2020年9月12日、F1第9戦トスカーナGPの予選がムジェロサーキットで行われ、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンがポールポジションを獲得した。バルテリ・ボッタスは0.059秒及ばず2番手。これに、マックス・フェルスタッペンが3番手、アレクサンダー・アルボンが4番手と続いて、レッドブル・ホンダの2台がセカンドロウを獲得した。トスカーナGPの予選はどうだったのか、ホンダ勢のコメントを紹介しながら予選の模様をレポートする。
メルセデスAMGとレッドブルのタイム差が急接近
ムジェロサーキットでの初めてのF1開催ということもあって、予選がどんな戦いになるか注目を集めたが、予選Q2で1.213秒の中にトップ10台がひしめくほどの大接戦となった。
そんな中でやはりハミルトンがポールポジションを獲得、ボッタスが2番手と、メルセデスAMG勢がフロントロウを独占した。それでもレッドブル・ホンダのフェルスタッペンがトップから0.365秒差の3番手、アルボンが0.810秒差の4番手に入る健闘を見せたのは大きなポイントと言えるだろう。しかも、Q3最後のアタックで、ハミルトンの走行後にセクター1でイエローフラッグが出る不運があった中での結果で、実際にはその差はさらに縮まっていた可能性が高い。
「1000グランプリ目のレース」で注目のフェラーリは、セバスチャン・ヴェッテルは14位に沈んだものの、シャルル・ルクレールが5番手に入っている。
決勝グリッドを見てみると、メルセデスAMGから0.3秒離されてレッドブル・ホンダ、そこからさらに0.7秒離れて中団グループが大混戦で続くという状況となった。
なお、フリー走行から上位のタイムが拮抗しており、またソフトタイヤとミディアムタイヤのラップタイムの差が0.9秒から1.0秒と大きいことから、どのチームもミディアムタイヤでのQ2突破に挑めず、上位10台は全車ソフトタイヤで決勝をスタートする。
前戦イタリアGPを制したピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)はトラフィックでパワーをうまく使えず今季初めてQ1敗退。チームメイトのダニール・クビアトはQ2の最後のアタックで小さなミスを犯して12番手となった。ただどちらもフリー走行からマシンの仕上がりはよく、タイム差はごくわずかなだけに、決勝スタートでのタイヤ選択自由の利点をいかして、どうレースを組み立てていくか注目したい。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、決勝レースに向けて「予選は、レッドブルのマックス選手が3番手、続いてアルボン選手が4番手となり、2台そろって2列目からのレーススタートとなります。特にアルボン選手は予選でのベストリザルトとなる4番手と、レッドブルにとってポジティブな結果となりました。一方、アルファタウリはクビアト選手がQ2でのミスもあり12番手、ガスリー選手は中団の非常に接近したタイムの中、0.05秒差で惜しくもQ1敗退となるという厳しい結果になりました。ムジェロ・サーキットでのF1レースは初めてとなりますので、どの様な展開になるのか読みに難いところがありますが、まずはきっちりとスタートを決め4台入賞を狙ってレースに臨みます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「今週末、チームとしてとてもいい仕事ができていると思います。マシンは出だしからいい状態だったので、そこからさらに精度を上げていくことができました。予選ではこれまでで一番メルセデスとの差が近いので満足していますし、僕らより後ろのチームとは差を広げることができています。レースに向けて希望が持てますし、優勝争いの可能性について言うことは難しいのですが、これまでのレースウイークよりも少し自信を感じています。最高速がかなりあるのも、ここではいいことですし、追い抜きの難しいコースではありますが、終盤のセクションにはコース幅の広いロングコーナーがあるので、前についていくペースがあれば違ったラインを取ることができると思います。戦略の面でも、初開催のサーキットなので、レース中に多くの発見があるはずです。日曜日は路面温度がかなり高くなりそうなので、タイヤについてはなおさらです。メルセデスをオーバテイクするのは決して楽ではありませんが、持てる力をすべて出しきります。このコースが大好きなので、レースを楽しみにしています」
アレクサンダー・アルボン
