プジョー 607(2002年)
プジョーのフラッグシップ、607が日本デビューを果たし、この(編集部註:2002年)5月から本格的なデリバリーが開始された。アッパーミドル クラスのサルーンだが、日本ではこのクラスではメルセデス・ベンツ EクラスやBMW 5シリーズといったドイツ車が主流。一味違ったヨーロッパ大陸のデカダンスが感じられるだろうか。
ひと目でプジョーと分かるツリ目のヘッドランプを備えたフロントマスクは、クーペのような雰囲気も感じさせる。写真で見るよりも実車のほうがスタイリッシュだ。ドイツ車のライバルがセダン然としたスタイルなのに比べると、異色とも思えるかもしれない。サイズ的には、BMW 5シリーズより少し大きいといったところだ。
インテリアもエクステリア同様、ドイツ車のカッチリとした感じとは違った雰囲気のデザインだ。オプションだがアイボリーのダッシュボードや本革シートなどで、フランス車らしいホンワカとした味をうまく醸し出している。
日本仕様の搭載エンジンは3LのV6 DOHCで、最高出力206psと最大トルク29kgmを発生し、前輪を駆動する。トランスミッションはティプトロニックタイプのマニュアルモードを備えた4速ATが組み合わされるが、これの出来がなかなか良い。V6エンジンとの相性も良く、じつに調子良く走ってくれる。以前のプジョー車ではATの変速ショックが大きく、けっこうガクンときたものだが、この607ではスムーズなトルク特性を持ったエンジンのおかげもあってか、アッパーミドル サルーンらしい滑らかな走りを見せてくれる。
サイズの大きなサルーンの割りにはフットワークは軽快で、自然なハンドリングもいい。コーナリングで大きなロールや応答性の鈍さはあまり感じない。その秘密は、ダンパーが車速/舵角/操舵速度/ブレーキなどからセンシングして、9種類のプログラムの中から常に最適な状態を選び、減衰力を決めているからなのだという。
607のライバルに対する最大のアドバンテージは、乗り心地だろう。プジョーの乗り心地は以前から定評があるが、607は前述のダンパーの効果もあってか、郊外路でも高速道路でもフラッグシップらしくしなやかに動き、妙なピッチングやロールを感じさせない。先代の605に比べると、ケタ違いに快適な乗り心地に進化している。その乗り心地は重厚ではないが、フワリとした味つけにはプジョー独特の世界があり、この味は何ものにも換えがたい。
安全装備では、6エアバッグや、設定以上の減速Gがかかると自動的に点灯するハザードランプ、車両姿勢安定性制御であるESPなど、最新のセーフティデバイスが標準で備わっている。
これで、上級グレードのコンフォートは498万円、17インチタイヤを履くスポーツは478万円。インポーターのプジョージャポンとしては、かなり頑張った価格設定だ。ドイツのライバルたちも、安穏としてはいられないだろう。
■プジョー 607 スポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4875×1830×1460mm
●ホイールベース:2800mm
●車両重量:1610kg
●エンジン形式:V6・DOHC・縦置きFF
●排気量:2946cc
●最高出力:152kW(206ps)/6000rpm
●最大トルク:285Nm(29.0kgm)/3750rpm
●トランスミッション:4速AT(マニュアルモード付き)
●タイヤ:225/50R17
●車両価格(当時):478万円