がほどんなくスリップストリームを使い合う超高速の接近戦となることが予想されていたが、セーフティカーや赤旗中断、そしてレースディレクターの厳格な裁定により、想定を上回る劇的な展開となった。

レースディレクターの厳格な裁定については、1000分の1を争うギリギリのバトルの中で、初日からトラックリミットを越えた走行やスロー走行にペナルティが科せられ、一部に厳しすぎるという声もあったが、そうした流れもレース展開に大きな影響を及ぼすことになった。

画像: イタリアGP決勝前の各ドライバーの持ちタイヤ。ガスリーもサインツも、新品のミディアムタイヤとハードタイヤを1セットずつ持っている。

イタリアGP決勝前の各ドライバーの持ちタイヤ。ガスリーもサインツも、新品のミディアムタイヤとハードタイヤを1セットずつ持っている。

画像: 各ドライバーのタイヤ戦略。ガスリーは赤旗中断時に新品のミディアムタイヤを装着。2位となったサインツは22周目に交換したミディアムタイヤのまま走り切っている。3位のストールは一度もピットストップしていない。

各ドライバーのタイヤ戦略。ガスリーは赤旗中断時に新品のミディアムタイヤを装着。2位となったサインツは22周目に交換したミディアムタイヤのまま走り切っている。3位のストールは一度もピットストップしていない。

週末はずっと晴天に恵まれ、気温28度、路面温度45度という、やや暑いコンディションで決勝スタートが切られた。まずはポールポジションからルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が独走状態を築いていくが、予選2番手のバルテリ・ボッタスは2番手以降の集団に飲み込まれていく。予選から3番手以降のタイムは接近しており、メルセデスをもってしてもここから抜け出せない。

膠着状態に変化が起きたのは19周目。ケビン・マグヌッセン(ハース)がマシントラブルによってピット入口付近で停止しセクター3でイエローフラッグが掲示されると、アルファタウリはガスリーをピットへ入れてハードタイヤに交換。この直後にセーフティカー導入となったが、クルマが停まった場所が危険だと判断したレースディレクターは「ピットレーンクローズド」のサインを出していたため、各車ピットインできず、セーフティカーの後方で隊列ができた頃にようやくピットレーンがオープンとなり、各車がタイヤ交換のためピットに向かっている。

こうした中でハミルトンとアントニオ・ジョビナッツィの2台はピットレーンクローズドのサインを見逃してピットイン、タイヤ交換してしまう。これで10秒のストップ&ゴーペナルティが科せられたハミルトンは実質的に優勝の権利を失った。その一方で、一足早くピット作業を終えて隊列についていたガスリーは、後からピットインしたマシンの前に出ることに成功して3番手まで浮上した。

さらに、セーフティカー解除の直後にルクレールが最終コーナーのパラボリカで激しいクラッシュ、ここでレースは赤旗中断となる。この間、各車はタイヤ交換が許可されており、ガスリーは新品のミディアムタイヤに履き替える。

レースはスタンディングスタートで27周目から再開され、3番グリッドのガスリーは好スタートでストロールの前に出て2番手を確保。さらに、ハミルトンがペナルティを受ける間に首位に立ったガスリーは、後続との差を広げながら快走を続ける。

レースが残り15周に差し掛かる頃から、2番手のカルロス・サインツ(マクラーレン)が徐々にガスリーとの差を詰めてくると、最後の数ラップではDRS圏内に迫るものの、ガスリーはこのプレッシャー下でもミスなくチェッカーまで走りきった。

ガスリーの勝因のひとつにタイヤ交換のタイミングが上げられるが、もうひとつ新品のミディアムタイヤを残していたことも大きかった。ガスリーはこのタイヤで27周のスプリントレースを見事に走り切った。そうした戦略を実行するチーム力とチャンスを逃さない実力があったことは間違いない。イタリアGPでは初日から好調で、決してこの勝利はフロックではなく、速さは十分にあった。

画像: サインツに最後はDRS圏内にまで迫られたが、危なげなく逃げ切った。

サインツに最後はDRS圏内にまで迫られたが、危なげなく逃げ切った。

タイヤを供給するピレリも「今日のすべてのコンパウンドは良好に機能しました。レース戦略は赤旗中断によってリセットされましたが、中断前にさまざまなタイヤ戦略がすでに見られ、再開後も幅広いタイヤの選択がありました。赤旗中断によりすべてのドライバーにタイヤ交換できることになり、レースは27周のスプリントレースになりましたが、ガスリーとチームは完璧に新品のミディアムタイヤをマネージメントしていました」とガスリーを賞賛する。

では、2強と言われるメルセデスAMGとレッドブル・ホンダはどうだったか。ハミルトンはあのペナルティがなければ優勝していただろうが、後方からの追い上げはそれほどでもなく7位が精一杯。ボッタスは集団の中で動けずに5位に終わっている。パワーユニットのモード変更禁止がどう影響しているのか、次戦トスカーナGPも超高速バトルになると予想されており、どういう戦いとなるのか興味深い。

レッドブル・ホンダは、フェルスタッペンがパワーユニットに問題が発生したためにリタイア。アルボンはマシンダメージとトラフィックに苦しんで後方でのレースを余儀なくされた。

2020年第8戦イタリアGP 決勝 結果

優勝 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 53周
2位 55 C.サインツ (マクラーレン・ルノー)+0.415s
3位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+3.358s
4位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+6.000s
5位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+7.108s
6位 3 D.リカルド(ルノー)+8.391s
7位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+17.245s
8位 31 E.オコン(ルノー)+18.691s
9位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)+22.208s
10位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+23.224s

15位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+37.533s
リタイア 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

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