「今日の予選はとても力強い走りができましたし、このサーキットをガソリン搭載量が少ない状態で走るのはとても楽しいです。すごくクレイジーで息を飲みながら走行しているのですが、今後もこういうサーキットでレースができればと思います。予選での4番手は僕にとってベストリザルトで、コンスタントに前進できていることをうれしく思っています。スパではいい手応えで、モンツァはそれよりさらに改善し、今回またさらに一歩前進できました。もちろんもっとタイムを上げる必要はありますが、徐々に良くなっていますし、Q3でのイエローフラッグがなければもっといいタイムが出せたと思います。フリー走行の時点では少し自信が持てない部分がありましたが、いくつかの変更を加えた後はマシンがうまくバランスが取れた感じがして、プッシュし始めることができました。1コーナーまでは距離があるので、決勝ではまずはきれいにスタートを決めたいです」
ピエール・ガスリー
「レースウイークを通じてすべてが順調に進んでいただけに、予選はフラストレーションのたまる結果となりました。フリー走行でもマシンはよく、予選ではエンジンを少しプッシュしました。それもあり、2回ほどフィニッシュラインの手前でエネルギーを使い果たしてしたため、0.1秒以上タイムをロスしてしまいました。結果的に、わずか0.05秒差でQ2を逃しました。このコースで後方からのスタートというのはよくない結果であることは明らかですし、ここまですばらしい形で進んでいただけに残念です。僕らは予選をうまくまとめられませんでしたし、最悪のタイミングで小さなミスを犯してしまいました。実際はもっと速いということは分かっているので、挽回する方法を見つけ出さなければなりません」
ダニール・クビアト
「土曜日は予選に向けてセットアップを煮詰めていくことができ、まずまずの一日になりました。金曜日は手応えがあまりよくない中でエンジニアが僕のドライビングスタイルに合わせるために、いい仕事をしてくれました。それでも予選Q2の2回目のアタックではコンマ数秒上げなければいけない状況で、7コーナーを全開で行くなど、あらゆることにトライしました。日曜日は12番グリッドからのスタートですが、ここからでも十分勝負になります。全員にとって初めてレースをするトラックですので、あらゆるチャンスを逃さずに走ることが大切になります」
タイヤを供給するピレリは「ムジェロは追い越しが簡単ではないサーキットであり、また高速でギャップが小さいため、戦略が重要になります。タイヤの摩耗と劣化が予想されますが、 特に上位10台が決勝スタートで装着するソフトタイヤのラップタイムの低下が戦略の鍵となります。1ストップと2ストップの両方の戦略が可能ですが、おそらく多くのチームは1ストップでレースを終えようとするでしょう。理論上は、ソフトタイヤで19周、ミディアムで21周、そしてもう1度ソフトタイヤで19周の2ストップが最速ですが、上位10台はソフトタイヤで22周を走りでハードに切り替える1ストップ戦略を狙ってくると思われます。もちろん戦略はレース状況に応じて変わってきます。ムジェロはランオフエリアが小さく、セーフティカー導入の可能性も考慮しなければなりません」と分析している。
第9戦トスカーナGP決勝は9月13日 日本時間22時10分(現地15時10分)から始まる。なお、日曜日のコンディションは晴れ、気温30度前後、路面温度は45度以上とかなり暑くなると予想されている。
2020年F1第9戦トスカーナGP 予選結果
PP 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 1:15.144
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) 1:15.203
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)1:15.509
4位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)1:15.954
5位16C.ルクレール(フェラーリ)1:16.274
6位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)1:16.311
7位 18 L.ストロール(レーシングポイント・メルセデス)1:16.356
8位 3 D.リカルド(ルノー)1:16.543
9位 55 C.サインツ (マクラーレン・ルノー) 1:17.870
10位 31 E.オコン(ルノー) ノータイム
12位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
16位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)